今、改めてタイトルを見て、ああ、本当にあれは奇跡の夜だったのかも、と思っているところ。
舞台も客席も全員でフラメンコを楽しんだ夜だったと思う。そう、フラメンコって楽しい。生きる元気をくれる。楽しむことができるようになるまでに覚えなくちゃなこともたくさんあるし、大変なこともいっぱいあるけど、結果みんなで楽しめる。楽しくなれる。幸せになれる。フラメンコっていいなあ。
今枝の歌うビジャンシーコもあったし、ブレリアにクリスマスのレトラ入れたりもしてたけど、クリスマス色はビジャンシーコよりも子供達が演じるマッチ売りの少女によりあったかも? いやそれよりも、ファミリー的な雰囲気に、かな。
新人公演で準奨励賞受賞の鈴木映留捺はフレッシュな魅力でアレグリアス。歌は大塚友美。鈴木は華がある。これからどんどん上手になりそうな予感。
今年、セビージャペーニャ、トーレスマカレーナで最高のフラメンコを見せてくれたJITANはここでも行きのいい、ドライブ感のある踊りを見せそこに母大塚由美が絡むところはファルーカとファルキートを思い出させる。いやかっこいい。その大塚がSUIと交代で歌い踊るタンゴではピラール、ラ・ファラオナを思い出させるのが面白い。SUIは大人顔負けの歌いっぷり、踊りっぷり。スペインのSNSでバズったのもうなづける。松のタラントは黒地に白の刺繍の豪華なもので、タラントのソブリオ、地味なイメージとは合わないのだけど、炭鉱主夫人が、事故に巻き込まれた息子を思って踊っているのかな、などと勝手に想像を膨らませる。そうすると、途中、頭の花を飛ばすほどのロクーラ、狂ったように踊るところも筋が通るな、とか思ったり。タンゴの後でカルタヘネーラへという構成は珍しい。そのタラントを歌った今枝が松とタッチ交代、松が歌って今枝が踊るソレア。このソレアが良かった。松が歌うとは知らなかったけれど、いやいやどうして、上手いタイプではないけれど嘘のないソレアで、それを丁寧にマルカールしてアクセントを効かせて踊る今枝。フラメンコへの愛そのものを見ているような気分。今枝、歌がすごいから見逃されがちだけど踊りも本当にすごい。とにかくいい。歌うことでフラメンコの理解が踊るだけの人とは違うステージに行っているのではないかとも思うけど、とにかくいい踊り手です。
休憩を挟んでマッチ売りの少女の小芝居あってからの新人公演で見せた子供達のブレリア。あの時より二人少ないし、舞台の大きさも違うけど、しっかり振りをアレンジして、きちんとこなしているのもすごい。それにとにかくムイ・フラメンコなのですよ、彼女たち。子供でもこんなにフラメンカで、フラメンコを楽しんでいる感じが伝わってくる。
お教室でいろんな振りを長い時間かけて学んでいくのもいいし、それがあってこそ、自由に踊れるようになるのだろうとは思うけど、結局、みんな自由に踊れるようになりたいからやっているのかもしれないな。ブレリアでリズムをレトラを感じて自由に踊りたいよね、遊びたいよね。もちろん、しっかり構成された振り付けをきちんと踊って、そこに自分の色もくわて、というのもいいけれど、フラメンコをやるからにゃ、ブレリアやタンゴで会話するように踊ることはきっとみんなやりたいんじゃないかと。それを聖夜にガルロチでみんなでやっているんだよ。ブレリアでは小さい子からお孫さんもいらっしゃるようなお年頃のセニョーラまで登場。生き生きと踊る。フリが決まっているのかもだけど、それでもそこに出てくるその人の個性。楽しいね。見てるこちらも楽しくなる。
昭和の時代を、ということで、大塚、アフロのカツラを被った松、金髪カツラを被った今枝の3人が、金井克子『他人の関係』イントロ風に、ポーズするかと思えば、SUIと映留捺が歌うルンバ『カラメロ』があったり、抱腹絶倒の隠し芸大会的フラメンコ。いやー笑った笑った。おちゃらけも真面目にやるのが素晴らしい。最後は大塚の地元、浜松の祭のラッパ隊が登場。そこにフラメンコが絡む。てかラッパ隊のお姉さんたち大塚の生徒なの? ウナパタイータ決まってる! お祭りだね、楽しいね。お祭りの楽しさは世界共通。沖縄でみんながすぐ踊り出すカチャーシーとか、阿波踊りとか、ああいうのと、フラメンコ、同じところもあるんだよね、全部が同じじゃないけれど。人生いろいろあるから辛い悲しい大変なこともあるけれど、歌って踊って笑って忘れて元気になろう、っていうか、そういう働きがああいう踊りにはあって、それはフラメンコも同じだと思うんだよね。フラメンコの起源はきっとそういうところなのだろうと思う。太鼓の昔から古老によって歌い継がれてきたトナから始まったとかじゃなくてとりあえず苦しい現実忘れる楽しい宴の方じゃないかと。これ、ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボの説だったと思うけど絶対こっちを支持。トナはトナであったのかもだけどフラメンコがフラメンコになるためには宴が必要だったはず。
それにしても、みんなファミリーじゃないですか、ギタリストの鈴木尚/踊り手の大塚友美家の息子JITAN、パーカッション奏者で踊り手の朱雀はるなと歌っておどるSUI母娘、松彩果の息子もカホンを叩いて舞台に上がっていたし、ギターの徳永康次郎の父もギタリスト、母は踊り手、と日本フラメンコ界にもスペイン並みに代々アーティストというファミリーが増えている。そして年配のおねえさまから小学生など、年代に関係なくフラメンコを愛し、楽しむ人たちがたくさんいる。みんな全身でフラメンコを楽しんでいる。フラメンコの瞬間を生きている。最高じゃありませんか。1万5千キロ離れていても心は一つでございますね。みんなファミリー。フラメンコのファミリー。
フラメンコ最強、最高じゃないですか。
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