2026年9月22日火曜日

ラファエル・リケーニ&ティム・リース『トゥニシア』、オルガ・ペリセ『ペルスペクティバ・ソブレ・ウン・バイレ・ソノロ』

 いやあもう完璧に幸せになる夜でした。20時からのロペ・デ・ベガ劇場でラファエル・リケーニとティム・リースの美しい音楽の夜。22時30分からはオルガ・ペリセの新作でフラメンコ舞踊を堪能し尽くす。最高でしかない。いやあ、今年のビエナル、感動作がもう4つ。終演後、思わずビエナル監督にお礼を言ったのでありました。

2015年のラ・ウニオンでのサラ・バラスの公演であれは誰?すごいんですけど、と私をびっくりさせたティム・リースはデトロイト出身、ニューヨーク在住のサックス奏者、ジャズ奏者でローリングストーンズのサポートメンバー。サラ・バラスの日本公演にも参加したけれど、サラとの共演から始まったフラメンコ熱は冷めず、様々なアーティストと共演を重ね、現在はリケーニとツアー中という次第。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

今回のレパートリーはラファエルのレパートリーの中でもクラシック寄りというか、フラメンコのコンパスよりも彼が作り出す美しいメロディが主役のアルバム『パルケ・デ・マリア・ルイサ』からの曲が多かったように思うけれど、ティムとのデュオで、そのメロディの素晴らしさが余計に際立つように感じた。セビージャ出身の、ファリャと同世代の作曲家トゥリーナのような、セビージャらしさに溢れた美しい音楽というのは、彼の才能がなせる技であり、魅力だと思う。そこにティムの音が加わると世界が、宇宙が広がっていく感じ。ティムは曲によってサックス、フルート、ピアノと使い分け、両方を演奏したり。「ストーンズの曲(曲名聞き取れず)、次はタンギージョ」と笑顔で語るラファエル。意外な組み合わせに聞こえるけど音楽はボーダーレス。



Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

ラファエルのソロでのブレリアに続き、客席からサックスを演奏しつつ現れたティム、ソロで聴くその音の美しさ!初めてベルリンフィルを生で聴いた時くらいの感動。素人耳にも完璧に明らかな音の美しさ、深さ。だからこそ、ラファエルとのデュオも美しいのだな、と。

セビージャが彼にとって特別な街であることなどを少し話し、初めて披露するという新曲をピアノで。アレグリアス? アレグリアスぽいけどどこか断言しにくいところもあるような? フラメンコたちのようにフラメンコの決まりに縛られていないのかもしれない。

再びラファエルと、で、『パセオ・デ・エンスエニョ』、セビージャ組曲に収録されたこの曲は何度も何度も聴いた曲ですが、この夜初めてトレモロが馬車の轍の音に聴こえてなんかすごく納得したり、いろいろ思い出したりもあって、美しいメロディに涙。

ティムが戦争反対を話し、そのテーマを演奏。そしてこの公演の他とるになったラファエルの2枚目のソロアルバムソロアルバム『ミ・ティエンポ』収録のタンゴに。最後はルンバ。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

そしてアンコールではなんとムーンリバー!

美しい音楽に全身が包まれ、幸せな夜。

でもその余韻に浸ってばかりもいられず、タクシーでセントラル劇場へ。コルドバ出身のオルガ・ペリセの新作と聞けば見逃すわけにはいきませぬ。

これがまたすごかった。

舞台奥にはフレコの幕が二重であるだけのシンプルな舞台。フレコの間を廊下のようにして行き来する姿を見せたりの工夫が面白い。

オルガとギターのホセ・マヌエル・レオン、歌い手ミゲル・ラビとメルセデス・コルテスの4人。彼ら4人だけなんだけど、舞台いっぱいに広がるフラメンコは無限大。

最初はファルーカ。これですでに度肝を抜かれた。ファルーカというとお決まりの振りがあって、だいたいそのパターンで、多少アレンジ、みたいなものが多いのだけど、オルガのファルーカは、そのお決まりを全部一度バラバラにして、再構築したような感じで、めっちゃファルーなのにファルーカぽくないという複雑怪奇、ミステリアスなもの。いやあ参りました。こんなことできるんですね。天才!最近、アーティストでも作品作りの話でインベスティガシオン調査研究という言葉を使う人が多いけど、中にはちょっと単語をググって数本動画見ました、くらいをそう言っているパターンも見受けられるように思うのだけど、オルガのこれは、これぞ本当の調査研究の結果と言えるようなものでした。すごすぎる。


Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

メルセデスのカンテソロでビダリータ、ミゲル・ラビとのソレア・ポル・ブレリアではじけ

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

円の中でのシギリージャ。カスタネットも使った伝統、古典を現代化したような、彼女らしいスタイル。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

ギターソロのグアヒーラが、これまた、オルガと同じく、古典を一度バラして再構築したような感じで、古くて新しい。彼とオルガはある同じ志を抱いた仲間なのだろう。二人の出会いは私たちにとっても幸せな出会いだったのだと心から思う。

最後はアレグリアス。小柄な彼女には大きすぎるマントンだけど扱いもさすが。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

これで終わりでも十分満足だったんだけど、私の前、一列目にずらっと並んでたアーティストたちが先導されて客席を後にしたのでピンと来た。こりゃすごいフィン・デ・フィエスタが始まるぞ、と。はい、正解。

彼女の師、マイカ・モジャノをはじめ、マノロ・マリン大先生、マヌエル・ベタンソス、ウルスラ・ロペス、マルコ・フローレス、パトリシア・ゲレーロ、エル・ペロン、マリナ・バリエンテが、エルミニア・ボルハやヘスス・コルバチョ、出演者であるラビらの歌、ホセ・マヌエル・レオンとパコ・イグレシアスの歌でものすごいフィン・デ・フィエスタを見せてくれたのでした。

歌とギターに支えられてこそのバイレ。バイレあってこその歌、そしてギター。お互いへのリスペクト、敬愛あってこそ幸せな時間が訪れるのであります。

ヘレスででもまた観ることができるとうれしいんだけどな。しかし本当にフラメンコって素晴らしい。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León






0 件のコメント:

コメントを投稿