2020年7月14日火曜日

グラナダ国際音楽舞踊祭/アントニオ・ナハーロ『アレント』※写真追加しました

3月ヘレスのフェスティバル終了後、約1週間で外出禁止になり、ほぼ4ヶ月ぶりに公演を観てきました。
4ヶ月ぶりで電車に乗って、グラナダへ。
スペインで最も古い歴史を誇るグラナダ国際音楽舞踊祭。
クラシック中心のフェスティバルですが、1952年の第1回目からフラメンコ/スペイン舞踊関連の公演も行われています。

今年はプログラムはかなり前に発表されたものの、前売り開始を遅らせていました。
これは中止かも、と開催を危ぶむ声もありましたが、出演者をスペイン国内からにするなどプログラムを一部変更し、6月末はストリーミングで6公演を配信するなどし、無事開催の運びとなりました。

前スペイン国立バレエ団監督のアントニオ・ナハーロもこのパンデミックの影響を多大に受けた一人です。当初、4月にマドリード郊外で予定されていた、新生アントニオ・ナハーロ舞踊団の公演は中止。外出禁止もあって、稽古もできない日々をおくっていました。
が、5月末、グラナダのフェスティバルでの彼の公演は予定通り行われるという知らせがあり、外出禁止の緩和に合わせて稽古に入り、4週間。
ようやくこの公演へとこぎつけたのです。

会場はアルハンブラのヘネラリフェ野外劇場。
劇場入口のあたりから宮殿をのぞむ。夕方のようですが22時過ぎてます。


ライオンの庭などがある宮殿からさらに上がったヘネラリフェ庭園に隣接する、杉に囲まれた劇場です。
これ通路じゃありません。席の間に一席分空いている感じです。

通常よりもだいぶゆったりした感じに席が配置され、観客は全員マスク着用がお約束。
特設されたバルも入場制限が行われ、人が集まり過ぎないように気をつけています。


さて公演。

スペイン舞踊のテクニックで魅せる、華やかでおしゃれな作品でした。


Festival Internacional Musica y Danza de Granada. Fermin Rodríguez

『アレント』は、アントニオがバレエ団監督時代にバレエ団のために振り付けた作品。
基本的には同じ振付による作品なのですが、多少変更もありました。

大きな違いはまず音楽の演奏方式。
バレエ団ではオーケストラの生演奏もしくは録音で上演されていたものを、この作品の作曲家フェルナンド・エゴスクエがエレクトリック・アコースティックギターでギタリストとして率いる、バイオリン、ピアノ、コントラバス、パーカッションのバンドが舞台奥に陣取り生演奏。
彼らのソロ、すなわち踊りなしのインストゥルメンタルのナンバーも二つありました。
フラメンコでは生演奏が基本ですが、スペイン舞踊では録音ということも多く、これは珍しいパターンだと思います。

また、この作品一つだけで公演ができるように、ということもあってでしょう、新しい振付が二つ加わっていました。

そして、群舞の人数が国立よりも少なくなっています。
例えば、上の写真のオープニングの『オリヘン』。
国立では男女9人ずつでしたが、今回は6人ずつ。
それに加えて続く男女のパレハでの『ルス』をおどるソリスト二人(カルロス・ロメロとタニア・マルティン)という構成。ダンサー15人にミュージシャン5人です。
"Luz" de Alento. Festival Internacional Musica y Danza de Granada. Fermin Rodríguez

人数が減っていることもあって、振付の基本は変わらないものの、舞台上での位置など、コンポジションは多少変わっているという印象でした。
群舞のメンバーには元国立のアドリアン・マケダやアルバ・エスポシトらもいて、レベルは非常に高く、決して国立に遜色はありません。
あと国立であったような、吊り物、すなわち幕やブランコなどはなくなり、よりシンプルになっています。
でもその分、かえってダンス自体に集中できるかも。

写真を見て貰えばわかる人もいると思いますが、衣装も照明も変わっています。
男性の衣装は国立監督時代、ファッションショーに協力出演して話題をよんだオテイサ
女性衣装はラファエル・アギラール舞踊団で主役を務めたビクトル・ムーロらの手によるもの。振付でスカートを肩にかける、などもあるので、女性の衣装のラインは似た感じです。

女性5人による3曲目の『アニマス』は、国立での薄暗い照明よりもずっと明るく、細かいところまでよく見えます。この照明好きです。また紫の衣装が金色になったのも悪くない変更だと思います。
Festival Internacional Musica y Danza de Granada. Fermin Rodríguez

4曲目はインストゥルメンタル。『カルネ・クルーダ』
バイオリンもピアノも普通にうまいのだけど、ソロで聴くほどのものかな、という気も正直ありました。映画音楽のような感じで、踊りがあるとああ、ロマンチックだなあ、などと気分も盛り上がり、映えるのですが、音楽だけだとナイトクラブ風というか。
フラメンコで一人で踊るリサイタルなど、衣装チェンジの必要もありインストゥルメンタルが入ることは多いですが、今回はその必要もなさそうだし、おそらく音楽に対する敬意からだと思うのですが、彼の曲が踊りが見えてくるようなので、聴いていても踊りが欲しくなるのです。ムズムズしてくる。



Festival Internacional Musica y Danza de Granada. Fermin Rodríguez



またダンス作品としての流れが中断されてしまう感じもあるので、うーん、わたし的にはインストゥルメンタルはなくてもいいかな。もしくは部分だけでも、ソロででも、少し踊り入れて欲しいかも。

男性群舞の『アセチョ』から
Festival Internacional Musica y Danza de Granada. Fermin Rodríguez

女性ソロ『セール』へのつながりもいいです。
Festival Internacional Musica y Danza de Granada. Fermin Rodríguez
セールのカスタネット の妙技。振付の見事さを改めて感じさせる。
そして男女3人ずつのパレハでの新曲。
『インスティント』

真紅の女性の衣装と、真紅のラインをあしらった男性の黒い衣装がおしゃれ。
男性がカパ、マントをあしらう。
フラメンコ曲ではないけれど、フラメンコ色が強いナンバーです。

続く男性ソロ『リブレ』もサパテアードを多用し、ちょっとフラメンコぽい。
そこから再びインストゥルメンタル。アルゼンチンタンゴ風。『ビエホス・アイレス』
そしてめくるめくフィナーレへ。
国立でのあのドキドキがよみがえります。
Festival Internacional Musica y Danza de Granada. Fermin Rodríguez


確かに国立版より人数は少ないのだけど、同じスピード、同じ集中力。
なので高揚感はハンパない、のであります。

終わり良ければ全てよし。
全てが拍手に包まれます。




同じだけど違って、どっちもいい。
アントニオ・ナハーロらしい、スタイリッシュな、スペイン舞踊ショー。
誰もが楽しめる、おしゃれでかっこいい作品でありました。

今後、上演を重ねてどう変わっていくかも楽しみです。




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