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| 左から賛助出演、ピアノのハビエル・セシリア、舞踊のクラウディア・ラ・デブラ、カンテのセリア・オルテガ、ギターのハビエル・アルコス、賛助出演のサルバドール・グティエレス |
志風恭子のフラメンコ 最前線
スペイン、セビージャ在住フラメンコ研究家による最新のフラメンコ情報
2025年11月17日月曜日
アンダルシア青少年フラメンコ最終ガラ
フラメンコ・エクスプエスト/アンドレス・マリン セビージャ アンダルシア現代美術センタセンター
| ©︎ Kyoko Shikaze |
それでもとにかく、緊張感を持続させた、濃密な時間でありました。
いつも思うけど、アンドレスとイスラエルの振りに共通する、オーソドックスなフラメンコではない動きがいっぱいあるなあ、と。後ろに足蹴り上げるのとか。フラメンコンテンポラリーゆえ?
靴にマイク仕込み、大理石の床でサパテアード聞かせたのも珍しい試みですよね。
21世紀のフラメンコらしいといえばそうなのかも。
| Junta de Andalucía |
ちなみにこの日、アンダルシア8県のミュージアムで同様の公演が同じく正午から行われました。各地の出演者は以下の通り。
2025年11月16日日曜日
リン・コルテス アンダルシア・フラメンコ
セントラル劇場でのアンダルシア州のフラメンコ公演シリーズ、アンダルシア・フラメンコ。15日は今回のプログラムで一人だけ経路が違う、といってもいいリン・コルテス登場。
歌うけど歌い手ではなく歌手。ギターも弾くけどギタリストではなく弾き語り。リズム的にはブレリアやルンバもあるけど歌うのは基本カンシオン。いわゆるフラメンコ・ポップのアーティスト。コルドバ出身で、昔、ビセンテ・アミーゴやケコらとつるんでたイメージ。その後、ライムンド・アマドールのグループでコーラスとかしてた人。
基本はカンシオンで、その中にパコ・デ・ルシアの『二筋の川』に歌詞つけて歌ったり、ぺぺ・デ・ルシアの『アル・アルバ』歌ったり、ロルカの『血の婚礼』のセリフを歌ったりとかはあって、ぺぺの曲のちょっと前にブレリア、一節だけ歌ったのがフラメンコでした。
フラメン・ポップ、フラメンコ・シンガーソングライター界隈は最近どうなのかな、と思ってきてみたけど、うーん、80年代からそんなに変わっていないと言う感じ。ま、これは人によるのだろうけど。でも確実にこう言うタイプの音楽のファンというのは存在し、こういうのをフラメンコと思っている人もいるのだな、と。いや、フラメンコといえばフラメンコですよ、広い意味では、でも狭い意味では違うよな、と思いつつ。
パーカッションがビセンテとも共演してたセサル・モレノじゃないかと思うんだけど最後まで紹介しなかったので…
日曜夜は新人の公園に行ってきます。
2025年11月15日土曜日
アウロラ・バルガス/アンダルシア・フラメンコ
セントラル劇場でアウロラ・バルガスのリサイタル。
ゲストもなしで彼女だけの公演ってのは初めて見るような。
アレグリアス、ソレア、タンゴ、シギリージャ、ブレリア。それだけ。
元々レパートリーが広い人ではないけれど、タンゴの前にティエント持ってくるかな、とか, ファンダンゴも歌うかな、とも思ったけど、そんなことはなく、シギリージャはあまり歌わない曲かもだけど、基本、得意曲だけで。
ギターはペルラ。バリバリ弾いてしっかりサポート。パルマはマヌエル・サラド、ハビ・ペーニャ、マヌエル・バレンシア。寝心地のいいベッドのようにコンパスを整える。
熱情そのままに叫ぶように歌い踊るアウロラ。立って、マイクなしで舞台の前に行き、照明からも外れ、観客の顔をみて歌いかけるアウロラ。その昔、踊り手としても活躍していただけに、ちょこっと踊るのもかっこいい。
彼女の一人舞台を観て聴いて思ったのは、アウロラは絶滅危惧種の天然フラメンカ、だということ。昭和のフラメンカ、というか。彼女を他の歌い手と同じように聴くことは不可能で、むしろ、マヌエラ・カラスコと同じ種類というか。フラメンカとして生まれ育ちフラメンコと生きてきた人だから動きもことばも佇まいも全てがフラメンコ。こっちはその熱を受け取り、うわあ、ってなるだけでいい、という感じというか。音程がとか表現がとか細かいことを言うのに意味がないと思わせるほどの圧倒的な本物フラメンコ感。ヒターナだろうがハポネサだろうが関係なく、こればっかりは持って生まれたものなのだなあ、と思うなど。
なんか元気もらいました、ありがとう
2025年11月14日金曜日
マリア・モレーノ『マグニフィカ』/アンダルシア・フラメンコ
マリア・モレーノの『マグニフィカ』
今年マドリードのビエナルで初演された作品。ギター伴奏でのバタ・デ・コーラのアレグリアス、5分にわたるマントン技からの、カンテのラビ登場、アレグリアスを締めてマルティネーテというようにテンポよく続いていく。マントンもスポーツ競技のように使う人も多いけどしっかりアルテで。ソレアだったかな、上体の動きとか、やっぱエバっぽいなと思うところもあるけれど、ロベルト・ハエンとのコンパスの掛け合いが秀逸。パルマも靴音も超速。いやコンパスの楽しさってフラメンコの根源みたいなとこあるな、と。ユーモアもあるし。この辺は起承転結の、起と承かな。ラウル・カンティサノのエレキギターやら、ふくよかな女優さんがフラメンコの掛け声を色々繋げてラップのように歌ったりとか、が転。女優さん、カディスの人でダンス作品とかもしてるらしい。最初すごく面白かったんだけど長く続くと飽きるというかくどく思えてしまう。塩梅、難しいですね。
カスタネットで始まるシギリージャ(ラビがギター弾きながら歌うのすごい)から光に向かってさっていて結って感じ。
個人的には、女優さんやエレキの部分はもっと短くていい(その方が効果的じゃ?)かなと思うけど、前作よりは好き。作品としてはちゃんとしてると思うし。エネルギーは伝わる。
ストレートなフラメンコがいいんだから、あえて奇をてらう必要はないと思うんだけど、色々やってみたくなるのかな。
マドリード公演のハイライト動画がありましたので貼っときます。
フォスフォリート逝く
歌い手フォスフォリートが亡くなりました。93歳。水曜にマラガの病院に入院、木曜朝になくなったそうです。コルドバ市は2日間、喪に服すとのことです。
本名アントニオ・フェルナンデス・ディアス。1932年8月3日、コルドバ県プエンテ・ヘニルの生まれ。
1956年、第1回コルドバのコンクール5部門で優勝という圧倒的な実力で注目され、多数のアルバムを、パコ・デ・ルシア他の伴奏で録音。
1985年コンパス・デ・カンテ賞、1999年パストーラ・パボン賞、2005年カンテ黄金の鍵、2006年アンダルシア章、2007年美術金章など多数の賞を受賞しています。
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| 2003年コルドバのコンクールの時マリオ・マジャ、マティルデ・コラルらと |
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| パコのパストーラ賞の授賞式 |
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| 2011年マティルデと |
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| 2008年ヘレスのフラメンコ学会賞の授賞式でチャノ・ロバート、ホセ・ガルバンと志風 |
ご冥福をお祈りします
2025年11月13日木曜日
ドキュメンタリー『セラス、ファルキート』
いやいや良き映画でありました。
タイトル、君がファルキートだろう、って意味になるのかな、でも邦題ならシンプルに『ファルキート』として、副題で、世紀のフラメンコダンサー、とか、光と影のフラメンコ、とかするのかな。
アメリカでフラメンコのイベント制作などを手掛けるオフィスを持つ AMI MINARSさんの、ファルキートのドキュメンタリーというアイデアから、アメリカのリューベン・アトラス監督がスペインでの撮影が多くなることを鑑みて、彼と交流があったスペインのサンティ・アグアド監督と話して、共同で監督制作した作品。
ファルキートその人を探っていくことで祖父ファルーコや母ファルーカ、父モレーノらのことは欠かせない。弟ファルーや息子フアン、妻ロサリオ、娘たち…ファミリーは欠かせない。彼という人間の、アーティストとしてのベースであり、こういうファミリーだからこそ今の彼がいるのだな、と。
作品『フラメンコ・プーロ』で幼くしてニューヨークの舞台に上がり、全米ツアーしたこと、叔父の夭折後に生まれた彼に祖父が伝えたこと、母が語るファルーコのスタイル。
ここが個人的には涙でした。そう、あのブラソ!少ない動きで多くを語るフラメンコ。







