2020年9月23日水曜日

ダビ・コリア&ダビ・ラゴス『ファンダンゴス!』

 いやあ、すごいものを観てしまった。

私がこれまでの30数年に観てきたフラメンコ作品の中でも最もすごいものの一つ。

ないがすごいって、作品としてのすごさ。

音楽、踊り、照明、音響、動き、効果。個々のパフォーマンスも、どれをとってもすごすぎて、圧倒された1時間半。それが短く感じられる。

なんというか、これはレベルが違う。これまでに観てきたフラメンコ作品とは違うレベル。例えば、パリ、オペラ座のクリスタル・パイトの作品作りに匹敵するすごさ。と言ったらわかってもらえるだろうか。

どんな舞踊祭でも、どんなに格の高い劇場でも、この作品なら大丈夫。そんな、めちゃくちゃ質の高い作品。

エレクトリックミュージック、民族音楽、クラシック、そしてフラメンコ。全てが一緒に、一つの世界を構築している。それは地方ごとの文化をもち、内戦で血を流した歴史のあるスペインそのもの。

舞台の上の赤い丸は、スペインの赤土であり、これまでに流してきた血の海。そして闘牛場のアリーナでもある。光と影のスペイン。民衆を虐げてきた歴史。男性優位主義。そんな暗い影も、祝祭のスペインの、明るく楽しい、光に満ちた一面も余すことなく描き出す。

純粋なフラメンコも、コンテンポラリーも、全てを抱擁するスペイン。

ファンダンゴはフラメンコの曲種名というだけではなく、伝統舞曲であり、また騒ぎという意味もある。

カオスの国、スペイン…


伝統舞曲ファンダンゴのリズムで始まり、スペイン国歌が、昔のスペイン国歌であるリエゴ讃歌に繋がり、スペインの現代史が炙り出される。

プレゴンで、「恐怖を売る」と歌うのは、今現在の状況とリンクする。

ソレア、マラゲーニャ、シギリージャ、ファンダンゴ、マリアーナ。

フラメンコ曲に彩られ、フラメンコのテクニックで表現しているのだが、コンテンポラリーの文法や演劇的手法もあり、“みせる”のだ。

手前の赤い円と、舞台後方の白い砂浜のような舞台(実はお米だそう)。二つの世界の対比、そして二つの世界の繋がり。


ああ、もうこれは何度でも観たい。日本のダンスフェスティバルでもぜひ上演して欲しい作品だ。

フラメンコの進化が目に見える形でここにある。






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