2018年9月26日水曜日

ニーニョ・デ・エルチェ「アントロヒア・デル・カンテ・フラメンコ・エテロドクソ」

ある意味ビエナルでもっとも注目されていた公演かもしれない。
ニーニョ・デ・エルチェの「異端フラメンコアンソロジー」
その名の通り、エルチェ出身の歌い手が、イスラエル・ガルバンのブレーンとしても知られるペドロGロメロの助けを得て、フラメンコの異端を再現・創造したCDのプレゼンテーションも兼ねたコンサート。


客席の電気も点いたままTシャツにスニーカーで現れた彼は、黒いスーツ、白いシャツ、黒の革靴に着替え始める。
舞台で着替えるダンサーたちへのオマージュまたは皮肉?
日常から非日常へ。スーツは仕事着。

西部劇の様な伴奏(ラウル・カンティサーノ)でのファルーカ。
ずっとガシャガシャ同じフレーズを続ける伴奏ギターでのシギリージャ。
壊れたラジオ、音飛びのするレコード。そんな感じ。
キーボードが教会のオルガンの様に伴奏するメジーソのマラゲーニャ。
確かにグレゴリオ聖歌の影響があるとか言われているけどね。
モチュエロのサエタとマリアーナも、モチュエロという歌い手がサエタを歌う時歌詞を忘れたかなんかでマリアーナを歌ってしまってブタ箱行きになったという昔のエピソードからの発想だろう。
Bienal Óscar Romero

フラメンコで遊んでいる、そんな感じ。
音程、声のコントロール、コンパス、基礎がきちんとしているから、嫌な感じは全然しない。
そしてしゃべるしゃべる。
この劇場に出るのは2回目だ、ビエナルも2回目だとか、この劇場で出るのは最後だろう、とか、しゃべってる時間と歌ってる時間、どっちが長かったろう。
スペインにはモノロゴという漫談というか、一人でおかしい話をする芸人がたくさんいるんだけど、そんな感じでもあり、パフォーマンスというか、歌い手を演じているようなきもするという意味で演劇的でもある。
マキタスポーツみたいな感じ?

ビエナル初日、闘牛場でやったエウヘニオ・ノエルの反フラメンコ、反闘牛の文をまたも暗唱。
それを踊るのは金髪長身のエドゥアルダなるバイラオーラこと、イスラエル・ガルバンであります。
女性にしては肩ががっしりしてるけど、いやいや腕の動きとかいつものイスラエルよりずっと女性的に見えたのは錯覚?

Bienal Óscar Romero

 ティム・バックリィのディープソングはロック。
客席に降りて歌ったぺぺ・マルチェーナのファンダンゴ。
ビセンテ・エスクデーロのマルティネーテとデブラは、男装というか、女装じゃない、いつものイスラエルの踊りが入る。すごいの一言。
ビセンテ・エスクデーロはガデスも慕った、フラメンコ男性舞踊の先駆者。
ビデオでしか知らないが、いかにもエスクデーロな感じ。
ナティ・ミストラルというおばさま歌手風となうってのタンゴ。
パソドブレ伴奏のカーニャ。これ、元ネタはラファエル・ロメーロがパリで歌ったカーニャでございます。

Bienal Óscar Romero
最後は大音響でルンバ。

伝統をなぞるだけでは飽き足りず、
「ここに俺がいるぞ」というために
人とは違うフラメンコをやってます、という感じ。

きっとカンテのイスラエル・ガルバンになりたいのだろう。
イスラエルとは全然違うような気もするが、自分の表現を探そうとする、というところは同じなのかな。
伝統のフラメンコを愛する人には毛嫌いされ、その発言がいろいろ問題視されるのもわかるけど、これも一つのやり方。
ベースはあるし、ただめちゃくちゃにふざけているのではなく、理由のあるおふざけ、というか。
私は楽しめました。


23時からはマリア・モレーノ「コンセプシオン」。
でも劇場から出たのが開演15分前で諦めました。ヘレスでやんないかなあ。

Bienal Óscar Romero

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