2020年9月23日水曜日

ダビ・コリア&ダビ・ラゴス『ファンダンゴス!』その2

昨夜はともかくすごいものを見た、という興奮で書き上げてしまいましたが、一夜明け、ビエナルのオフィシャル写真を見ながらちょっと振り返ってみようと思います。

いや、思い出してみても、やっぱりすごくて、それは作品の構成や舞台の使い方もそうなんだけど、そういう面で言えば、マリア・パヘスがシディ・ラルビ・シェルカウイとやった『ドゥーナス』なんかも素晴らしかった。スペクタクル!な感じというのでびっくりしたのには、馬鹿でかい壁が動き出すスペイン国立の『ポエタ』や、大きな人形が登場するエバの『フェデリコ・セグン・ロルカ』もあるよね。
でも、この作品は、特に大掛かりな装置があるわけじゃないのだけど、ミニマムなものを効果的に使っているのがすごいと思う。そして照明の力も大きい。
でも何よりも、すごいのは出演アルティスタたち。それぞれの力。一人一人がソリストとして活躍する実力の持ち主だから、スターと群舞、踊り手とバックミュージシャンではなく、
一人一人が主役のように思えるのだ。

開演ベルの後、エレクトリックミュージックで奏でられる伝統舞曲のファンダンゴ。ループのように続くかと思うと、ちょっと立ち止まったり。
幕はまだしまったままだ。これがちょっと長いな、と思ったのだけど、本来は5分前のベルが鳴った後にかかるそうなのだけど、それがコロナ対策のアナウンスの後になったので長く感じたみたい。なるほど、それなら理解。

幕が開くと、真ん中に赤い円。その真ん中にダビ・コリアがすくっと立っている。3人の男女が縁の縁を回る。腕を斜めに上げ、スペイン国歌を歌い出す、踊り手たち。スペイン国歌に歌詞はないからハミングだけど。

上手から登場したダビ・ラゴスが「鐘がなる…リエゴのために」と歌うと、共和国時代の国歌であるリエゴ讃歌のメロディーをサックスが奏でる。ダンサーたちは拳を握って掲げる。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


 頭にかぶる白いハンカチは教会の象徴だろう。カトリックの国。

スペインの赤い大地は血の海だったのでもあるのかもしれない。内戦で流れた夥しい血の。そして闘牛の血が流されたアレーナでもある。

激しいサパテアードは銃の響きか、カオスそのもの。

ダビ・ラゴスがプレゴンで「恐怖を売っている/恐怖を買う/聞くのを恐れる/一度しか死なないのに」と歌う。これってまさに今現在の状況じゃ? この曲今年の1月ニームで観たダビの『オディエルノ』でも歌っていた。そういえば、共演のエレクトロニックミュージックのアルトマティコとサックスのフアンも同じだ。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

ペラーテ、ピニョーナに続き出演のアルフレド・ラゴスの太く、深く、厚みのある音が響く。

ダビ・コリアの見事なテクニックで見せるソロ。この人の身体能力はすごい。特に回転が素晴らしい。アクセントの付け方が粋!

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

なんだろう。フラメンコの枠を超えたすごい作品じゃないか、という気持ちになってくる。

ソレア。舞曲ファンダンゴのリズムに載せて歌われるマラゲーニャ。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

血の海に倒れる人々を覆い尽くす黒い布。

すると舞台奥にもう一つの世界が現れ、そこに上から砂が落ちてくる。上手に。下手に真ん中に。さらさらと、砂時計のように。

砂浜が現れる。そこを『牧神の午後』を演奏しながら歩くサックスのフアン。

カスタネットを使った民族舞踊をのどかにおどる。太鼓のリズム。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

砂を放って描く線の美しさ。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

シギリージャ。

女性を我が物顔に扱い、狼藉三昧。

ある意味演劇的。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

白いバタ・デ ・コーラの女性は、バタのはしに足があり、まるでケンタウロスのよう。

裸足で髪を振り乱しているのは、女性たちのコラへの現れ?


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

裸足のアレグリアス。8月にアルトマティコと魅せた、パウラ・コミトレがここでも本当に素晴らしい。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

振り乱した髪もバタ・デ ・コーラのように、毛先までコントロールしている。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


マリアーナ。

そして最後はタンゴ/ルンバ。狂宴のスペイン。


そう何があっても徹底的に楽しむ。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

最後は二人のダビがゆっくり舞台奥へ、砂浜へと消えていく。


サルバドール・タボラやマリオ・マジャらの、社会派のフラメンコ作品の流れも受け、でも舞台作りや複数での踊り、人物の舞台上での動きなどにはコンテンポラリー的な文法も使いながら、でも、その真ん中にあるフラメンコが揺るぎないしっかりとしたものだから、すごい作品にと仕上がっているのだろう。

内戦と血とマチズモの影。祝祭とカオスなスペインは才能あふれる天才たちの国でもあり。前を向いてゆっくりと進んでいく国なのだ。

あー、早くもう一度観てみたい。


あ、ダンサーのうち、マイセ・マルケスはコロナの疑いで(結果は陰性だったけど)抜けたダンサーの代役で5日間で覚えて舞台に出たそうだ。これもすごすぎる。

 

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