2019年11月25日月曜日

サラ・バラス『ソンブラス』

スペクタクル!
サラ・バラス舞踊団の『ソンブラス』を一言でいうとそれに尽きます。
スペイン語でいうならespectáculo espectacular。
華やかな作品、と訳してしまうと、ニュアンスが伝わらない。
壮大華麗なフラメンコ・スペクタクル、とでもいいましょうか、

11月22日から3日間、セビージャのオペラハウス、マエストランサ劇場を満員にしたこの作品は今から2年前に、舞踊団結成20周年を記念して、パンプローナで初演されました。
私はその同じ年の11月にマラガで初見
その時より、より充実し、ダイナミックな作品に仕上がっています。
前日の記者会見で語っていたように、

構成は同じだし、大きく変わったところはないのだけれど、2年間世界各地で公演してきたことで見所がより強調されアクセントがはっきりし、リズムも良くなったという感じなのです。

ソンブラスとは影のこと。
オープニングもその名の通りにシルエットでの群舞で見せます。
ファルーカの歌とサパテアードの音が響き、それを6人が踊ります。

ギターが始まり、サラが登場。
ファルーカは彼女の代表曲のひとつ。最初の作品で男装で踊って話題を呼び、日本公演でも上演された『ボセス』でも踊っていたのを覚えている人もいるのではないでしょうか。

マラガで見た時とは違い、最初は赤いジャケットを着て登場します。
伝統的なファルーカのかたちをギター伴奏のみで体現していきます。


Teatro de la Maestranza

途中でジャケットを脱ぎ、 ベストにパンタロン、赤いスカーフという姿となり
Teatro de la Maestranza

『ボセス』の時のようなパーカッションとのセッションでは、彼女ならではの正確でクリアなサパテアードの音が音楽を紡ぎ出していきます。

Teatro de la Maestranza

間口の広い、大きな劇場の舞台を一人でいっぱいにしてしまう存在感、カリスマ。
Teatro de la Maestranza

全身全霊で踊ります。
Teatro de la Maestranza

今、ソロでも大活躍のイスラエル・フェルナンデスの歌がより厚みを与えます。
Teatro de la Maestranza

間の持たせ方もうまくなったなあ、という感じ。


続くロマンセはイスラエルとルビオ・デ・プルーナの歌で始まり、
バストンの男女の群舞が踊ります。

そしてセラーナ。彼女がこの曲を踊るのは初めてでは?
ストレッチの効いた青いドレス。

Teatro de la Maestranza

この円形に広がるスカートはサラの代名詞的存在。
Teatro de la Maestranza

ここでもルビオとイスラエル、二人の歌が光ります。
Teatro de la Maestranza

踊りとしてはセラーナらしさ、的なものはほとんどなく、ソレアもしくはソレア・ポル・ブレリアの延長線上。サラらしい、サパテアードと回転で見せてきます。

サンタナ・デ・イエペスのテキストを読むサラの声で群舞がアバニコを使って踊ります。

そして赤いドレスでのワルツ。レオナード・コーエンがロルカの詩『ペケニョ・ワルス・ビエネス』を歌った『テイク・ディス・ワルツ』を群舞の二人と踊ります。
ローリングストーンズとのツアーで知られるティムに代わって参加のディエゴ・ビジェガスのハーモニカがピリッと効いています。
エンリケ・モレンテも歌ったこの曲で、なんかちょっと涙が出てしまったのは、私がずっと見てきたサラのキャリアを、この道程を思い出したから。
1990年、新宿「エル・フラメンコ」に出演してた彼女と知り合ったのは30年も前の事。
フラメンコのアルティスタで、初めて、フラメンコじゃない話もいろいろできた友達、なのであります。


あまり踊られることがない曲、マリアナはバタ・デ・コーラとマントンの群舞4人で。

ミュージシャンたちによるソロ曲はタンゴ。ここでも歌の良さが光っています。
もちろん、パーカッションもギターもしっかりしていて、作品を支えているのだけど、この二人の歌の良さは特別。どんなフラメンコ・ファンも納得のはず。

人気バイオリニスト、アラ・マリキアン録音の曲で群舞が舞います。男性は黒いスカート。
女性はベージュ?のスカート。

そしてサラのアレグリアス。赤いマントンが舞い、機関銃のようなサパテアードが炸裂。
この作品は、オスカル・ゴメス・デ・ロス・レジェス(カナーレスの弟です)の照明デザインがとても綺麗でショーアップされてて、それも見所の一つだと思うのですが、この場面だけはサラにフォロースポットが欲しかったかも、サラの顔に影が出ちゃうのはもったいないと思います。ちなみにバックのカーテンに描かれた絵も効果的です。
そのままブレリアへとなだれ込み、アルトサックスとの絡みも楽しく、満喫。

全員総立ち、スタンディングオーベーション。

そこにマイクを持ったサラが現れ、「今日はクリスティーナが来てくれています。私たちは常に自分を見るための鏡を持っていなくちゃならないのです。ありがとう、マエストラ。道を開いてくれて。挨拶しきゃ」と、客席に走り出すと上の方からそれも駆け寄ってきたクリスティーナと会い、抱擁。

ああ、世界中の大舞台で、フラメンコを背負って踊り続けた二人の相互リスペクト。
二人にしかわからないこともたくさん、あるのだろうなあ。



そして偶然、そのすぐ隣に座っていた私にサラはベシートしてもらい、また涙。
んー、あのタブラオで踊っていた、とびきりの笑顔とあふれんばかりのポジティブエネルギーに満ち満ちていた女の子が本当に、大きく、ビッグになったんだなあ、と、親戚のおばさん的感慨。
本当にすごいよ、サラ。


公的機関の後ろ盾もなく、プライベートの舞踊団として、今もどこの誰よりも多い公演数をこなすサラ。1月24日からはマドリードで3ヶ月に渡るロングラン公演が始まります。
毎週、金土日と公演があります。
そして来年後半にはいよいよアジア/オーストラリアへのツアーもあるそう。

フラメンコって、本当、いろんな可能性があってすごいものなんだなあ、と改めて感じさせてくれたことでした。



昨年のコルドバ公演の時のファルーカのビデオを貼っておきます。












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