2025年6月30日月曜日

第22回コルドバ県青少年フラメンコ・コンクール

 第22回コルドバ県青少年フラメンコ・コンクールの決勝がコルドバ県エンシーナ・レアル市役所のオーディトリオで行われました。

14歳から35歳までのコルドバ在住、在学している若手を対象としたこのコンクール、6月12、13日にはコルドバ市にある県庁のパティオの特設舞台で準決勝が行われ、そこでえらばれた各賞対象2名ずつが参加。賞は優勝者のみで2位には賞はないという厳しい戦い。

そのコンクールに審査員として行ってまいりました。他のメンバーは、スペイン国立バレエ監督のルベン・オルモ、コルドバを代表する歌い手エル・ペレ、アルカンヘル、ハエン音楽学校フラメンコギター科教授ラウラ・ゴンサレス。準決勝、決勝と同じメンバーです。

決勝はいずれの参加者も準決勝以上に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

結果は以下のとおりです。

  • Premio Antonio Fernández Díaz “Fosforito”:  カンテ/フォスフォリート賞
  • Inmaculada López Cruz
  • Marina Reyes Hidalgo  マリア・レジェス・イダルゴ


  • ©︎ Toni Blanco



  • Premio Vicente Amigo: ギター(ソロと歌伴奏)/ビセンテ・アミーゴ賞
  • Antonio Jesús Gómez Muñoz
  • Melchor de Juan Reyes Jiménez  メルチョール・デ・フアン・レジェス・ヒメネス
  • ©︎ Toni Blanco

    • Premio Blanca del Rey (14 a 18 años): 舞踊/ブランカ・デル・レイ賞(14〜18歳)
    • Lucia Vinos González
    • Raúl Alba Cruz ラウル・アルバ・クルス
    • ©︎ Toni Blanco
    • Premio Olga Pericet (19 a 35 años): 舞踊/オルガ・ペリセ賞(19〜35歳)
    • Inmaculada Concepción Carmona Jiménez
    • Natalia García Castro  ナタリア・ガルシア・カストロ


    • ©︎ Toni Blanco


    賞には届かなかったものの、ギターのアントニオ・ヘスス・ゴメスはいい音を出していましたし、バンベーラを踊ったルシアもマントンとバタでのアレグリアスを踊ったインマクラーダ・カルモナもプロレベルの実力があると思います。ということもあって、この4人にはスペイン国立バレエ団のベカ、マドリードの稽古場で短期間、稽古に参加できる権利が与えられました。

    舞踊の優勝者、ナタリアとラウルは先日のヘーレン財団のコンクールにも出場していたので、決勝に進んだら、また観ることができるかも、と楽しみです。

    このコンクール、特に舞踊のレベルが高く、そういえばヘーレン財団コンクールにもコルドバ出身者が4人出場していたな、と、俄然、コルドバの舞踊が気になってきました。セビージャに先駆けてスペイン舞踊/フラメンコ科がもうけられたということもあるのかなあ。ベテランだと国立バレエで活躍したホセ・セラーノ、長らくコルドバに住んでいるハビエル・ラトーレの影響もあるのか、その後もアンヘル・ムニョス、ナニ・パーニョス、ポル・バケーロ、ウーゴ・サンチェスら多くの踊り手たちが巣立ってきました。この日もパルマで昔ビセンテ・アミーゴのグループで来日したことのあるケコや、かつてのこのコンクールで優勝したジョランダ・オスーナらが参加していました。彼らをはじめ、コンクールのオフィシャルのギタリストや歌い手たちも全力で参加者を若手たちをバックアップしようとしているのが感じられ、それはとても気持ちの良い、胸が熱くなることでしたし、コルドバのフラメンコ、これからも注目かも、と思ったことでした。


    あ、ギターのメルチョールはなんとあのメルチョール・デ・マルチェーナのひ孫さんだそうですよ。すごいな。コルドバの音楽学校ギター科で勉強中とのこと。もうプロという感じの伴奏でムイ・フラメンコでした。

    決勝進出者と審査員、市長、コルドバ県文化担当官©︎ Toni Blanco



    2025年6月28日土曜日

    第9回フラメンコ才能コンクール 舞踊部門

     6月27、28日の両日、クリスティーナ・ヘーレン財団で開催された第9回フラメンコ才能コンクールの舞踊部門準決勝を見てきました。16歳から30歳までの若手の才能発掘を目指し、上位入賞者に賞金とトロフィーが送られますが、そのほか参加者の中から選ばれた人にどう財団で1年間学ぶための奨学金が贈られます。

    今年もスペインを中心に、中南米や日本、イランなどからも応募があり、ビデオ予選で選ばれた11人が準決勝に進みました。準決勝は課題曲のソレアと自由曲一曲。

    初日、トップバッターはルス・マリア・ガラン/カディス県バルバーテ出身の18歳のソレア。お見事。この若さでこれだけ踊れたら将来が楽しみ。

    続いてグラナダの22歳、マリア・マシアス。バタ・デ・コーラでアレグリアス。細部がちょっと雑かな。
    同じグラナダ出身同じく22歳の、ニエベス・コルテスはソレア。

    コルドバの24歳、ロレナ・プリドはメリハリの効いたタラント。衣装はもっとシンプルなほうが良かったと思う。


    瀬戸口琴葉はソレア。マノやブラソなどの細部が美しいのがまる。


    一曲目の最後はコルドバのアンドレス・ヒメネス。20歳。ソレア。


    ルス・マリアの2曲目はアレグリアス。にこやかな笑顔を作ってちゃんと曲のキャラクターを踊り分けようとしているのがすごい。ただ、彼女的に難しいところなのか、集中するとそう名乗るのか、時々恐い顔になってしまいがちなところはなおしていくといいだろうな。バタ、マントンも上手だけど、財団でルイサ・パリシオに鍛えてもらったらもっと良くなることだろう、と脳内で勝手に奨学金候補に、って審査員じゃないので勝手な妄想ですが。


    マリア・マシアスのソレア。
    ニエベス・コルテスはタラント。彼女もタラントのイメージと言えるの茶色という色だけ、フォーマルドレス風で残念。
    ロレナはソレア。
    瀬戸口もタラント。

    アンドレスはソレア。



    2日目はグラナダの23歳、ロレナ・エレディアのソレアから。力強いけど荒い?


    続いてアルメリアのスレイマがタラント。彼女も荒い。あとバックが気になるのか後ろ向いている時間が多いのも気になる。

    コルドバの18歳、ラウル・アルバはとにかく落ち着きがない、忙しい踊り。元気といえば元気。ソレアなんだけどね。

    今年の最年少、17歳。セビージャのハイロ・ベガもタラントだけど、ラメというか、光る素材の衣装。あの〜、誰かタラントがどういう曲なのか教えてあげてください。踊りに重みがなく、これでもかこれでもか力技。若いってそういうことなのかもだけど。

    5人目はコルドバのナタリア・ガルシア、25歳。黒いバタでソレア。重みがあってちゃんとしたソレア。年の功?


    再びロレナで、タラント。タラント多いなあ。衣装可愛いけど、タラントというよりタンゴの衣装だな。


    スレイマはソレア。細部が疎かになるのが残念。丁寧な踊りって若い人には難しいのかな。


    ラウルは再び落ち着きなくタラント。足をドリルに床掘ってるんですか状態。首や肩の位置とかもちょいちょい気になる形に。うーん。

    ソレアを踊ったハイロも姿勢気になるなあ。お尻出て、膝がくっついるような。腕も短く見える。体大きいせいかなあ。時々、フエラにもなっているような。

    大トリはナタリア。でアレグリアス。マントンを使って華やかに。上手。


    という訳で私的には初日のルス・マリアと二日目大トリナタリアがお気に入りでしたが、決勝に進むかな。進んでほしいな。14日に行われる決勝には5人が進むそう。(去年は6人だったので6人という可能性もあり)。色々勝手なこと申しましたが、全体的にはレベルが高く、ほぼ全員、タブラオのレギュラーは無理かもでもお試し出演はできそう。なんて言ったら余計、偉そうだけど、とりあえずぐちゃらずちゃんと2曲踊れるってすごいことですね。
    若手がんばれ。来週、決勝進出者、追記しますね。







    2025年6月17日火曜日

    ラモン・エル・ポルトゥゲス逝く


     歌い手ラモン・エル・ポルトゥゲスが亡くなりました。

    1948年生まれというから77歳。生まれがポルトガルにほど近いバダホス県メリダで、そこからエル・ポルトゥゲス、ポルトガル人という芸名がついたようです。本名はラモン・スアレス・サラサール。歌い手ポリーナ・デ・バダホスの甥で、7歳下の弟アントニオも歌い手グアディアナ。息子たちもフアン・ホセ“パケーテ”(1966)はギタリスト、ラモン“ポリーナ”(1970)、イスラエル“エル・ピラーニャ”(1982) 、サブー(1984)はパーカッション奏者というフラメンコ一家。12歳の時にはマドリードのタブラオに出演していたという彼は1968年にはタブラオ、新宿「エル・フラメンコ」の柿落とし公演に来日。ルンベーロとして出演した。70年代の初めには初録音。舞踊伴唱も得意とし、ソリストとして知られるようになったのは80年代以降のこと。1992年にはアルバム『ヒターノス・デ・ラ・プラサ』を発表している。

    カマロンにも影響を与えた、エストレマドゥーラ地方を代表する歌い手、どうぞ安らかに。





    2025年6月15日日曜日

    大城まどか&鬼頭幸穂en Puerta Sol



      セビージャ旧市街のサンタ・フスタ駅寄り、ロス・ヒターノス教会のそばにあるバル、プエルタ・ソルは、30年位前から不定期のフラメンコライブを行なっている店。店主ホセによると、もともと貸スタジオをやっていてその縁でライブも始まったそうで若き日のパトリシア・ゲレロなども踊ったことがあるとか。私も2010年というから15年前に屋良有子、里有光子、高木亮太の3人よるライブを見に行ったことがありました。


    普通に50人くらいは入って、立ち見もぎゅうぎゅうに詰め込めば100人くらいもいくかなっていう感じのところ、であります。

    今回は大城まどかと鬼頭幸穂の二人による公演。まずは二人が1枚のマントンを使い、またカスタネットを鳴らしつつ踊るグアヒーラ。



    カスタネットを使ってのフラメンコは、セビジャーナス、シギリージャ以外ではあまり見ることがないけれど、二人が元スペイン国立のウルスラ&タマラ、ロペス姉妹のスタジオに通っていたということもあるのかな。

    カンテソロを挟んで、大城のタラント。

    全体的にはショートカットで長身ということもあってか、宝塚の男役さんみたいなかっこよさ、キリッとした仕上がりだけどブラソが優美で綺麗。タラントという曲の持つ抑制された感じもちゃんと表現されてました。



    休憩を挟んで鬼頭はマントンを使ってのアレグリアス。にこやかに華やかに。曲のイメージ通りの表情も良き。


    舞台に上がる前、イントロ聴いている時からこんないい表情。こうやって曲の中に入っていくの大切ですね。昔、ガルロチにヘスス・カルモナが出た時、舞台へ上がるその足取りからしてすでにアレグリアスだったの思い出しました。




    ギターソロを挟んで着物風ジャケットを羽織った2人のカスタネットでの曲。日本を意識して、ということなのかな? ちょっと創作舞踊ぽい。でも曲はビセンテ・アミーゴ?って感じ(確認したらラファエル・リケーニだそうです)で、なぜここで和風?とかちょっと違和感。日本人だもんね、とスペイン人観客は自然に受け止めたのかな。

    全体の流れとしては盛り上げたいところだと思うんだけど。うーん。


    いや最後はフィン・デ・フィエスタで盛り上げたので、これはちょっとしたエピソードってことなのかも。



    2025年6月9日月曜日

    アウロラ・レゲラと瀬戸口琴葉


     6月7日、セビージャのペーニャ、トーレス・マカレーナでセビージャ市/ビエナルのオーガナイズする市内のペーニャ公演シリーズの一環でアウロラ・レゲラ。このポスターだし(ちょっとオカルトもしくはカルト映画の趣じゃありませんか)、何する人かもわからず、誰?と検索。と、フルートとカンテの人と判明。ふむ。留学中の瀬戸口琴葉さんも出演するし、歌ガジだし、と。久しぶりに出かけて行ったのであります。無料ということもあってか超満員。

    セビージャを代表するこの老舗ペーニャ、おそらく世界で一番、舞踊をわかっているペーニャ。スペインのペーニャはカンテ中心のところがほとんどで、毎週何がしかのイベントがあっても踊りがあるのは年に数回という感じなのだけどここは週に2回舞踊公演。24-25シーズンはハビエル・バロン、ホアキン・グリロなどの今も第一線で活躍し続けるベテランスターたちから新人(鈴木時丹くんも!)やまで様々なアーティストたちが出演してきました。いろいろな公演を毎週見ているから自然と目が肥えるのでしょうね。


    さて公演。ギターのイントロにフルートで歌の部分を演奏しつつ登場。

    ギター伴奏でカンテ・デ・レバンテ。歌のメロディを楽器で演奏というのはよくあるパターンだし、これ自体には新しさはないんだけれど、

    ガジも登場した次のティエント/タンゴでは伴奏に回ったり歌ったり。ってその自由さは新しいかも。あ、歌う管楽器奏者といえばアントニオ・リサーナがいましたね。彼はサックスだけど、サンフェルナンド出身で歌もいいんですよ。今検索したらm去年日本にも行ってたみたい。ジャズの公演だと情報入ってきにくいから知らんかったけど。




    公演の前に司会のお姉さんがはなしてたところによるとアウロラさんは22歳ってことなんで、まだまだ色々変わっていくことでしょう。でも歌、声がしっかり出ていて悪くない。

    3曲目は椅子をのけてアレグリアス。個人的にはフルートと一番相性のいい曲だと思い込んでる。昔々、フアン・パリージャがタティのアレグリアス伴奏してるの見て刷り込まれたのかも。
    司会のお姉さんはフルートは新しい、と言っていましたが、確かにフラメンコのフルート奏者って少ないかもですが、パコ・デ・ルシアのセクステットのホルヘ・パルド、ヘレスの名門パリージャファミリーのフアン、サラ・バラスやカニサレスとも共演してたドミンゴ・パトリシオもいますし、ウニオンの楽器部門の覇者、セルヒオ・デ・ロペもいます。

    瀬戸口のアレグリアス、これが良かった。リズムを、歌を、フラメンコを全身で感じて楽しんでいる、という感じで、とびきりの笑顔で踊る。客席も盛り上がる。



    休憩を挟んでの第二部はシギリージャから、ギターはウトレーラ出身というアマドール・ガバッリ。



    いつもながらに安定感のあるエル・ガジの熱唱


    そしてアウロラも歌う。まっすぐな、いいカンテ。上手いというのとはちょっと違う。もちろん下手なわけじゃない。好きで、自分の信じる真実に心を込めたという感じの、真っ直ぐさに好感が持てる。これから年を経てまた色々変わっていくことだろうけど、それもまた楽しみかも。



    そしてソレア。再び瀬戸口登場。
    場をしっかり支配して踊る。ゲストなんだけど、踊りは主役になっちゃうね。もちろん、彼女がそれだけ上手だと言うことで、なんだけど。マイクがないから靴音に消されがちというのもあるのかも。
    ソレアはしっかり重みをつけて。


    でもブレリアになるとやっぱ楽しいが勝っちゃうね。



    とにかくお客さんがみんな満足してたみたいなのが何よりです。 


    Fin de fiestaはこんな感じ。


    なんか瀬戸口の踊り、今まで見た時よりもなんかちょっと変わってきたようにも思えました。人が見えてくるような感じがちょっと出てきた、というか。またぜひ見てみたい、と思ったことであります。あ、主役のアウロラもまた機会があったら聞いてみたいかも。



    2025年6月2日月曜日

    イタリカ国際舞踊祭

     6月です。セビージャ県主催の舞踊フェスティバル、イタリカ国際舞踊祭。

    今年もフラメンコ関連のプログラムがたくさん。前半は市の南にあるべジャビスタ地区、後半はイタリカのローマ遺跡が会場が郊外でいくのがちょっと大変ですが、バスも遅くまであるので週末以外なら大丈夫かも。意欲作がたくさん揃っていますね。



    ◇イタリカ国際舞踊祭

    6/3(火)21時30分『ルシア・エン・ビボ』

    [出]〈b〉ルシア・ラ・ピニョーナ

    6/3(火)22時30分『レクト・イ・ソロ』

    [出]〈b〉アンドレス・マリン、〈g〉ペドロ・バラガン

    6/5(木)21時30分『ルシア・エン・ビボ』

    [出]〈b〉ルシア・ラ・ピニョーナ

    6/5(木)22時30分『アプレ・ヴー・マダム』

    [出]〈b〉パウラ・コミトレ

    6/7(土)21時30分『ラス24』

    [出]〈b〉マルコ・バルガス、クロエ・ブルレ

    6/7(土)22時30分『ナナ・パラ・エミー・ヘニングス』

    [出]〈b〉ルス・アルカス、〈c〉イネス・バカン

    6/10(火)21時30分『ルシア・エン・ビボ』

    [出]〈b〉ルシア・ラ・ピニョーナ

    6/12(木)21時30分『ラス24』

    [出]〈b〉マルコ・バルガス、クロエ・ブルレ

    6/15(日)21時30分『ラス24』

    [出] 〈b〉マルコ・バルガス、クロエ・ブルレ

    [場]セビージャ コルティホ・デ・クアルト

    6/17(火)、18(水)22時30分『ヘネラシオネス(リトモス、パストレラ、グリト)』

    [出]〈b〉スペイン国立バレエ団

    [場]セビージャ県サンティポンセ イタリカ ローマ劇場

    [問]www.festivalitalica.es