2016年5月14日土曜日

イスラエル・ガルバン「ラス・プロセシオネス」

セビージャのエスパシオ・サンタ・クラーラで開催中の展覧会「Sacer el martirio de cosas」に付随するパフォーマンスのひとつとして、イスラエル・ガルバン「ラス・プロセシオネス」が5月12日上演された。
元修道院だったエスパシオ・サンタ・クラーラ1階の、その昔は食堂だったという長細い部屋には、壁沿いにつくりつけの、壁と同じくタイルばりのベンチと厚い木の長い、これもまたつくりつけのテーブルがあり、観客はそこに座る。まんなかのスペースには1m四方ほどの小さなベニヤや少し高くなった舞台などがみっつ。部屋の奥にはスクリーン。
暗い部屋。スクリーンには様々な言葉、文がうかび、きえていく。そのスクリーンの青い明にうっすらとてらされた中、イスラエルが登場。黒い頭巾をかぶり手には鈴のようなものをつけそれをならしながらまっすぐ歩いてスクリーンの奥へ。
スクリーンの奥で踊る彼の姿がスクリーンに影で映る。
スネアドラムを打って踊る。
やがてその彼がスクリーンの下からはうようにして出て来る。
ねそべって踊る。
お尻を床につけいざり歩きながら踊る。
バックにはまるでラジオのダイヤルをまわしてるかのようにくるくると変わる、音楽や話し声。クラシック、宗教音楽、民謡、昔の歌謡曲、フラメンコ、カディスのカーニバルの音楽。大砲のような音。
音楽や言葉。断片でつづる歴史。
イスラエルは踊る。正確で美しいサパテアードをきかせ、ときにシギリージャの、ときにブレリアのアイレで。音楽とも言葉とも関係ないようであるような。
広間の角の立ち見客をかきわけ、そこからとりだした大きなタンバリンのようなものをならしながら。
その上に立ち、椅子に座り、広間の片隅につきでたバルコニーのようなところに上がり、
ベンチに座り、机を叩き、身体を叩いてコンパスをとり。さまざまな形で踊る。
その息づかいがきこえるようなところに私たちはいる。手をのばせばさわれるくらいの距離。この距離でみたからこそみえてくるものがある。
たとえば、ふだんはマイクを通してきいている彼の靴音が、こんなにも力強く、繊細で美しく、語りかけてくるかとか。
形の美しさはいうまでもない。その呼吸。
観客の存在をも楽しんでいるような彼の動き。
息をのむような瞬間の数々。オレ!と叫んでしまう瞬間。
裸足で、さっき靴をはいてやったのと同じサパテアードをうつ。その力強さ。

いやあもうすごいの一言でありました。

作品「ロ・レアル」のときにしぼった身体が、かつてのフラメンコダンサーの身体というだけでなく、ジャンルをこえたダンサーの身体になっているという感じ。

天才。
観客は皆圧倒されてしまうしかないのでありました。

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