2020年8月23日日曜日

ロス・ボルブレ『Flamenco is not a crime』


いやあ、面白かった。こういうのもあるんですね。

VJっていうのかな、ビデオでのディスクジョッキー的な?アーティスト、セビージャ近郊のエル・ビソ・デル・アルコール出身の兄弟によるデュオ、ロス・ボルブレ。
先週のラウル・カンティサーノの公演でもビデオを担当していました。
ニーニョ・デ・エルチェやロシオ・マルケスともコラボ/共演しています。
パケーラやアグヘータ、イスラエル・ガルバンやエンリケ・エル・コホ、ティア・アニカなど古今東西のフラメンコ・アーティストの映像と、政治家や聖週間、ニュースなどの社会的な映像、テレビのコマーシャル、ラップやヒップホップ?、大きな音でビートを刻む今風のクラブミュージック?(すみません、私にはジャンル名すらわからないです)などを切り貼り、コラージュし、そこに効果なども付け加え、大音量で怒涛のごとく進んでいくのであります。あ、パケーラなどと並んで最初の方に今枝友加さんがカナルスールに出た時に歌ったマルティネーテも入っていました。

そのホームページでactivista、活動家、を名乗っているように、社会風刺的な要素も多く、政治家(右派、左派問わず)や国王、教会への批判/風刺と取れるものもあり、こういうのに怒る人もいるだろうことは想像できるし、実際、教会風刺のところで席を立った年配者もいました。また、セビージャの保守系新聞ABCの副編集長でフラメンコ評論家でもあるアルベルト・ガルシア・レジェスの拙い英語でフラメンコについて語る場面や彼が聖週間のプレゴン(開会宣言的なスピーチ)などの扱い方は、本人が観たら怒るかも、と思われたりもするのだけれど、権威への風刺/批判だし、フラメンコ自体を批判しているわけではありません。フラメンコの中の権威主義的なものや盲目的な信仰のようなものについては風刺的な要素もちょっとあるかと思うけど、極度の純粋主義者以外は気にならないのでは?と思います。
いや、素材として扱われているものの方をちゃんと聴きたいと思う人はいるだろうけど、ほとんどはYouTube などを探せば見つかるだろうものだし、それはそれでおいといて、ここでは組み合わせの妙を楽しむのが一番。

トリアーナのおばあちゃんたちのタンゴでの腰の動きをレゲトン?に合わせたり、とか面白い。あのトリアーナのタンゴのユーモラスでエロチックな動きはもともとアフリカ人のダンスを真似したものと言われてるし、うーん、実はルーツは同じ?
そのほかにも映画『バルセロナ物語』やファルーコの踊りのちょっとした仕草や、チョコラーテやトルタの歌声や、ティア・アニカやボリーコの顔のアップなどが、“今”の音楽と組み合わさって、違和感ないのが面白い。あ、若い人が見たら違和感あるのかしらん?
フラメンコの絵力、底力、現代性、などいろいろ感じるのとともに、単純に、今の音楽を大音量で聴けたのも、若い人たちが踊りまくるクラブイベントに来たみたいな感覚を味わえたのも楽しかったです。
フラメンコ入りレイブ・パーティー。これまでにも、マドリードやニームやオランダのフラメンコ祭でもやってるそうだし、セビージャでも他ジャンルのフェスティバルなどでもやったらしい。欲を言えば、やっぱ、立ち席で踊りながら観たかったかも? ま、時世柄しょうがありませんが。


プロモーション・ビデオを貼っておきますね。



フラメンコを観るつもりで行ったらびっくりして怒る人もいるかもだけど、最初からどんなものだと分かっていれば、楽しめるはず。
って、これ、いろんなことに言えるかもですね。


フラメンコは罪じゃない。
だけでなく、
トリアーナはフラメンコじゃない。フェリアはフラメンコじゃない。ビエナルはフラメンコじゃない。などというメッセージが出てくるのも面白い。
イコールじゃないんだよ、っていう感じ?
トリアーナがフラメンコなんじゃなくて、トリアーナにフラメンコもあった、とか、フェリアはフラメンコじゃなくてセビジャーナスの宴、とか、読み方はいろいろ。それも含めて面白い。





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