2026年5月25日月曜日

ラファエラ・カラスコ『ウモ』

ウモとは煙のこと。タバコ工場で働く女工たちを描いたラファエラの新作は今年、マドリードで初演されたばかり。

オペラやバレエで世界に知られる『カルメン』はセビージャのタバコ工場の女工だったという。男を破滅させる奔放な女賭して描かれたカルメン。実際の女工たちは、男尊女卑の時代に、治安警察に見張られながらも、待遇改善を求めてストをしたり、職場に託児所を作ったり、という女性労働者の草分け、先駆者。想像上の人物であるカルメンと、実際に工場で働いていた女たち。ビゼーの音楽を換骨奪胎し、元の音楽がわかるけれど微妙に違うメロディになっていたり、後半で闘牛のイメージを踊ったりなど『カルメン』的なものもあるのだけれど、胸が熱くなるのは、女たち、ラファエラと6人のダンサーたち、カンタオーラ、ヘマ・カバジェーロとクラシック歌手たちが一緒に手を動かしながら歌う場面。これはスペイン、カスティージャ地方に伝わる、手や机を叩いてリズムを取りながら歌われるパネデーラス、女パン職人たち、と呼ばれるものをアレンジしたもの(だと思う)や、


©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza

最後の最後、ヘレスのクリスマスソング『ロマンセ・デ・レレン、レレン』のメロディで全員で歌うところ。シスターフッドというか、女性たちの連帯が伝わってくる場面だと思う。

ラファエラの高い美意識と、長年彼女の作品の照明を担当するグロリア・モンテシノの腕前で、とにかく全ての場面が美しく、雰囲気がある。床の模様、天井の高い建物というのがわかる大きな格子窓、

©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza

女工たちが愛用したというマントン、

©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza



葉巻…

©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza

といったタバコ工場ゆかりのイメージはそこかしこにあるし、音楽でもビゼーの曲だけでなく、タバコの産地キューバゆかりのグアヒーラが歌われるなども。フラメンコ、クラシック、民謡、機会音のようなものなど音楽も入り組んでいれば、踊りもコンテンポラリー的な要素もあれば、純フラメンコ的なものもあるという複雑な構造で、いろんな要素があるので全部をちゃんと理解していたかというと自信がない。『カルメン』のような明確な物語があるわけではないというのもあるだろう。ラファエラが椅子の上に立って、女工たちに関する当時の新聞記事をメガフォンで読み上げるシーンとか、カルメンのイメージでの闘牛のところとか、わかりやすい部分もあるのだけれど。彼女の他の作品に比べてもそれぞれの場面の意味など考え出すとわからなくなる。いや考えずに踊りを楽しめばいいだけなのかもしれないけれど。


©︎ Guillermo Mendo/Teatro de la Maestranza


6月10日からarte.tvで観ることができるようなので観て確認するつもり。

あとタバコ女工を語る上では避けて通れなかったのかもしれないけれど、カルメンは音楽もその要素も全て無視でも良かったようにも思ったりしたことでした。

とにかく美しい作品なのでWEB公開されたらまたお知らせしますね。



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