2018年6月16日土曜日

傷口にウォッカを吹きかけろ

ハードボイルドなタイトルに戸惑いつつのムジカーサ。
代々木上原の坂の上のマイクなしで声が届き、オペラグラスなしで表情を見ることができる小さなライブスペース。
松彩果を初めて見たのもここだった。その身体のコントロールにびっくりした。
あれは何年前だろう。

不思議な公演だった。
軸が揺るがない松。
この人ならではのペソ、重みを持った動きで彼女のフラメンコを表現する森田志保、
明るさと圧倒的な存在感で聴かせるヘレスの太陽、アナ・デ・ロス・レジェス
スペインの若手たちと何ら変わらないセンスで聴かせる徳永兄弟、
独自の世界を持つNOBU、
シンガーソングライターの松谷冬太
繊細なパーカッションの朱雀はるな。
メンバーそれぞれの個性も様々だし、内容もフラメンコ・フラメンコな曲あり、フラメンコポップの名曲あり、日本語の歌あり、ユーモアあり、芝居仕立てなところあり、と様々。
それがごちゃ混ぜに観客の前に差し出される感じ。
ミックスパエジャというかごちゃ混ぜサングリアというか。
多分、松と森田とアナとギターだけでやれば、めっちゃフラメンコなコンサートになったと思う。
あえて異種格闘技的な存在を入れることで、
人生はフラメンコだけじゃないんだよ、って言ってるのかも?

マルティネーテからのバンベーラ。彼女は芯がしっかりしているフラメンカ。
こういうフラメンコが好きで、そこに近づきたい、私はフラメンカ!、という意思を感じる。
松谷のライ・エレディアの名曲lo bueno y lo maloはフラメンコでなく歌うとこうなるのか、という感じ。個人的に思い入れのある曲だけに、うーむ、ちょっと悲しい。でも名曲はこうやって広まっていくのかもだな。
そこに絡んで始まる黄色のシャツに赤いジャケット、スペインの国旗カラーの衣装のNOBU。アレグリアス。ジャケット、もう少し丈が長い方がいいんじゃないか、って思うんだけど、どうなんだろう。国旗意識してのあえてでの長さ?うーむ。
この人が好きなのはフラメンコのノリなんじゃないかと思う。コンパスで迷子になったり、コロカシオン姿勢も悪いし、よくこれで足打てるなー、と感心。バーン!と決めるのが気持ちよさそうで観客を引き込んでいく。
多分、コロカシオンとか基礎をきちんと学んで、その上にこの明るいノリ、ユーモアのセンスが出たらすごくいいのではないかと思うのだけど、どうなんだろう。フラメンコにとってもユーモアはすごく大切で、それを表現できるキャラクターは貴重だ。
森田はソレア。ゆっくりした動き。重みがある。松がフラメンコに近づこう、フラメンカになろう、という踊りだとすると森田は私はこう、私の好きなフラメンコはこう、私のフラメンコはこう、という感じの踊り。
どちらもフラメンカなのだけど、そんな気がする。
アナは表現の幅が広がった気がする。重みが出てきたというか、タンゴやブレリアの自由闊達さだけでなく、マルティネーテやソレアなどの痛みや重みも見事に表現していた。


ごちゃ混ぜ感はあって、もう少し整理する必要があるかもなんだけど、そのごちゃ混ぜ感も意外に悪くないってのが本音。
日本のフラメンコもいろいろだね。楽しいね、と思った1日でした。

ちなみにスペインのバルで出すサングリア、赤ワインに果物、炭酸系ソフトドリンクだけでなく、ウォッカやブランデーなど、そこらへんにあるお酒を適当に混ぜたりします。
なんで甘いからといって飲んでると悪酔いすることもありますよ。ご注意。

それにしても客席が豪華。日本のフラメンコシーンを引っ張っているアルティスタたちが揃ってた。
全員でなんかやったらすごいだろうなあ。











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