2020年7月4日土曜日

第1回フラメンコwebフェスティバルの私的感想



 44名がエントリーし、2083人が投票。第1回フラメンコWebフェスティバルは盛況のうちに幕を閉じました。入賞者の皆さん、おめでとうございます。惜しくも賞には入らなかった人たちも、必ず、ビデオを観た人たちの心に何かを残していったことと思います。
 フラメンコWebフェスティバルは、それぞれが投稿したフラメンコのソロパフォーマンスを、ウエブで観た一般の人たちが、気に入ったものに投票するというもの。専門家などによる審査員の審査によって賞が決まるコンクールとは全く違う、新しい形のフェスティバルです。各賞受賞などはこちらの記事をご参照いただくとして、ここでは、志風の個人的な感想を述べていこうと思います。(長いです)

 全部のビデオを拝見させていただいての正直な感想はまず、
すごい!
 の一言。

 フラメンコを愛している人が日本中、世界中にいて、それぞれのやり方でフラメンコを表現しているって素敵だなあ、たくさんの人たちがフラメンコを学び、楽しんているなんて素晴らしいなあ、ということ。フラメンコ の魅力や大きさを改めて感じさせてくれました。ありがとう! ご年配の方もいれば、フラメンコ の未来を担う少女たちもいるし、趣味で楽しんでいる人も、日本のフラメンコを支えているプロのアルティスタたちもいる。スペイン留学中の人たちやまた台湾やシンガポールの人たちと、多種多彩な人たちのパフォーマンスを順番に見ていくのはとても楽しかったです。
では、すべての参加ビデオを、ご紹介していこうと思います。なお、感想はあくまでも志風個人のものです。勝手にごめんなさい。なお、参加者の名前曲名等はYouTubeにならい、敬称は略します。
ビデオはこちらで観ることができます。

No.1 徳村真未/酒じゃ祭りじゃ/チョコラーテ
部屋にマントンやシージョなどを飾りお祭りの雰囲気で、衣装も着てるけど、帽子にウィッグにサングラスと、仮装風。ノリノリのルンバで楽しそう。今度はみんなで踊りたいよね。

No.2 Kinta Suzuki/ブレリアデヘレスを逆さまにして弾いてみた。/ブレリア デ ヘレス
逆さま、というと、ギターを裏返しにしての演奏かと思ったら(そういうのは見たことある)何とギターを後頭部に乗っけての演奏。意表をつかれましたが、普通にちゃんとブレリアで二度びっくり。今回は定点カメラという決まりだったからしょうがないけど、指もみてみたい。

No.3 Daphne Huang Vargas/Sentimientos/Soleá por Bulerías
シンガポールからの参加。真面目にフラメンコと取り組んでいるのがわかる踊りです。正面向く時もちょっと斜めにして奥行きを出して立体感があるところなどいいと思います。

No.4  永田健/Let it Be/Let it Be
普段着で普通の靴で公園で音楽もフラメンコの曲じゃないのに、フラメンコの技術で踊ればフラメンコになっちゃう。この条件でこんだけ踊れる人、舞台でのパフォーマンスも観てみたいという気になります。

No.5 久保田晴菜/La leyenda del tiempo~セビージャの風の中で舞う~/La leyenda del tiempo
留学中のセビージャの屋上で赤い衣装にマントンで伸び伸びと踊っています。サパテアードは近所迷惑でもマントンも屋上なら引っ掛けることなく練習できますね。技術がしっかりしてるのでもうひとまわり大きめの刺繍も多いマントンでもやれるのでは?

No.6 天辰直彦/Solo Flauta ~隠れ家にて~/Soleá por bulerías
フラメンコでフルートといえばホルヘ・パルドにフアン・パリージャなど名手がいますが、確かに日本ではバイオリンに比べあまり見かけないかも? 後半がいいですね。踊りやギターとのセッションも聴いてみたい気がします。

No.7 山崎耕平/Zambra del Moro Tharsis/Zambra del Moro Tharsis
テラス(ルーフバルコニー?)で演奏するギターソロでのサンブラ。好きな曲を、曲のもつ雰囲気を大事にして一音一音大切に弾いているという感じで好感度高いです。ニーニョ・ミゲル亡くなっちゃったけど、すごい人でした。一度弾き続き過ぎて係員に舞台から退場させられたこともあったなあ。

No.8 荒濱早絵/Se nos rompió el amor desde 茅ヶ崎/María Carrasco Se nos rompió el amor
かつてフェルナンダがブレリアに乗せて歌ったスペイン歌謡の名曲を黒い衣装に裸足で屋上のようなところで踊ります。後ろに見えるのは江ノ島? すごく思い入れがあるのでしょう、気持ちが入っている感じがします。

No.9 今井龍一/Sevillanas en instrumentos árabes/Una Halcon y una Paloma ~La Flor del Romero
ウードで演奏するセビジャーナス。力強い演奏で始まり、パレハ・オブレゴンの美しい叙情的なセビジャーナスもアラブの色に染められていきます。アラブ音楽、文化の影響も受けているフラメンコだから先祖返り的な意味合いも?アラブ音楽との共演でよくあるタンゴ系もぜひ聴いてみたいです。

No.10 Andy Ido/Sevilla より愛を込めて/Bulerías
ソファに座ってのブレリアス。パコ・デ・ルシアのフレーズ弾いたりがんばってます。セビージャ留学中とのことで、外出規制も厳しかったし大変だったのでは?

No.11 村瀬永子/Un nuevo día brillante_/Bulería
黒い衣装の上に、ベージュの、マントのような、着物のような上衣を羽織り、それをひるがえして踊るのが面白い。最後はマントンのように回したりも。衣装の効果をよく考えて作られていると思います。

No.12   吉村優子/放置竹林フラメンコ/ソレア~孤独
タイトル通り、竹林の中に板をひき、白い衣装に黒いベール風?マスクをして、手にササを持って踊ります。笹を持ったことで思いがけないダイナミックさも出ています。

No.13 大山勇実/A FALI(Soleá por Bulerías) Composer YAGO SANTOS/A FALI
なんと!雪の中でのギター演奏。重みのある、しっかりした、フラメンコな演奏なのですが、やはり寒いのか、演奏しているご本人も多分納得できなかったのかな、的な最後の笑顔が印象的です。

No.14 相坂直美/2020年初めてのスペイン留学で外出できる喜びAlegrías inセビージャ!/アレグリアス
トリアーナ橋のたもとで踊るアレグリアス。サマードレス風なワンピースの下にジャージ。久しぶりに踊ったのかな? 今はいろいろ大変だけど一生懸命勉強続けてくださいね。

No.15 植田由加里/Lo que tengo que hacer ahora./Smooh Criminal
黒いパンタロンに白いブラウス、そこに黒いベストというか、袖のないジャケットのようなものを羽織って、インストゥルメンタルを踊る。手足長くてスタイルがよくモダンな振り付けに似合っています。

No.16 大野環/Algún día~いつか、その先へ~/ソレア
マルカールの時の手の形とか、ラインとかすごくきれい。縦位置のカメラの画面から出ないように踊るの大変だったのでは?

No.17 上野真登香/初めての「ソロ」/セビジャーナス
畳の上に小さな板をひき、裸足で踊るセビジャーナス。基本に忠実に丁寧に踊っている感じに好感が持てます。腕が長くてマリア・パヘスみたいな感じとかできそう。一生懸命やっていけばどんどん世界広がると思いますよ。

No.18 定直慎一郎/M1-SOL34~シニチーロ・ジョージキ/カンテス・デル・ピジャージョ
おなじみタンゴ・デ・マラガもエレキのアレンジでロックな感じで弾き語り。雨の効果音入れたり、多重録音かな、とも思うのだけど、どうなんでしょう。スペインではエレキのフラメンコもそんなに珍しくはないのだけど、日本でもフラメンコで遊ぶような感覚出てきたんだなあ、と。

No.19 内田好美/未来を紡ぐ/TSUMUGU
黒い衣装に丈の長いジャケットを着て。不安を煽るようなバイオリンの音で始まる。しっかり技術はある人がしっかり作っているという感じなのですが、画質が非常に悪くて残念でした。

No.20 川口美都菜/コーヒーでひと休み/Moliendo Cafe
黒のパンタロンの上から水玉のコンビネーションのエプロンをして踊るコーヒールンバ。笑顔が魅力的なのだけど、どこか体操風に見えちゃうのは何故だろう。手足をいっぱいいっぱいに伸ばしちゃうからかな?でもこれ、エクササイズで人気出そうなんですけど。

No.21 EL CAYO池本佳代/”Love is…?”/Love is… 松浦昭久
3分という短い時間でドラマを感じさせる作品を作る力、演技力や体のコントロールがすごい。フラメンコのテクニックはほぼ使わず、ほぼコンテンポラリーでは? おなじ振りをフラメンコの曲でするとまた違ってくるだろうな、と思わされました。

No,22 川崎晃子/Piñata de Cantiñas/Cantiñas
袖が何重ものフリルになった昔のフェリアの衣装風の紺の衣装。これ袖取っちゃった方がいいかな。あ、思い出の衣装なのか。それじゃ加工できないか。でも袖取った方が腕の動きがもっときれいに見えるはず。カンティーニャからカディスのブレリア。表情がいい。またメリハリがあるのもいいですね。

No.23 坂本弘輝/Cajón Solo Bulería/Bulería
ペルー生まれでパコ・デ・ルシアが世界に広めた楽器カホン。30数年前はドイツの会社しか作ってなくて友人は大工さんに作ってもらってました。今や隔世の感。カホンのソロは舞踊公演などでも時々聞きますが、日本ではあまりないかも。

No.24. 中村一郎/酒場にて/La Petenera/quisiera yo renegar
タイトル通り、バーのカウンターで、帽子をかぶった紳士が歌うぺテネラ。その昔、ゴールデン街のバル、ナナではみんなでぺテネラを合唱してたのよ、というナナさんの話を思い出しました。年輪ゆえの味わいたっぷりです。

No.25 鈴木旗江/コロナ、そしてcorona/シギリージャ
黒のタンクトップにレースのパンタロン、腰にはシージョを巻いてのシギリージャ。フレームアウト、画面の外に出て足だけ入ってくるなどの工夫が面白い。メキシコのビール、コロナの瓶でコンパス刻んだり。瓶でコンパスは亡くなった歌い手ネグロ・デル・プエルトがやってましたね。

No.26 森川拓哉/ピアノでフラメンコ/上を向いて歩こうピアノブレリアver.
ただものじゃない演奏なんですが、確かこの方、バイオリン弾いていらっしゃいませんでした? すごいなあ、マルチな才能。上を向いて歩こうの歌ってどうしてもタンゴ/ルンバに聴こえちゃうのは何故だろう。ピアノ・フラメンコはフルートやバイオリンより古い伝統があり、日本でも最近やっている人増えてきましたよね。

No.27 タマラ/リリース ~ピアノフラメンコに乗せて~/Sin muros ni candados
ピアノ演奏が続く偶然。黒い衣装で、ざんばら髪で鏡を効果的に使っています。音楽の音量が小さいのがちょっと残念。フラメンコ を表現するのではなくフラメンコ を使って表現するというのはある意味第2形態。

No.28. 尾崎さくら/野花との共演/アレグリアス
歴2年ということだけど、それでここまで踊るってすごい。若いってすごいなあ。いっぱいいいもの見て、ここはこんな風に踊りたい、っていうイメージが出てきたらもっともっと良くなると思う。経験積んでがんばって。

No.29 磨伊由佳/富山からの挑戦!!/Alegrías
楽しそうに踊るアレグリアス。とにかくフラメンコが好きという気持ちが伝わってくるよう。細かいところにもっと気を付けていくともっとどんどん良くなると思います。

No.30 山口麻里子/富山から今を愛しむ!!/グゥァヒーラ
頭にターバン、その上に花。アバニコ使ってのグアヒーラ。グアヒーラはキューバゆかりの曲で、南国のけだるい感じやコロニアルなイメージの曲。そういった曲の性格を表現していくのがフラメンコの面白さだと思います。

No.31 島袋紀子/お散歩グワヒーラ/グワヒーラ
グアヒーラが続きます。赤い壁のスタジオ?緑地に黒の水玉のスカーフを頭に巻いて、黒?紺?に白い模様のつなぎ風の普段着で緑のアバニコ。アバニコの使い方にいろいろ工夫があって面白いです。

No.32 林由美子/flamenco/guajira
黒い上下に裸足。え、グアヒーラ?っていう感じのイントロで始まり、メロディーを歌振りのようになぞっていくような踊り。キューバを遠く離れた独自の世界。これはこれでアリかも。

No.33 菊原まり/私に出来ること踊ること/アレグリアス
赤い衣装で踊るアレグリアス。録音で踊る時は生歌、生ギターとは違った難しさがあるのかもしれない。表情がいいですね。

No.34 東郷恵子/カラオケでタンゴを歌ってみました。/Detrás del tuyo se va
歌のパフォーマンスなのに音がよくないのがすごく残念。はっきり発音しようという意思は感じるのだけれど。歌い込んでいくともっとよくなるに違いない。

No.35 池川寿一/ウクレレで奏でるフラメンコ/Pasa la vida(Sevillanas)
アロハシャツを着て公園でウクレレで奏でるセビジャーナス。ロメロ・サン・フアンの名曲、パサ・ラ・ビダもハワイ風に聴こえてくるのが面白い。9のウードだとアラブ風に聴こえちゃうのと同様、楽器のもつ劣って重要なのかも。三味線やお琴のフラメンコってどんな感じかな。

No.36 土井わかな/コントラティエンポ リアリティショウ/Tarantos con guitarra 117 por minuto(Solo compas CD)
黒いマスクをつけてCDかけての練習風景。最初全身を映していたのに途中でカメラが倒れたのか上半身と天井を映すようになったのはドキュメンタリーですね。地道な練習が華やかな踊りに結実していくんだなあ。

No.37 後藤晃/自作のTango/Tango de Azul
ギタリストさんたちの映像は音も総じていいですね。やっぱりこだわってるのかな。短くおさめています。昔、ビエナルの若者コンクールで優勝したニーニョ・ホセーレのソロが並外れて短かったのを思い出します。

No.38 本田恵美/フラメンコ都市伝説「キルケー」~Leyenda urabana flameca Circe/「 SPAIN」Michel Camilo &Tomatito
黒いバタ・デ・コーラにバストンでおっと思わせる。芝居仕立ての異色作。ふざけてるようで、バタさばきも、バストンもちゃんとしてる。フラメンコの基本からどう羽ばたくか、が個性の見せ所。面白いなあ。このネタ、短編映画になりそうですね。

No.39 Luz Wu/Fandangos en Sevilla/Fandangos
たぶんへーレン財団学校の生徒じゃないかな、という感じ。勉強途中。声が前に出ているだけですごいと思うけど、コンパスや発音がもっとよくなればすごいと思う。フラメンコって難しいね。

No.40  Hung Yu Wu/ Mr.Wu playing guitar老呉第一次Flamenco吉他比賽
丁寧に演奏するグラナイーナ。時折たどたどしくきこえるところもあるけれど、音がいいし上手です。リズムものも聴いてみたいですね。

No.41 幸田愛子/プロのフラメンコダンサーになりたい!/Sevillanas(Emilio Florido) Bulería de Cádiz
彼女のお手本はベレン・ロペスなのかな? 顎を引いて上目遣いでカメラを睨んで踊るセビジャーナス。好きなスターのようになりたい、という気持ちはわかるけど、もしも本気でプロを目指すなら首の位置を含めた姿勢の基本を学んで、いろんな人の踊りをもっとみて欲しいかも。いいものは持っているのだから、きっとなれるよ。ってマジレスしちゃった。今度は笑顔でのがみたいな。

No.42 山田あかり/「高知から愛を込めて」/トナ・イ・ブレリア・デ・ヘレス
アフィシオンを感じる熱唱です。すごく難しいのところよく頑張っていると思う。言葉の最後まで大切にするともっといいかも。踊りでもそうですよね。

No.43 Wei Qi Sarah Chan/Fandango desde Triana/Fandangos
きれいな声で歌うファンダンゴ。歌詞をなぞっている感じというか。芝居っけを出すと言うか、自分の物として歌えるようになるともっといいかも。ギター伴奏は生?

No.44 伊達花菜/初めてのソロ/rápida con conte
衣装を着てガレージ?で踊るセビジャーナス。ミスしたときに笑った顔がとても可愛い。その笑顔で、一つ一つの振りを丁寧に踊れたらもっとずっと素敵になるね。がんばろう。



というわけで、総括。
踊りが圧倒的に多いというのは予想通りだったけど、歌も、ギターも、そしてその他楽器も、といろんな風にフラメンコを楽しんでいるというのがとてもうれしかったです。そうそう、フラメンコっていろんな風に楽しめるよね、って。みんな本当にすごい。これ、30年前にやってたとしたら、踊り9割、ギター1割くらいだったと思うんですよね。で、3分のビデオ、カメラは固定という制限の中でも、衣装を着てのパフォーマンスもあれば練習風景的なもののあり、凝った創作作品もある。バラエティにとんでいて、やっている人たちもだろうけど、観てるこちらも楽しかったです。

 技術も表現も、レベルは確実に上がってきているなあ、と実感しました。でも、例えば踊りだったら、まずはコロカシオン、姿勢が大切で、胸を開いて肩を引いて顎を上げて、ってするだけでももっときれいに見えるのに、っていう人もいたし、上級者は身体全体のコントロールやコーディネーションなどをもっと気にすることでもっと素敵になると思うんですよ。反対に初級者でも出来ることを丁寧にやっていくことで美しく魅せることができるなあ、と。あと表情も大切。その気になって、女優さながらのパフォーマンスもいいと思います。
 なんて観るだけの人は勝手なことを言ってしまうけど、やってる人も観てる人もみんなが楽しいフラメンコ。やっぱ、楽しんだが勝ちです。やってる人の充実感、爽快さ、まで、観てる方に伝わってきますよ。

 2030年には何が見えるかな。






 
 

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