2014年7月8日火曜日

アントニオ・ガデス舞踊団「フエゴ(炎)」

 世にも美しいセビジャーナスを観た。
それを踊るのはエンリケ・パントーハ。
ゆっくりとした歌に乗って
ゆっくりゆっくり腕を動かす、身体の向きを変える。
派手なサパテアードや回転のない、
ゆったりとしていてしかもムイ・ムイ・フラメンコなセビジャーナス
これを観ることができただけでも幸せ。
1989年1月にパリで初演された「フエゴ(炎)」
そのスペイン初演は2014年7月6日マドリード、サルスエラ劇場で。
ガデスの十周忌にあたる今月、25年ぶりに上演されました。
昨日6日日曜日が初日。
で8日はグラナダのヘネラリフェ野外劇場で公演し
10日から20日まで(14、15日は休演)
サルスエラ劇場で上演します。
 
マヌエル・ファリャ「恋は魔術師」に想をとり
という点では映画と重なるのですが
内容/あらすじは変わっています。
カンデーラとカルメロは恋仲だが
カンデーラはけんかで死んだ男の亡霊にもひかれるのだが
魔法の力とコンパスで(?)ついにはおいはらいめでたしめでたし結婚式、
というのがガデス版「恋は魔術師」。
原作や映画ではカンデーラにまとわりつく亡霊に女友達をあてがって
二人が結ばれます。
それもなんだか、って話ではありますが。
音楽はマドリード州立管弦楽団+女性歌手によるファリャ「恋は魔術師」の生演奏
+6人の歌い手と二人のギタリストによるフラメンコ
という豪華版。

振付はさすがガデス 、といった、
人々のみごとな動かし方に脱帽。
振り自体はシンプルなのですが、動き方がきれい。
一人一人の動きはちがっても
全体のバランスがとてもいい。
踊り手たちも若いきれいな子だけではなく
少し年のいった人がいたり背が低い子がいたり
皆が同じではないところがまたガデスぽい。

ただガデスの役をガデスでない人がやっているのは
ガデスがその役を踊っているを観た事がある人には違和感があるかもしれない。
ガデス時代と一番の違いは緊張感かもしれない。
全体に緊張感が不足しているような気がする。
とくに男性のおなかのあたりのゆるんだ感じにはちょっと脱力。
カンデーラ役(この日はマリア・ホセ・ロペス。
エスメラルダ・マンサナとのダブルキャスト)もぬきんでた感じがないので
前半は群舞の中でどこにいるかがすぐにわからなくなってしまう。

場面は亡霊となる男の死を現すけんかの場面に始まり
映画にもあった洗濯の場、クリスマスの宴、ロシオの宴、魔法、結婚式ということで
ブレリア、セビジャーナスの大盤振る舞い。
踊り手たちも歌い、ミュージカル風でもある。
初演のときも魔術師の役を歌い踊ったラ・ブロンセが今回も同じ役。
彼女やその夫のガブリエル・コルテス、
ギターのアントニオ・ソレーラ、そして最初にあげたエンリケ・パントーハと
ベテラン勢が重みを与えている。

何をいって私がみたのは初日。
これから回を重ねてよりよくなっていくことだろう。

オケもうまくなってくれるといいな。
ファリャのソロを歌ったサラ・サラド。
昨日はタイミングが微妙にずれていたような気がするのだが
それもきっとどんどんよくなることだろう。







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