2021年7月12日月曜日

ハビエル・バロン『エントレ・ムヘーレス』

ハビエル・バロンの踊りが大好き。

フラメンコが好きだ、踊るのが好きだ、という思いがストレートに伝わってくる踊り。

クリアな靴音で刻むリズムの心地良さ。回転にしても間合いの良さ。ちょっとした細部のかっこよさ。本当にすごいフラメンコを、コンスタントに見せてくれる。

だけど、作品となるとロルカの幸せな少年時代を扱った『ディメ』以外、どうもパッとしない。あれは良かった。マノロ・ソレール、ディエゴ・カラスコ、フアン・ホセ・アマドール、ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボ、ハビエル・パティーノ。終演後見ていたみんなの口角が上がっている、みんなが幸せになっている、そんな作品でありました。

でも他の作品は、彼の踊りは良くても、作品としては印象が薄い。なんかいつもちょっと残念な感じ。

イタリカ舞踊祭。今年はイタリカのローマ劇場とともにアルカラ・デ・グアダイラの城跡の特設舞台でも公演が行われ、行ってきました。40度超える猛暑の中。夜になっても38度とか、そんな感じで暑い、暑い。

会場はバルもオープンしてて、ちょっと人多かったけど、40代以上のワクチン接種済みであろう人が多いのでちょっと安心。


で、今回の新作も残念ながら、な、感じなのかなあ。

演出家を入れ、映像やキーボードやコンテンポラリー?なダンサーなども入れているのだけど、それらが効果をあげているかというと微妙で、結局、最後のソレアが素晴らしいから、なんとなく満足した気になっちゃうんだけど。

正直言っていやいや、これじゃない感。

いいとこいっぱいありますよ。

春の女神のような、ベルディアーレス楽団の帽子をも思い出させる、花冠の女たちが子供の歌をブレリアのリズムで歌い継ぎ、それを踊るシーンとか。


©︎Lolo Vasco Festival Internacional de Danza Italica

  
ハビエルが踊るカンティーニャとか。

でもタラントは、コンテの人とデュオなんだけど、昔の、94年のエル・フラメンコで踊っていたあのすごいタラントを忘れられない私的にはやっぱり一人で踊ってほしいし、コンテの彼女は背中がとても綺麗で見惚れたけど、踊り自体はうーん、発表会的な感じ。留学して勉強もしてる人らしいんだけどね。

なんで、全体としてはちょっとまあもったいない。

ソレアがいかに絶品とても。

©︎Lolo Vasco Festival Internacional de Danza Italica



ハビの踊りをもっと生かすような作品が欲しいなあ。

©︎Lolo Vasco Festival Internacional de Danza Italica

髪ちょっと切った方がいいかな。風のせいもあるかな。ライオンみたい。


なお、伴奏のサルバドール・グティエレス、ハビエル・パティーノの二人のバランスも良く、歌はメルチョーラ・オルテガがさすがに舞台経験の違いで一日の長あり、だけど、ナタリア・セグーラはいかにもへーレン財団出身的だけど上手だし、良かったなあ。そう、フラメンコの部分は悪くないのですよ。アンダルシア・ロック的?なエレキとキーボードの音楽やコンテなしで良かったんじゃないのかなあ。

©︎Lolo Vasco Festival Internacional de Danza Italica


演出家の、今年二月に亡くなった、女優だったお母さんに捧げられているのだけど、作品自体は女性へのオマージュだそう。子供の歌は母への想いだろうし、アルバムをみて懐かしむような演技もありました。でコンテは恋の相手なんだろうな。
結局、女性って母か恋愛の対象でしかないのかな。ま、それがわかりやすいからだろうけど。



©︎Lolo Vasco Festival Internacional de Danza Italica


90年代からの、踊り手は作品を作ってなんぼ、的な時代が彼には向いていない。

こんな時代じゃなかったら、もっと評価されてたんだろうなあ、と思いつつ、まあ、文化省のプレミオ・ナショナルも貰ってるしね。

生まれ育ったアルカラでこんな風に踊ることができてるし、いいのかな。



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