2020年8月22日土曜日

アルトマティコ『エレクトロ・フラメンコ』conパウラ・コミトレ、フアン・ヒメネス

これはフラメンコだ、いや違う、などと言うことがあります。

人それぞれでフラメンコの定義は違ったりするので、正しくは「これは私の好きなフラメンコではない」であるということも多く、人のいうことはあまりまに受けない方がいいのではないかと思います。また「私の好きな」「私の思う」という言葉を前につけずに使うのは避けた方がいいのかとも。

アンダルシア生まれの歌と踊り、ギターなどで演じられるアートのことだというのは一般の共通認識だとは思うのですが、伝統的な曲種/コンパスがないとフラメンコではない、という考えも関係者の中には根強いようです。でも、フラメンコのアーティストがフラメンコのテクニックで表現すればフラメンコ以外の音楽でもフラメンコである、と言うこともできるのではないかと思うのです。


アルトマティコの『エレクトロ・フラメンコ』を観てそんなことを考えていました。

アルトマティコはMacを操ったエレクトリック・ミュージックのアーティスト。パーカッションのようにしたり、古い録音を加工したり、生音にサンプラーをかけていったり…そこに、イスラエル・ガルバンとも多く共演しているフアン・ヒメネスのサックスが絡みます。元々現代音楽のスペシャリストなフアン。彼らの音楽が空間を作り、そこに登場したパウラ・コミトレは、空間を切り裂き、また満たして行きます。

この写真で真ん中辺に座っているのがパウラです。

黒いトップ、スカートの上から白の丈が床までの長いベストというか上っ張りというか、前あきのワンピースというかを羽織って、裸足で爪先立ちして歩いたかと思うと、ホタのようなメロディで民族舞踊風に踊る。白いわっぱりを脱ぎ、裾に鈴?がついたバタ・デ ・コーラの巻きスカートで踊る。Macの音に座ってのサパテアードで掛け合い、サックスと正面切って掛け合う。チンチネスと呼ばれる金属製のカスタネットを使って踊る。髪をほどいて狂女のように振り乱し踊る。スーフィーとか思い出させる。モダンを極めてプリミティブに至る、的な?

パウラは94年セビージャ生まれ。新宿『ガルロチ』の最後のグループで来日していたのでご覧になった方もいるかと思います。2013年から3年間、アンダルシア舞踊団で活躍していました。その当時の監督、ラファエラ・カラスコや同じ舞踊団にいたアナ・モラーレス、またロシオ・モリーナやエバ・ジェルバブエナの影響ももちろん感じられるのですが、そんな中から彼女らしさ的なものが生まれつつあるような。雄弁なサパテアード。キレッキレすぎにならないどこか柔らかな動き。はすっぱではないおきゃんな感じというか、元気さと甘さがあって、いいなあ、と。まだ20代、これからの展開もますます楽しみです。

で、この公演。伝統的なフラメンコ曲で踊っているわけではありません。コンパスは外から来るのではなく彼女の中から出てくる、という感じ。

それで最初に戻ります。これはフラメンコなのか、フラメンコじゃないのか。

ま、正直、雰囲気のある、素晴らしい舞台だったし、楽しかったし、実はどっちでもいいのですが、「フラメンコのアーティストがフラメンコのテクニックで表現すればフラメンコ以外の音楽でもフラメンコである、と言うこともできるのではないかと思うのです」というように考えたのでありました。


それにしてもフラメンコの可能性って無限大!

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