2025年8月4日月曜日

ラ・ウニオン2025/4日目へスス・カルモナ『ウニードス』

いやあ、もうなんと言ったらいいのでしょう。この人はどこまで進化、深化していくのでしょう。

ヘスス・カルモナ新作『ウニードス』

舞台の真ん中に、奥から手前へ向かう光の道。そこでただ一人、音楽も何もない中で踊る。ゆっくりゆっくり。空間に絵を描くかのように、旋律を奏でるかのように動いていく。伝統的な男性舞踊のキリッとした姿勢とブラソ、マノ。そして見事というしかないサパテアード。


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 


しなやかで強靭でムイ・フラメンコ。これ以上何を望もうというのか。

水玉の衣装のルシア・カンピージョとパレハでタラント。これがまた良かった。2012年ここラ・ウニオンで優勝したヘスス。2016年の準決勝で素晴らしい演技を見せたルシア。タラントらしいシリアスさやドラマチックさをしっかりと表現しつつもやりすぎにならない。同じ振りで踊るところ、二人が絡むところ、そのバランスもよく、姿も美しく。抑制されているからこその美しさ。


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 


男性がすっと女性をサポートするような、パレハの基本もちゃんと抑えているのだけどそれもごく自然な形で嫌味にならない。

エレアサル・セレドゥエラが歌うファンダンゴ・デ・ウエルバをヘススが踊る。初心者クラスの曲目として見ている人も多いかもだけど、踊る人が踊れば、最先端のフラメンコになるのです。

赤い衣装のルシアの上半身が浮かび上がる。曲はアレグリアス。すっと舞台全体に灯が灯るとバタ・デ・コーラ。華やかに優雅に。キリッとした男性舞踊のヘススと良い対比を見せる。踊り手はヘススとルシアの二人だけなのに、舞踊団公演を見たかのような満足感があるのは二人がいろんなタイプの踊りを踊ることができるからだろう。基本は伝統。でも伝統をなぞるのではなく、そこに新しい動きや形も取り入れていく。


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 

ホセ・バレンシアのカンテソロはフアン・レケーナの伴奏でティエント/タンゴ。長らくヘススと共演している二人だけど、今回はゲストという形で登場。風格のあるカンテをたっぷり聴かせた。と、ギターソロのグラナイーナで二人の後ろに登場したヘススがメロディをなぞるように踊る。カンテリブレを踊るのはもう珍しいことではないけれど、こういう曲にこそ、踊り手の技量が見える、という気がします。

からの、ブレリアで盛り上げてこれで終わりかと思いきや。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


ルシアのカスタネットでのシギリージャ。ヘススのソロ・デ・ピエからのソレアとまだまだたっぷり見せてくれるのでありました。 


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


2012年ここで優勝したヘスス.初日のアントニオ・レイと言い,コンクール優勝者たちが経験を積んでこの舞台に帰ってくるのは素晴らしいですね

いいものを見た後の高揚感に包まれつつ通りに刻まれたぺぺ・アビチュエラとヘススの名前の除幕式。



©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 






ついツーショットまでお願いしちゃったのでありました

なお、講演に先駆け20時からはぺぺ・アビチュエラ、アンパーロ・ベンガラ夫妻と息子のホセミ・カルモナの3人の話を中心に構成された書籍『ぺぺ・アビチュエラ ナウ・オア・ネバー』のプレゼンテーションとぺぺ、アビチュエラへのカスティジェーテ・デ・オロの授賞式が行われました。

まだ読み終えていませんが、まるで彼らの会話を聞いているような感覚で読める本です。著者のホセ・マヌエル・ガンボアとぺぺ、アンパーロ夫妻が壇上に。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

その様子はビデオでも。


その後、カスティジェーテの授賞式も。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

おめでとうございます。

個人的なことを言えば36年前、フェリアのカセータで初めて会った時からずっと変わらず、親しくいろんな話を聞かせてくれるぺぺ夫妻。長年の功績が受賞や書籍という形で多くの人に伝えられているのは嬉しい限りです。

ラ・ウニオン2025/三日目サラ・バラス『ブエラ』

 ウニオン三日目は大人気スター、サラ・バラスの登場。

それに先駆け、8時からはぺぺ・デ・ルシアのカスティジェーテ・デ・オロ授賞式がありました。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

サラの公演はもう随分前から満員御礼の売り切れで、売り切れになってからも問い合わせが絶えなかったとか。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


終演後はぺぺの名前が通りに刻まれたものの除幕式もあり、そこでペペがサラに歌ったそうです。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas



と、伝聞でいうのは、私はこの作品はもうヘレスで見たので、会場に行かずに4日目にインタビューを中心にまとめられた書籍の発表とカスティジェーテ・デ・オロの受賞のため訪れたぺぺ・アビチュエラ夫妻と過ごしていたからでございます。

ぺぺ・アビチュエラ夫妻は50年以上前、新宿『エル・フラメンコ』に出演していたということもあり、今でもぺぺは日本語でサインできるし、元気ですか?とかカタコトの日本語も覚えています。本については明日のブログでもまた書きますが、ペペと奥さんアンパーロ、息子ホセミ・カルモナの言葉を中心にその人生をアートを丁寧に描いています。って、まだ読書中なので、読みおわたっらまたちゃんと記事にするつもりです。



2025年8月2日土曜日

ラ・ウニオン2025/二日目アントニオ・レイ

 ガラ初日はアントニオ・レイのギターソロ。

2003年にこのフェスティバルのコンクールで優勝。それまで日本でも演奏するなどしていたもののスペインでも無名の存在だった彼が、ソロ演奏者として一歩踏み出すきっかけになったこの地にふたたびやって来て、休憩なしで2時間近くのリサイタルを立派に成し遂げました。

タランタにはじまり、セカンドギター、パルマ/コーラス、カホン、ベース、そしてフルートというグループも加わりルンバ、姉マラ・レイがカンテで加わりアレグリアスと、流れるように進んでいきます。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

日本でもリサイタルを行っているから、知っている人は知っているだろうけど、とにかく超テクニック。いやいや、指何本あるの、右手左手2つずつあるんじゃないの、っていう感じ。
強いラスゲアード聴かせたとおもったらすぐに早弾き。
で超早弾きをしてもリズムが絶対に崩れない。きっちりしている。舞踊伴奏を長らくしていたことも関係あるのでしょう。ソロを弾くには歌や舞踊伴奏が必須、というけど、こういうことなんですね。
メンバーなしの全くのソロの時は、あ、ここでもう少しためがあったらもっと気持ちいいのに、と思うところもちょこちょこあったりしたのだけど、アレグリアスやタンゴなど、これ、絶対踊れる、と思わせるような、はっきりしたリズムが生き生きとしていて見事なものでした。サパテアードであのスピードについていくのはかなり難しいかもだけど。気持ちが上がります。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ホアキン・コルテスやアントニオ・カナーレスの音楽で活躍したフルートのフアン・パリージャとの掛け合いやソロも素晴らしかったです。彼は今年のコンクールの審査員でもあります。
ブレリアとかタンゴとか即興の掛け合いもあるという感じだったのだけど、本当に良かった。
反面,パルマやカホンはずーっと同じ調子でアクセントがなくて演奏にうねりが出てきにくい感じ。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

アントニオのお父さんのトニもちょこっと出演したりして、アンコールではパコ・デ・ルシアにちなんで、『愛のうた』、アランフェス協奏曲、『スペイン』などをメドレーで。ポピュラーなものを選んで観客に楽しんでもらおうということなのでありましょう。

終演後は会場に向かう道に名前を刻んだ敷石がお披露目される、というイベントもあり、この日、カスティジェーテ・デ・オロという名誉賞を受賞したジェライ・コルテスも訪れていたのでした。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


このあとは真夜中のフラメンコ公演が、エル・アルマセンというバーのパティオであり、地元ムルシアのアルカンタリージャの歌い手バスティアンが、アントニオ・ムニョスのギターで歌いました。四六時中歌いまくっているというフラメンコマニアみたいなおじさんで、次々に歌が出てくる出てくる。最後に、ゲストなのか、舞台に出てきた踊り手がフアン・オガージャなのでした。びっくり。



カディス出身で、クリスティーナ・オヨス舞踊団で長らく活躍した人で、聞けばムルシアの人と結婚して教室をしているとのこと。なのでセビージャ近辺ではあまり見かけなくなってしまったけど、まだ海外公演などもバリバリこなしているそう。そういえば、今年のヘレスのフェスティバルでも妹ピラールのカディスフラメンコ舞踊団でファルーカ踊ってましたね。まっすぐなフラメンコ、また観たいものです。



2025年8月1日金曜日

ラ・ウニオン2025/初日/第64回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル初日/開会宣言、前年優勝者ガラ

今年もやってきましたラ・ウニオンに。
バスをグラナダで乗り換えて、家を出てから10時間という疲れもあって前夜祭は行かずご飯だけ食べて初日は寝ちゃいました。Facebookの中継で様子は見たけど。前夜祭の様子はこちらで見ることが出来ます。https://www.youtube.com/live/Hedt7VH3MBY?si=9bDXH2HHd4GWX-fI

そしていよいよ開会宣言。今年はスペインのベテラン俳優が、カンテをまじえつつ。地元出身アントニオのギターは何度聴いてもいいなあ。



このあとトロボという,即興で歌うのがちょっとあって前年度優勝者ガラ。まず最初は青少年舞踊コンクールの優勝者、マティアス・カンポス。若い.強い.うまい。マリオやグイトのビデオで学んだのだろう古き良きフラメンコの香りに満ちた踊り.まだ16歳じゃなかったかな?(17歳だそう) すでにプロと活躍していて貫禄十分.年齢制限クリアすればウニオン優勝も十分ありか。

続いてマルケス。チェロ独奏で聴かせるガロティン。 面白い.ギターのマネではなく楽器を生かしメロディやリズムで遊ぶのがいい。
最後はギターのジョニ・ヒメネスとの共演も

そして萩原淳子のタラント.衣装もタラントにふさわしい抑えた色調でドラマチックに魅せる


ジョニのソロがこれまた最高だった.音がいい。
パコ・デ・ルシアのフレーズを誰よりもパコに近い、パコと同じセンティードで響かせる。なんだろう,去年もそうだったけど心にまっすぐ飛び込みんできて涙目にさせられるこの演奏.音,そして間合いの良さ?

最後はヘスス、マルケスとグアヒーラ。これまた最高でした。
そして再び萩原でアレグリアス.マントンとバタで。バタさばきがいつもながらに上手。





最後は客席後方から登場したヘススが、プレゴンを歌い

立ってミネーラ,これまた素晴らしかった。さっきのグアヒーラといいメロディアスな曲をニュアンスをつけて上手に歌い上げるのにはほれぼれする。
















 

2025年7月30日水曜日

アリシア・アクーニャ急逝

 7月24日、飛び込んできたニュースに目を疑った。

セビージャの歌い手アリシア・アクーニャが亡くなったというのだ。ついこの間、誕生日を迎えたばかりの47歳。突然のことに言葉もない。

セビージャ生まれ。アラメーダにあったアンドレス・マリンの父のスタジオやマノロ・マリンらに舞踊を習ったというが、ペーニャ・ピエ・デ・プロモで歌い始め、歌い手としてビエナルのペーニャ公演で公式デビュー。確か親御さんがこのペーニャの会長さんかなんかだったように覚えています。



ヘーレン財団で学んだりコンクールに出場したりしてキャリアを重ね、
舞踊伴唱で、ラ・チョニやアンヘレス・ガバルドンなどの舞台を支えました。
踊りから始めたからということもあるのか、舞台でのいかたや演技も上手。





ここ10数年は赤い髪がトレードマークで、エレクトロニックミュージックとの共演などで意欲的に活動していました。




心よりご冥福をお祈りします。


2025年7月17日木曜日

第9回フラメンコ才能コンクール決勝


クリスティーナ・ヘーレン財団によるフラメンコ才能コンクール舞踊部門、マノロ・ソレール・コンクール決勝が7月14日19時からセビージャはトリアーにある財団本拠地のトリアーナ、フラメンコ劇場で行われました。

7月8日にはカンテ決勝がウエルバで、9日はギター決勝がトリアーナで行われ、カンテは1位ベレン・デ・ロス・レジェス、2位アルバロ・ビジャラン、3位アントニオ・ロペスで1、2位は財団の学校で学ぶ奨学金も獲得。9日にはギター伴奏部門で1位パブロ・エレディア、2位カルロス・グランデ、3位フアン・バリノテ、奨学金サルバドル・リンコン、ソロ部門奨学金カロリネ・エスピノサが受賞。

そして14日の舞踊部門決勝。6月末の準決勝に続いて行って参りました。決勝は7人。それぞれ2曲踊るので4時間の長丁場となりました。疲れた。審査員の皆様(批評家マルタ・カラスコ、ルイサ・パリシオ、チョロ、フェルナンド・ヒメネス、パトリシア・ゲレロ)もお疲れ様でした。

トップバッターはコルドバの青少年コンクールで優勝したナタリア。タラント。1番目ということで緊張してたのかな、コルドバの決勝の時のような実力発揮には至らず。でも表現はいいし、力もある。ただ足らんとのジャケットにキラキラついているのってどうよ、あと、レオタード風のトップもどうなんでしょう。

グラナダのマリア・マシアスはカーニャ。でも速度早く、カーニャぽさはない。マントンも力で持ってくタイプ。

ルス・マリア・ガランもタラント。シンプルな衣装だけどスカートのフリルもっと少ない方がよりタラントらしさが出そう。体の使い方がピカイチ。また光るなにかを持っている。

セビージャのハイロ・ベガ、17歳はシギリージャ。何度見ても膝がくっついているとことか気になるんだよね。

コルドバの18歳まで部門優勝のラウル・アルバはアレグリアス。うまい。


続くグラナダのロレナ・エレディアもアレグリアス。カンブレっていう状態を剃らせる技連発。でもマントンの扱いとかまだまだ。


コルドバのロレナ・プリドはティエントス。超スピードで始まり、その後普通の速度になるんだけど、ティエントらしい味わいはない。タンゴはやる気十分。
休憩挟んで2曲目。ナタリアはカーニャ。準決勝でソレア踊ってるし、たぶん衣装も同じ黒いバタというのは減点対象になりそう。違う曲であっても似過ぎてないか?でも踊りは良かった。

マリア・マシアスはタラント。緑のフレコの衣装はうーん、これもタラントらしくはないよね。タラントは地味目真面目な曲、鉱山のもだからということをもちっと考えてほしいよね。今の若い子はみんな派手。
ルス・マリアはジャケットにパンタロンでファルーカ。中に着ているのがレオタード風なんだけど、普通のシャツとかの方が絶対いい。バストン使いも様になっている。伴奏、伴唱がイマイチなんでオフィシャルにやってもらった方が、と思うけど、最後、歌い手に踊ったりするから合わせの関係なのかも
ハイロはカーニャ。ソレア・ポル・ブレリアぽくてカーニャらしさ皆無。

ラウルはシギリージャ。やっぱうまい。
グラナダのロレナもシギリージャ。ダンスなんだけど、衣装が闘牛士の仮装のよう。男装似合う女性と素手ない人といますね。コンパスもあれ、って思う瞬間あり。
最後はコルドバのロレナでロマンセ。これもロマンセぽくはない。

で結果。
優勝はハイロ、2位にマリア・マシアス、3位にラウル・アルバ。奨学金はハイロとマリア、ルス・マリアの3人にプラス、特別にラウル・アルバにも。あと、アンダルシア舞踊団で2週間の研修がルス・マリアに送られました。


ハイロの優勝、マリア・マシアスの2位にはびっくりしたけど、何を評価するのかの違いなんだろう。若さを評価してるのかなあ、勢いはあるけどちょっと雑なマリア・マシアスはルイサにバタとかマントンとか扱かれたら上達しそうではある。まあ、私的には絶対良いと思ったルス・マリアとラウル、18歳の二人も奨学金で勉強できるし良かったと思う。

ビデオ貼っときます。みんな普通にタブラオで踊れそうな感じ。実際に、タブラオで踊ったりもしてるらしい。今後の活躍も楽しみです。