2025年11月17日月曜日

アンダルシア青少年フラメンコ最終ガラ

左から賛助出演、ピアノのハビエル・セシリア、舞踊のクラウディア・ラ・デブラ、カンテのセリア・オルテガ、ギターのハビエル・アルコス、賛助出演のサルバドール・グティエレス

フラメンコの日、11月16日はセントラル劇場で、アンダルシア州が14歳から25歳までを対象にして、アンダルシア各県のペーニャと協力して4月から行っていたコンクールの優勝者ガラ公演が行われました。
最初はアルメリア出身、16歳のカンタオーラ、セリア・オルテガ。タランタとファンダンゴ。声が前にしっかり出ているし、音程もいい。16歳で?すごいなあ。
続くギタリストも16歳、マラガ県ミネルバのハビエル・アルコス、パコ・ハビエル・ヒメノ門下というけど、パコ・デ・ルシアをバリバリ弾くのがすごい。ミネーラとブレリア。パコ弾けるってだけでもちろんすごいんだけど、いくら上手でも間合いの感覚、音の重さなどパコのようには弾けないわけで、なら自分で考えて、パコの曲をその通りにきちんと綺麗に弾くというクラシックギター方式というかハビエル・コンデ方式にするか、フレーズを入れるにしても自分の曲を作っていくかどっちか選ぶべき、今のパッチワークのような演奏、しかもブレリアのコンパスは凸凹もあるっていうのじゃ難しい。ギターは大変。やっぱ歌伴奏、舞踊伴奏でキャリア積むべきかも。
その他楽器部門はピアノのハビエル・セシリア、セビージャ県の古都、オスーナ出身。クラシックな感じだけど、ちょっとしたデテールが悪くない。
最後のクラウディアは幼い時から活動していて現在、アンダルシア舞踊団にいる実力派。上手。でもここから一歩出るためには“なにか”が必要になるんだと思う。カンテを踊る意識を強めるとかかなあ。間合いとかでオレを引き出すような踊り見せてほしい。

最後は全員で少しやったのも良かった。

なお、準優勝というか、補欠1位に踊りは歌い手ロセンドの娘のローラ、ギターはボリータの息子のホセ・ケベドが入っていたというのを、ネットで見ました。この二人もいつか見てみたいな。あ、ホセはヘーレンのコンクールで伴奏してるの見たけど上手だったよ。




フラメンコ・エクスプエスト/アンドレス・マリン セビージャ アンダルシア現代美術センタセンター

11月16日は. 2010年11月16日、フラメンコがユネスコの世界無形文化遺産に制定されたのを記念して、フラメンコの日、ということになっております。
で、アンダルシア州は、各県の博物館でフラメンコのパフォーマンスを行ったというわけ。


セビージャでは、アンダルシア現代美術館野、昔教会だったスペースで、現在も美術作品が展示されているスペースを舞台に、アンドレス・マリンがサックスとコントラバスとの共演でのパフォーマンス。
©︎ Kyoko Shikaze 

サックスによるトッカータとフーガに始まり、ひょっとこの面にもどこかにた,へんてこなお面をつけ、黒い羽織を着て、頭には折り紙という不思議な姿で登場。サパテアードは確かにフラメンコ舞踊の技術だけど、オーソドックスなフラメンコから遠く旅しているような、現代美術館にふさわしい作品なのかも。

©︎ Kyoko Shikaze 


折り紙と羽織という日本的な要素は、最初に日本を訪れたフラメンコ舞踊家であるアルヘンティーナ、とそれをみて舞踊の道に進んだ大野一雄へのオマージュらしい。
現代美術家がブレーンでついているからってのもあるのかも。ひょっとこ風お面はペトリューシカに見えるようにも思うからニジンスキーも意識してる?考えすぎかな?


©︎ Kyoko Shikaze 
音楽は他にもファリャの恋は魔術師の火祭りの踊りになったり、ソロンゴになったり、それ亜風のメロディをほんの一節だけ奏でたり。

それでもとにかく、緊張感を持続させた、濃密な時間でありました。

いつも思うけど、アンドレスとイスラエルの振りに共通する、オーソドックスなフラメンコではない動きがいっぱいあるなあ、と。後ろに足蹴り上げるのとか。フラメンコンテンポラリーゆえ?

靴にマイク仕込み、大理石の床でサパテアード聞かせたのも珍しい試みですよね。

21世紀のフラメンコらしいといえばそうなのかも。

Junta de Andalucía

ちなみにこの日、アンダルシア8県のミュージアムで同様の公演が同じく正午から行われました。各地の出演者は以下の通り。
ウエルバ 県立ミュージアム ヘロ・ドミンゲス
セビージャ アンダルシア現代美術センター アンドレス・マリン
カディス カディス現代文化スペース アナ・モラーレス
コルドバ C3A  ラ・ベニデラ(アルベルト・エルナンデス、イレネ・テナ)
マラガ マラガ・ミュージアム ダビ・コリア
グラナダ 考古学博物館 レオノール・レアル
ハエン 県立ミュージアム バネサ・アイバル
アルメリア アンダルシア写真センター サラ・ヒメネス

パッとみてわかる通り、コンテンポラリーなフラメンコ舞踊の踊り手たちばかり。今年は枠を超えていく21世紀のフラメンコがテーマだったのかな、という感じ。

 

2025年11月16日日曜日

リン・コルテス アンダルシア・フラメンコ


 

セントラル劇場でのアンダルシア州のフラメンコ公演シリーズ、アンダルシア・フラメンコ。15日は今回のプログラムで一人だけ経路が違う、といってもいいリン・コルテス登場。

歌うけど歌い手ではなく歌手。ギターも弾くけどギタリストではなく弾き語り。リズム的にはブレリアやルンバもあるけど歌うのは基本カンシオン。いわゆるフラメンコ・ポップのアーティスト。コルドバ出身で、昔、ビセンテ・アミーゴやケコらとつるんでたイメージ。その後、ライムンド・アマドールのグループでコーラスとかしてた人。

基本はカンシオンで、その中にパコ・デ・ルシアの『二筋の川』に歌詞つけて歌ったり、ぺぺ・デ・ルシアの『アル・アルバ』歌ったり、ロルカの『血の婚礼』のセリフを歌ったりとかはあって、ぺぺの曲のちょっと前にブレリア、一節だけ歌ったのがフラメンコでした。

フラメン・ポップ、フラメンコ・シンガーソングライター界隈は最近どうなのかな、と思ってきてみたけど、うーん、80年代からそんなに変わっていないと言う感じ。ま、これは人によるのだろうけど。でも確実にこう言うタイプの音楽のファンというのは存在し、こういうのをフラメンコと思っている人もいるのだな、と。いや、フラメンコといえばフラメンコですよ、広い意味では、でも狭い意味では違うよな、と思いつつ。

パーカッションがビセンテとも共演してたセサル・モレノじゃないかと思うんだけど最後まで紹介しなかったので…

日曜夜は新人の公園に行ってきます。

2025年11月15日土曜日

アウロラ・バルガス/アンダルシア・フラメンコ

 セントラル劇場でアウロラ・バルガスのリサイタル。


ゲストもなしで彼女だけの公演ってのは初めて見るような。

アレグリアス、ソレア、タンゴ、シギリージャ、ブレリア。それだけ。

元々レパートリーが広い人ではないけれど、タンゴの前にティエント持ってくるかな、とか, ファンダンゴも歌うかな、とも思ったけど、そんなことはなく、シギリージャはあまり歌わない曲かもだけど、基本、得意曲だけで。

ギターはペルラ。バリバリ弾いてしっかりサポート。パルマはマヌエル・サラド、ハビ・ペーニャ、マヌエル・バレンシア。寝心地のいいベッドのようにコンパスを整える。

熱情そのままに叫ぶように歌い踊るアウロラ。立って、マイクなしで舞台の前に行き、照明からも外れ、観客の顔をみて歌いかけるアウロラ。その昔、踊り手としても活躍していただけに、ちょこっと踊るのもかっこいい。

彼女の一人舞台を観て聴いて思ったのは、アウロラは絶滅危惧種の天然フラメンカ、だということ。昭和のフラメンカ、というか。彼女を他の歌い手と同じように聴くことは不可能で、むしろ、マヌエラ・カラスコと同じ種類というか。フラメンカとして生まれ育ちフラメンコと生きてきた人だから動きもことばも佇まいも全てがフラメンコ。こっちはその熱を受け取り、うわあ、ってなるだけでいい、という感じというか。音程がとか表現がとか細かいことを言うのに意味がないと思わせるほどの圧倒的な本物フラメンコ感。ヒターナだろうがハポネサだろうが関係なく、こればっかりは持って生まれたものなのだなあ、と思うなど。

なんか元気もらいました、ありがとう


2025年11月14日金曜日

マリア・モレーノ『マグニフィカ』/アンダルシア・フラメンコ


 マリア・モレーノの『マグニフィカ』

今年マドリードのビエナルで初演された作品。ギター伴奏でのバタ・デ・コーラのアレグリアス、5分にわたるマントン技からの、カンテのラビ登場、アレグリアスを締めてマルティネーテというようにテンポよく続いていく。マントンもスポーツ競技のように使う人も多いけどしっかりアルテで。ソレアだったかな、上体の動きとか、やっぱエバっぽいなと思うところもあるけれど、ロベルト・ハエンとのコンパスの掛け合いが秀逸。パルマも靴音も超速。いやコンパスの楽しさってフラメンコの根源みたいなとこあるな、と。ユーモアもあるし。この辺は起承転結の、起と承かな。ラウル・カンティサノのエレキギターやら、ふくよかな女優さんがフラメンコの掛け声を色々繋げてラップのように歌ったりとか、が転。女優さん、カディスの人でダンス作品とかもしてるらしい。最初すごく面白かったんだけど長く続くと飽きるというかくどく思えてしまう。塩梅、難しいですね。

カスタネットで始まるシギリージャ(ラビがギター弾きながら歌うのすごい)から光に向かってさっていて結って感じ。

個人的には、女優さんやエレキの部分はもっと短くていい(その方が効果的じゃ?)かなと思うけど、前作よりは好き。作品としてはちゃんとしてると思うし。エネルギーは伝わる。

ストレートなフラメンコがいいんだから、あえて奇をてらう必要はないと思うんだけど、色々やってみたくなるのかな。


マドリード公演のハイライト動画がありましたので貼っときます。



フォスフォリート逝く

 歌い手フォスフォリートが亡くなりました。93歳。水曜にマラガの病院に入院、木曜朝になくなったそうです。コルドバ市は2日間、喪に服すとのことです。

本名アントニオ・フェルナンデス・ディアス。1932年8月3日、コルドバ県プエンテ・ヘニルの生まれ。

1956年、第1回コルドバのコンクール5部門で優勝という圧倒的な実力で注目され、多数のアルバムを、パコ・デ・ルシア他の伴奏で録音。

1985年コンパス・デ・カンテ賞、1999年パストーラ・パボン賞、2005年カンテ黄金の鍵、2006年アンダルシア章、2007年美術金章など多数の賞を受賞しています。

2003年コルドバのコンクールの時マリオ・マジャ、マティルデ・コラルらと

パコのパストーラ賞の授賞式

2011年マティルデと


2008年ヘレスのフラメンコ学会賞の授賞式でチャノ・ロバート、ホセ・ガルバンと志風

ご冥福をお祈りします

2025年11月13日木曜日

ドキュメンタリー『セラス、ファルキート』

 いやいや良き映画でありました。

タイトル、君がファルキートだろう、って意味になるのかな、でも邦題ならシンプルに『ファルキート』として、副題で、世紀のフラメンコダンサー、とか、光と影のフラメンコ、とかするのかな。



アメリカでフラメンコのイベント制作などを手掛けるオフィスを持つ AMI MINARSさんの、ファルキートのドキュメンタリーというアイデアから、アメリカのリューベン・アトラス監督がスペインでの撮影が多くなることを鑑みて、彼と交流があったスペインのサンティ・アグアド監督と話して、共同で監督制作した作品。

ファルキートその人を探っていくことで祖父ファルーコや母ファルーカ、父モレーノらのことは欠かせない。弟ファルーや息子フアン、妻ロサリオ、娘たち…ファミリーは欠かせない。彼という人間の、アーティストとしてのベースであり、こういうファミリーだからこそ今の彼がいるのだな、と。

作品『フラメンコ・プーロ』で幼くしてニューヨークの舞台に上がり、全米ツアーしたこと、叔父の夭折後に生まれた彼に祖父が伝えたこと、母が語るファルーコのスタイル。

ここが個人的には涙でした。そう、あのブラソ!少ない動きで多くを語るフラメンコ。


たくさんのビデオや写真で、ファミリーの歴史が、ファルキートの足跡があざやかに浮かび上がっていく。稽古場、楽屋、舞台、様々なシーンでの踊る姿や言葉の数々。
ペドロ・シエラやペルラなど当時の共演者たちの顔も見え、観ているこちらも当時のことなどが思いこされる。早逝したマネージャー、エバのことも思い出してキュンとなった。
2001年、ニューヨークタイムズに「今世紀最高のフラメンコダンサー」と称され、2003年ピープル誌の世界の美志位有名人50人の一人として掲載。

1997年の祖父の死、2001年公演先の南米で父が舞台の上で倒れ亡くなる。ファミリーの長としての責任。
2003年に起こした死亡轢き逃げ事故。世間の冷たい目。
2005年結婚。子供の誕生。

ドラマチックすぎる人生。轢き逃げ事故の話も当時のニュース映像やインタビューなども交えて語られる。でも母の言うように「前を向いて進むしかない」のが人生。


息子に教え、舞台を見守り、自身も踊り続けていく。

フラメンコと毎日の生活が境界線なく続いている彼ら。ファルーが言うように生まれた瞬間からパルマとコンパスであやされる彼ら。そりゃ勝てないよな、と思いつつも、いや勝ち負けじゃないし、フラメンコを通してみんなが大きいファミリーのようなものだよね、とも思ったり。

ヒターノとしての誇りは見せても、ヒターノゆえに差別されたとかそういう話が出てこないのは、ヒターナの詩人がクリエイティブアドバイザーとしてアドバイスしたこともあるのかな。

フラメンコ好きが見るといや、その踊りもっとちゃんと観たい、フィエスタの場面もっと長くちゃんとみたい、とか思うところもあるかもだけど、とにかく、フラメンコが、ファルキートとそのファミリーのことが、少しわかったような気になると思います。フィエスタの場面、アフタートークで17人と言ってたのが45人きたtとか言ってたけど、あれだけ最初から最後までずっとを特典映像でDVDほしいとか思ったのは内緒。ぺぺ・トーレスもいたしね。







日本でもぜひ見ることができるようになりますように。
そしてまた来日もできるようになりますように。


なお会場には、映画でも顔をみせるファルキートの過去から今までの共演者たち、ペドロ・シエラ、ラ・トバラ、ルイス・アマドール、マヌエル・バレンシア、トロンボをはじめ、ぺぺ・デ・ルシア、エスペランサ・フェルナンデス、アンヘレス・ガバルドン、ら他多くのアーティストたちも顔を見せていました。

それにしても最近、フラメンコのドキュメンタリー多いですよね。なぜかな。
今年のセビージャ欧州映画祭でも、アントニオ、ファルキーに加え、クリスティーナ・オヨスの映画も公開されましたし、マドリードではタブラオ、コラル・デ・ラ・モレリアのドキュメンタリーが公開されたようです。