全てが美しかった。彼女の一挙一動から目が離せない。じっと座ってなどいられない。悶絶状態で身体がどうしても動いてしまう。オレの声が客席のあちこちからかかる。鳴り止まないオレと啜り泣き。あまりに美しいものを見ると人は涙をながしてしまうものなのでしょうか。
彼女の公私ともにのパートナー、ギタリストのヘスス・トーレスが客席にいたイサベルを呼び込んで始まり、椅子に座ってヘススへの想いを歌い、座ったまま腕をちょっと動かす、その動きがすでにオレ!で胸が熱くなる。なんて美しいのだろう。フラメンコの美がぎゅっと濃縮されているようだ。やがて立ち上がって少し踊り、ヘススにくちづけ。
| Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León |
後ろの幕が開くと、ずらっと並んだ歌い手たち、インマ・リベロ、アントニオ・カンポス、ミゲル・オルテガ、ダビ・ラゴスとギタリスト、カニート、右端にヘススが、左端にイサベルがすわる。ブレリア。ミゲルが歌うファンダンゴからのベルディアーレスで踊るその姿は最初の衣装のままなのに、ベルディアーレスのリボンが見えてくるよう。かつての彼女のパートナー、パコ・アリアガも演奏。インマが歌う友情物語。アントニオのマリアーナはしっとりと。タンゴスでの、清らかな色気。いやらしくない、下品でない、女性の魅力を最大限に活かした色気。その合間に登場し、ブレリアの由来や舞踊の歴史、パストーラ・パボン、ニーニャ・デ・ロス・ペイネスやペリコンのエピソードを語るホセ・ルイス・オルティス・ヌエボの言葉も踊ってしまうイサベル。(この辺順番はあやふや)
歌を踊る。これこそフラメンコ。シンプルな昔ながらの形が振りが彼女の手にかかると宝石のように輝き出す。
そしてダビが歌うカンティーニャスは生成りのシンプルなバタ・デ・コーラで。そのバタの自然な動き。派手に“見せる”動きではなく、さらっと、呼吸するかのように動くバタ。美しい。儚くも美しい夢のような瞬間。そこから皆で袖に入り終わりかと思えば、最後にイサベルが一人舞台に残り、録音のソレアを踊る。まだ幼かった彼女に歌ったというアントニオ・マイレーナの声で幕。
彼女の師、マティルデ・コラルのスタイルはイサベルの中に息づいている。彼女の踊りを支えてきた歌い手たちギタリストたちの愛、観客たちの愛、すべてが愛に包まれた最高の一夜でございました。フラメンコは情熱というけど、激しいだけじゃない、優しくも落ち着いた暖かな愛が、究極のフラメンコの美を包んでいた、そんな感じです。見た人誰もが幸せになったはず。あの場にいられたことに感謝しかありません。
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