2019年5月20日月曜日

メルセデス・デ・コルドバ『セール。ニ・コンミーゴ・ニ・シン・ミ』



5月18日セビージャの旧万博会場カルトゥハにあるボックスと云うホールでメルセデス・デ・コルドバの公演。昨年4月生まれ故郷のコルドバで初演した作品の再演。

物語はある、というのはわかるのだが、正直、はっきりと、細かいところまではわからない。
黒紗幕の前でエンリケ・エストレメーニョ、エル・プルガ、ヘスス・コルバチョ、3人の歌い手たちの伴奏のないカンテソロで始まり、彼らがいなくなるとそこには柵に囲まれ修道女のような衣装でメルセデスがうずくまっている。

タラント。タラントといえば彼女の代表曲の一つで、ウニオンのコンクールで準優勝したそのタラントは誰のものよりも情感たっぷりで女性らしさに溢れ、一言で言うと今までにないほど色っぽいタラントなのだけれど、そのタラントとは全く違う、閉塞感。閉じ込められた心。強いサパテアードがここではない自分の居場所を探す心を感じさせる。 

十字架が降りてくる。運命の象徴?
エンリケの膝に崩れ落ちる。
マントンでのソレア・ポル・ブレリア。メルセデスのパートナーでもあるフアン・カンパージョのギターが素晴らしい。
ヘスースが歌うミロンガ。ここで音響トラブル。残念。

上手の柵の中に白いバタ・デ・コーラ姿のメルセデス。フラメンコ人形のようだ。
ペイネタをつけてカラコーレス。メルセデスは振りを踊っているのではない。
彼女の中にある何かが彼女を動かしている。踊らずにいられない。踊らのだなくてはいられない。踊りで伝えたいことがあるのだ。全身で表現する。借り物ではない。
白い衣装のあちこちに水玉を貼り付ける。フラメンコぶっているかのように。

その水玉を取り去る。フラメンコぶるのも本当の私ではない、というように。
グラナイーナ。
白いマントンで裸足で歌を踊る。

フアンとギターの間に入るメルセデス。二人の濃密な時。

そしてソレア。これがすごかった。何が何だかわからないけれど涙が出てくる。
やっと自分を、自分の居所を見つけたんだな。それでもなおコラへ、どうにもならない思いはある。そんな感じ。



音響トラブルがあろうと、客席の照明がずっと消えず、舞台の照明効果が半減しても、
これをやる、やり遂げる、というアルティスタたちの思いがあれば、問題はないのかも。


後日メルセデスと話した時、
「全部本当だから」
と言っていたけど、本当に、伝えたいことがあると、そのエッセンスはすべてを超えて伝わるのだ、と思う。

説明的なレトラとか、十字架とか、なくてもいいかも。
そこにある思いが本物だから。


全員でのスタンディングオーベーションは当然でしょう。











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