2026年9月27日日曜日

イスラエル・ガルバン『ボレロ・デ・ブランコ・イ・ネグロ』、パストーラ・ガルバン『トリブース』

うーん、ガルバン兄妹、いったいどこへ行ってしまうんだろう。

いや、いいんですよ、個人の自由、表現の自由。でも、切ない。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León


前回のビエナルで『カルメン」、そして今回は『ボレロ』。すでに国際的名声を獲得した彼が国際的な興行の鉄板ネタをどう料理するかと注目を集めていただろうことは想像に難くない。『カルメン』は小ネタ満載で、その中にはフラメンコ魂をくすぐられるものもあったのだけど、今回はフラメンコ的なものを自分が表現することを徹底的に避けている?と思われるような内容。フラメンコ好きが嫌がることをわざとやっているんじゃ?と思わされるほどで、彼が思いついただろう二つのボレロネタで2時間引っ張ったという感じ。ネタの一つはラヴェルのボレロのリズムを靴音やパルマで再現する、もう一つはラヴェルのボレロのリズムをラテンバラードであるボレロに放り込む、ということ。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

幕開きに、エプロン(2020年『ガトマニア』の時からなんでも出てくるドラえもんのポケットのように使ってる?)から取り出した小さなマラカスで、続いて靴音で、ラヴェルのボレロのリズムを刻みはじめたのには、おっ、と思わされ、フアン・ホセ・アマドールが歌うラテン・バラード『プロクロ・オルビダルテ』にもそのリズムをぶっ込んできて、なるほど、と思ったのだけど、驚きはそこまで。『テ・エストラニョ』や『ベサメ・ムチョ』にもルンバにもタラントにも全部リズムをぶっ込む。ここまではホセ・カラスコのカホンとフアン・ホセの弾き語り。

舞台中央の幕が開いて2台のピアノが現れ、ラヴェル作品を演奏。


Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

この写真ではちょっと踊っているけど、いやいや、おおかたの時間は上手に座ってただ見てるだけ。

イスラエルと似たような格好をした少女が登場して司会したり歌ったり。これはなんのショー?って思ってたら女優がボレロについて語り叫ぶお下品なパフォーマンス。幕降りてえ?と思っていたら幕前でフアン・ホセがソレアを弾いて少女がフラメンコの歌詞を朗誦。歌わずに語る。で、最後にこれから『ボレロ』です。え?もう1時間半だよ、こっから17分?で2台のピアノの演奏によるボレロをイスラエルが踊った、踊ったというか、フラメンコ舞踊手のパーカッション奏者としての点にスポットを当ててるというか、ひたすら同じ動きを繰り返すのだけど、その姿も客席に照明が当たり彼にはうっすらとしか当たってないからよく見えない。私の席からはピアノで足が隠れる。舞台奥からだんだん前に出てきて、最後は客席の方にちょこっと突き出たヘソ舞台みたいなとこでフィニッシュ。最後またパルマでリズムを再び、そしてべサメムーチョと、ネタをしがんでル感じもなんかいや。で、隣の人の足踏んづけながら(ごめんなさい)さっさと帰ったのでした。

で22時半からのアラメーダ劇場のパストーラ。お金持ちのお兄ちゃんは2台のピアノ、妹はそこまでお金ないから2台のドラムス、ってことですかね。はい、この作品の芸術監督はお兄ちゃん。振り付けは妹だけどね。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

ドラムのリズムだけで踊る、ブレリア、ソレア、タンゴ、シギリージャ。パタ・ネグラの『ブルース・デ・ニーニョ』を、『ソロンゴ』を、アンダルシアロックのアラメーダの『ノチェ・デ・アラメーダ』を歌う、息切れしつつ。ボレロを踊り出した時は「お願い、やめて」となったのはいうまでもありません。

お兄ちゃんと色違いでお揃いの靴だけど、パストーラはコンパスでフラメンカに踊っていたから、オレ!な瞬間もあったんだけど、心から楽しみ幸せになったかというと、うーん。

いろんな試みがありますな。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

古典だけがいいとも、昔は良かったとは言わないけど、フラメンコを愛し、ささやかながらフラメンコを人生の芯とする、フラメンコに携わる者として、やっぱフラメンコな、フラメンコに敬愛を感じる作品が好きだな。パフォーマンス自体はフラメンコ曲やコンパスを直接使っていなくても、フラメンコのテクニックや、広い意味でのコンパス感を感じる作品、たとえばロシオ・モリーナの『カルナシオン』には脱帽だったし、大好き。イスラエルも、昔、散々に言われた『ガルバニカ』や『フィエスタ』だって、至る所に彼の超絶コンパスが感じられて、幸せだったんだけどね。イスラエルは新しいフェーズに入ったってことなのかも。遠いところに行っちゃったのかな、帰ってこないのかな、って悶々しているのであります。


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