素晴らしかった。
作品の構成。共演者。衣裳。そして彼女のかたち!その姿勢の、その状態の美しさ。
胸を開いて、腕が頭のうしろから出るような感じ。全盛期のクリスティーナ・オヨスのブラソを思い起こさせる。首の位置、目線、どれをとっても文句のつけようがない。
第一部のタイトルは「私もフラメンコを選んだ」
彼女の師である、小松原庸子の作品「私はフラメンコを選んだ」をもじっている。
クラシック曲にのってバレエ風に踊る井上が、マエストロ、先生役の奥濱春彦の手でフラメンコにめざめていくという場面。もともとバレエを学んでいた彼女。ブラソや表情で語りかけてくる。それがコルドベスでのガロティンに。コルドベスのかぶり方の美しいこと。オレ! すべてが舞踊の教本、お手本のようだ。それまでのバレエシューズのような白のリボンであんでいくようなサパトスを、黒いサパトスにはきかえる。その後ろ姿を、コルドベスをつかって踊る奥濱が隠す。振付も構成もいい。
奥濱が井上をサポートするように、少し下がって踊るのもいい。昔ながらのパレハの美しいかたち。
インストゥルメンタルのブレリアも楽しく雰囲気を盛り上げる。
井上のタラント。かつてラ・ウニオンのコンクールで踊り、決勝へと進んだ曲。衣裳もバックもかわるとまったく印象もかわる。
大人のタラント。あのときは男ぶりが気になることもあったけど、今はずっと女らしくしっとりみえる。井上は曲の中に入って曲をインテルプレタール、演じることができる人だ。役者である。タラントではタラントの、アレグリアスのときはアレグリアスの顔になっている。
休憩をはさんで「カディス」。銀色のドレスでカスタネットをつかって踊る。カスタネットの音色の美しさ。いわゆる“クラシコ・エスパニョール”(今はダンサ・エスティリサーダということが多い)を踊る踊り手は日本では少ないが、井上はみごとにこなしている。
続く奥濱のシギリージャも文句のつけようがない。かたちの美しさをここでも感じる。
井上の姪のチェロ奏者、矢口里菜子のソロが2曲。最初の一音だけでただ者ではない感がただよう。ゆくゆくは、叔母との共演がみてみたい。クラシコが踊れる井上なら可能なはずだ。
バタ・デ・コーラにマントンのアレグリアスも見事。なによりかたちが美しい。マントンは、エル・フラメンコの舞台を考えてか小さめのものをつかっていた?ようだが、定番を美しくみせる手腕はさすが。にこやか
観客や師などすべての人に感謝を語る、最後のトークにいたるまで、完璧な舞台。
唯一、助言するとしたら、スカートを高くもちあげるならエナグア、ペチコートをはいた方がいいかもというくらいだろうか。(笑)
またぜひみてみたい。
今度はぜひ、劇場で。
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