2025年5月9日金曜日

工藤朋子『黒いダイヤ』

 ぐっと凝縮された1時間。



衣装を変え、曲を変え、自分の世界を作り上げたその腕前はあっぱれ。

巫女系というのか転移系というのか、何かが乗り移ったかのようにここではないどこかを見つめ、地を這うようにして何かをずっと探している。

前作『時と血と地と』は、フラメンコ・フラメンコなものを封印こそしてないものの、自分とフラメンコのルーツを探っていく旅のような作品で、民謡や古楽などが散りばめられ、フラメンコ味は少なめだったけど、すごく面白かったことを記憶している。今回は、そのリベンジ、というわけでもないだろうけど、フラメンコの黒い魂を自分の中に探していくような作品で音楽はフラメンコのみ。ミゲル・デ・バダホスが歌うロマンセ・デ・ラ・モンハに始まり、マヌエル・マレーナが聴かせてくれるソレア・ポル・ブレリア、カマロンのカナステーラやカラコールのサンブラなどもはさみつつ、タンゴそして豪華なマントンでのカーニャ。それぞれの曲のキャラクターを理解して踊りわけていたと思うけれど、全体的に下向き、屈んでというのが多いのはちょっと気になった。地を這うようにして探している、っていうことなのかも知れないけれど、しなやかで美しい身体を生かして、胸を開き、外へと向かう瞬間もあって良かったのはないかと思えるのだ。下を探すのに夢中でまだ解放されていない、ということなのだろうか。観客としては、最後、突き抜けるような空へ登る勢いで放たれる思いを見てみたかった気がする。放たれるのは次回なのかな?




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