2017年3月4日土曜日

ヘレスのフェスティバル ダビ・コリア「エル・エンクエントロ」

美しい。このうえもなく美しい。
全ての動きが、あらゆる形が。
涙が出るほど美しい。
繊細で、優雅、かつ力強く、華やかで上品。典雅。
これまでにないフラメンコ作品の登場だ。

ダビ・コリア「エル・エンクエントロ」出会い。

セビージャ出身。スペイン国立バレエ、アイーダ・ゴメスやラファエラ・カラスコのカンパニーで活躍。ロシオ・モリーナの「オロ・ビエホ」やエステベス&パーニョス「フラメンコXXI」などにも出演している。去年まではアンダルシア舞踊団ソリストとして活躍していた、というキャリアだけでもその実力のほどは知れるはずだ。日本にも、岡田昌己の招きで何度か来日している。
その彼の初めての大舞台でのリーダー作。2014年の「エスピラル」も良かっただけに期待は高まる。そしてその期待を大きく上回る、素晴らしい出来だった。

Javier Fergo para Festival de Jerez
パソドブレがかかる中、何かのパーティーなのだろうか。燕尾服のジャケットを羽織ったダビ。夜会服の女たち。マイクに向かっては言葉を出せず、また他の人が同じことを繰り返す、というオープニング。トリージャの歌でジャケットを肩脱ぎにし、また着るを繰りかえす。演劇的な場面に、どうなるんだろう、とちょっと心配もしたのだが全くの稀有だった。
Javier Fergo para Festival de Jerez

アナ・モラーレスとのパレハでのカーニャは、カーニャの基本といえるピラール・ロペス版に敬意を払いながらも、現代的なテクニックを駆使して美しくつくられている。これはもうガデスとオヨス以上のパートナーではないか。二人のバランスも良く、パレハで踊るときの基本である、互いを見て踊る、男性によるリードなどもきちんとしていて、もうこれ以上はないというほどのもの。ダビはすっと伸ばした腕がそのまま舞台の端まで届きそうにまっすぐで、美しい角度を描き、アナのやわらかな腕の動きとの対象も、これまた美しい。

ロマンセで花嫁のベールをめぐる攻防というか遊びというかがあり、
Javier Fergo para Festival de Jerez

そしてファルーカ!
Javier Fergo para Festival de Jerez

男性舞踊らしい昔からの動きやポーズがここでもちりばめられながらも、現代のテクニック、現代の美意識で再構成されている。ヘスース・トーレスの素晴らしい演奏も相まって、見事の一言だ。

オレンジを転がして二人の絡みがあってからの
Javier Fergo para Festival de Jerez



アナのタンゴもすごかった。アラベスクからのレマーテなんて見たことない。ビデオにあるので是非見て欲しいが、すごいの一言だ。コンパス感あってこその美しさ。

Javier Fergo para Festival de Jerez

ダビとアナの二人だけでなく、そのほかのダンサーたちも素晴らしい。
室内楽のような、とは小島先生の言葉だが、その言葉通り、素晴らしいアンサンブルを見せる。


最後、またパーティーの場面になって、乾杯して終わるというのもかっこいい。

1時間15分。何も余らず、何も不足なし。
もう一度、二度三度と見たい作品である。

Javier Fergo para Festival de Jerez

なお、ダビのこの作品はラファエラ・カラスコなしには考えられないし、イスラエル・ガルバンやベレン・マジャ、ロシオ・モリーナ、イサベル・バジョンら現代活躍中の踊り手たちはもちろん、ガデスやマリオ・マジャ、グラン・アントニオ、ピラール・ロペスなどなど、たくさんの先駆者あってのもの。皆が少しずつ開いてきた道で花を咲かせているという感じ。だから余計に美しいのだ。

卓越した技術と抜群のコンパス感、フラメンコへの深い敬愛あってこそのものなのだ。

ビデオはこちら

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