2020年9月25日金曜日

ディエゴ・ビジェーガス『シンコ』

 ロペ・デ ・ベガ劇場から徒歩15分くらいかな。アルカサルでのコンサートは、ディエゴ・ビジェーガス。サンルーカル生まれの33歳。最近はサラ・バラス公演にも出演しているミュージシャン。フルート、サックス、ハーモニカ、クラリネットを操り、いろんな人の公演にも参加してます。ビエナルでもすでにホセ・バレンシアとアナベル・ベローソの公演に出演しています。

この公演、本当は8月にサン・ヘロニモ修道院庭園での公演の幕開けを飾るはずでした。が、舞台設営の遅れから、この日に延期されたのでありました。でも結果的には、より大きい会場で、それも満員で、たくさんの記者も観に来ていて、良かったように思います。

いやあ、楽しかった。面白かった。

歌心があるんですね、彼には。フラメンコの細かいところがよくわかっている。

今回のタイトル『シンコ』は5つの楽器を操り、5つの文化の影響を受けている、という意味でまだ出ていないアルバムのタイトルでもあるそうです。

最初はフルートで。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

 

フラメンコギター(ケコ・バルドメロ)、パーカッション(パハロ)というフラメンコでお馴染みの楽器だけでなく、エレキギター、ベース、ドラムスに3人の女性コーラスという、ラ・エレクトロ・アコースティック・バンドというグループを率いての登場。ロックほどじゃないけど、ボリュームもでかいし、ムービングライトで光が会場を走る、という、通常のフラメンココンサートとは一味違います。音的にはジャズフュージョン調かな、と思ったのですが、本人MCによると、オリエンタルとのこと。スペイン、というかヨーロッパ人のいうオリエンタルは極東までこず、アラブ的なものをいうことも多いので、それかな。あれ、と思うとティエント/タンゴでございました。フルートはやっぱ、先駆者ホルヘ・パルドのスタイルに似ているかな。フアン・パリージャよりもホルヘな感じ。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

2曲めはソプラノサックスでアレグリアス。自分が基礎を学んだクラシック音楽の影響ということらしいけど、いや、めっちゃフラメンコ。ひねりがあるし、バイオリンとのやりとりも楽しい。二人でアンビエンテ作っていく。フラメンコの感覚が体の一部になっているから自然。コンパスってメトロノームが刻むのとは違って、時にのびたり縮んだりもするんだけど、そういうのとか、呼吸の感覚。こうきたら落ちる、とかの決まり手。音が止まっても回っていくコンパス。そういうのが全部入っていて、気持ちが良いのであります。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

3曲めはエンリケ・モレンテに捧げるタンゴ。ハーモニカで演奏。南米の影響、と本人。歌と同じような強弱つけたり、いやあ達者。歌のメロディをなぞるだけじゃないのが、当たり前だけどいいのであります。曲と曲の間にもよく喋るけど、曲の演奏中にもメンバー紹介したり。八面六臂。続くクラリネットでのセラーナには同じサンルーカル出身のカリダ・ベガの歌も少し入ります。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

5曲はジャズ、レゲエ、シャンソンなど、世界中の音楽がちょっとずつ入ったような曲。次のソレアはなんと『シャクハチ』というタイトルで、尺八のイメージでフルートをふいての曲。最後、中国風の音階だったようにも思うんだけど、ま、いいか。お次はハーモニカでアルゼンチンタンゴ風?グアヒーラ。ここでもカリダの歌が入る。

ここでゲストのマリア・テレモート登場。歌ったのは『at last』。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


声から発声から変わってビヨンセになる。すごいわー。カラオケ番組でも優勝しそう。やっぱ音程いいしセンスあるのね。喝采の嵐。で続いてブレリア熱唱。パケーラの歌い出しで、同じこの場所でパケーラが歌ったこと思い出した。あれはいつのビエナル? マリアは妊娠中の大きなお腹で、踊ると歌聞こえないとわかると、手持ちのマイクを胸の谷間に挟んで歌い踊るとか、こういうとこ好きだわー。最後は二人で踊って引っ込むのもいい。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

アンコールのルンバもノリノリで、みんな満足して家路に着いたのでありました。

最後、みんなで赤いスカーフ引っ掛けて、照明も真っ赤にし他のは、スペインのアーティストや音響や照明など文化関係の人たちのデモに引っ掛けたもの。

まあ、喋りすぎるとか、色々取り込みすぎでカオス、とかのご意見もございましょうが、体全体で演奏する(よく動く)、コミュニケーション上手な彼とその音楽に楽しませてもらった人が99%では?

クラシックのミュージシャンのフラメンコ演奏で溜まっててフラストレーション吹っとびました。







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