2022年9月11日日曜日

エバ・ジェルバブエナ『レ=フラクシオン*デスデ・ミス・オホス』

 一昨日、ビエナルの国際ヒラルディージョなる賞を国王臨席のもと受賞したエバ。



その彼女が開幕を飾る、マエストランサ劇場公演は新作。バスクの舞踊家フアン・クルスの演出で彼も出演した作品。フアンはコンテンポラリーの人で、2012年にはエステベス、パーニョスの『ロマンセス』の演出を手掛けてヒラルディージョの最優秀演出賞を獲得しているのだけど、今、そのブログを見ると、出演者のパフォーマンスは評価しつつも個人的にはあまり好きではない、と書いてあった。好みは変わってないんだな。ただ、ビエナル監督はこの作品を記憶に残る素晴らしい作品といい、彼がエバにフアンを紹介したらしい。エバはピナ・バウシュのファンで、コンテンポラリーぽい要素がその作品によく登場するし、相性は悪くないのだろう。

客席に入ると開演前にも関わらず不安が幕の前の椅子に座っている。人形のようにも見える。エバの『5ムヘーレス5』でもエバがソファに座って客席見てたな、とか思い出す。

幕が上がり登場したエバの舞踏風の踊り、そしてソレア。エバのソレアといえば、何度泣かされたか、という絶品中の絶品なんだけど、うーん、今日はいつものあのどーんと響いてくる感じがない。明るい照明のせい?ミュージシャンたちが下手に輪になって座っているから、歌との掛け合いがないから?わからん。背中が開いているのはなぜ?と思ったら、着ていたのは昔の、最初の衣装だそうで、体型が変わって閉じられないので紐で結んでいたのだそう。終演後ばったりあった衣装のガビさんに聞いた。なるほど。



フアンがマイクを持ってエバに質問していく、エバは答えない。黒い衣装を脱ぎ白い貫頭衣みたいなのをまとい、髪をばらし、ブラシでとかそうとするフアンを制し、客席に降りていく。で一人の観客を舞台にあげ、溶かしてもらう。あ、メルチェだ!現役を引退し、今はセビージャとマドリードを行ったり来たりというフラメンコの優雅の象徴、メルチェ・エスメラルダ、髪をとかしてあげて、また席に戻る。これはインプロ。

なんか実験演劇とか思い出す感じだなあ。舞台でフアンがビデオカメラを回しその映像が舞台に映し出されたり、フアンが照明を鏡で受けて、その光で踊るエバを照らしたり。

回れ、回れと言われ回転続けたり、きっと色々象徴して、意味があるんだろうけど、よくわかんない。こっちの勉強不足?

チェロかと思ったらビオラ・ダ・ガンバだそうだが、それのソロでのナナ。そして赤いバタのスカートでのタンゴ。テクニカ健在でフラメンカなタンゴなんだけど、これもやっぱりどっかこない、なぜだ。

黒いレースの衣装というか、ベールみたいなのを上からきて、ミュージシャンたちの行列での聖週間の行列みたいなシーンからシギリージャ。

最後は幕の前にエバが一人のこり幕。

うーん、何か違うことしたくて違うことをしたのはわかるけど、どういう観客に向けてのものなんだろう。フラメンコ好きな観客はとまどい、つまらなく思うのではないだろうか、杞憂に終わればいいんだけど。

レフラクシオンは屈折、という意味があるのだけど、うーん。確かに光を屈折させてはいたけどね。


最後アンコールで音響や照明のスタッフも舞台に上がったのはよかったな。

ま、これは初演だし、元々劇場公演ではなく、マエストランサの裏にあるアルティジェーロという昔の軍の施設で初演される予定で制作されたことも、シンプルな舞台装置とかに関係してるのかもね。

なお開幕ということもあって、劇場にはクリスティーナ・オヨス、フアン・アントニオ・ヒメネス夫妻をはじめ、ピニョーナ、アナ・モラーレス、パトリシア・ゲレーロ、マリア・モレーノ、エドゥアルド・ゲレーロらの踊り手たちやアルカンヘルなど、アルティスタたちも訪れていました。



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