2024年8月29日木曜日

アンドレス・マリンとアナ・モラーレス『マタリフェ/パライソ』公開リハーサル

 いよいよ来月、セビージャのビエナルが始まります。

今年も第一線で活躍する多くのアーティストたちが出演します。中にはここで新作初演を行う人も。以前は、2年ごとのビエナルごとに新作初演、というのが恒例なアーティストもいましたが、ヘレスのフェスティバルや国外でのフェスティバルなどで行われることも多くなりましたが、フラメンコ界にとってのビエナルは一大イベントであることに変わりなく、他で上演しているプログラムを上演する人もプラスアルファを加えたり、と、ここでしか見ることができない公演も多そうです。

8月28日、アンドレス・マリンとアナ・モラーレスの新作『マタリフェ/パライソ』の稽古風景の記者公開が行われました。

作品の中から二人のデュオ、一曲を見せてくれたのですが、これが素晴らしかった。ドラムスと聖週間の楽隊でお馴染みのコルネットの伴奏で、見せる二人の踊りは感動的でした。いやあ、すごかった。、ビデオを撮影したのでお裾分け。



既存のフラメンコ曲ではないのですが、フラメンコの技術を使って表現しているわけで、改めてフラメンコの自由さについて考えさせられました。フラメンコって、元々、演者のその瞬間瞬間の選択に委ねられる部分が多い、自由なアートだと思うのですよ。クラシックのように確固とした楽譜や振り付けがあってその通りにしなくてはいけないというものではない。でもフラメンコ曲としての決まり事はリズムやメロディなどたくさんある。そんな中から新しいスタイルを、バリエーションを生み出していく歌い手やギタリストたちがいて、またフラメンコ曲に縛られず自由に自らの思いを、考えを伝えるために踊る人たちもいて、今のフラメンコがあると思うわけです。フラメンコ曲という枠からははみ出ているように思えても、その芯には揺るぎないフラメンコがある、という人もいるのも面白い。

で、作品の情報とか全く読まずに観たのだけど、いやあ、びんびん伝わってくるのですよ。アンドレスは人であり、キリストであり、息子であり、アナは恋人でもあり、母でもあり、聖母でもあり。女と男の、いや人と人との、 共感そして分かり合えないところ、みたいなものを私は感じたのだけど、ビデオだとどうだろう。

アンドレスもアナもフラメンコの枠だけにとらわれない自分の表現を探し続けているアーティストだなあ、と。だから、初めての共演なのに、すごくあっているんだなあ、と。面白い。アナがまだ十代の時に知り合ったそう。2022年にスペイン文化省のプレミオ・ナショナル・デ・ダンサを同時受賞したことが今回一緒にやることになるきっかけといえばきっかけとのこと。

とにかく、期待が高まったことは確かです。

記者会見も貼っておきますね。ダンテの神曲とセビージャらしさ。その人その人の天国の探究。みんな色々考えて作品作っているんだなあ、と。





2024年8月12日月曜日

第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル コンクール決勝

 8月11日第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバルのコンクール決勝が行われました。

トップバッターはピアニスト、ロレンソ・モジャ。タランタとブレリア。

続いてチェロのホセ・エル・マルケスがファルーカとグアヒーラ。

カンテはグレゴリオ・モジャ。マラゲーニャ、タランタ、ミネーラ。

萩原淳子のカンティーニャ。

ギターソロはマルコス・デ・シルビア、タランタとアレグリアス。

カンテ。まずはアンドレーレでタラントとシギリージャ。

ホセ・プラントンはタラントとペテネラ。

舞踊でマリア・カネア。ソレア・ポル・ブレリアス。

再びカンテでヘスス・コルバチョ。マラゲーニャ、タランタ、ミネーラ、グアヒーラ。

イスコ・エレディアのタランタ。

アナベル・デ・ビコのカルタヘネーラ。

ペリートのアレグリアス。

ギターソロのジョニ・ヒメネス。タランタとソレア。

イバン・カルピオのマラゲーニャ、タランタ、ミネーラ、シギリージャ。

最後は舞踊でラウラ・サンタマリアのシギリージャ。


結果は以下の通り。

大賞/ランパラ・ミネーラ ヘスース・コルバチョ

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


楽器部門 優勝 ホセ・エル・マルケス

     準優勝 ロレンソ・モジャ

舞踊部門 優勝 萩原淳子

ギター部門 優勝 ジョニ・ヒメネス

     準優勝 マルコス・デ・シルビア

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas
カンテ部門III

・低アンダルシアのカンテ トナ、シギリージャ。ソレアレス、カーニャ、ポロ、リビアーナ、セラーナス。

イバン・カルピオ(シギリージャ)

・低アンダルシアのカンテ ブレリア、カンティーニャス、タンゴス、ティエントス、ペテネーラ、ファルーカ、ファンダンゴ・ペルソナレスなど

ヘスース・コルバチョ(グアヒーラ)

カンテ部門II

マラガ、グラナダ、コルドバ、ウエルバの歌、アンダルシアのファンダンゴ由来の他の歌。

・マラゲーニャ、グラナイーナ・イ・メディア・グラナイーナ、グラナダ、ウエルバ、ルセーナのファンダンゴ、ベルディアーレス、ロンデーニャス、ハベーラ、ハベゴーテ、そのほかのフラメンコの要素のある、地方ファンダンゴ。

イバン・カルピオ(マラゲーニャ)

カンテ部門I

・ムルシアーナとその他のカンテス・ミネーロス(タラント、レバンティーカ、ファンダンゴ・ミネーロ、カンテス・デ・マドゥルガーなど

アンドレス・エレディア“アンドレーレ”

・タランタス

イスコ・エレディア

・カルタヘネーラス

アナベル・デ・ビコ

・ミネーラス

ヘスース・コルバチョ

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

舞踊部門は1994年に始まりましたが、スペイン国籍以外のアルティスタの優勝は初めて。外国籍の優勝者は2021年学期部門で何はともあれ、の父と日本人の母を持つカナダ人フルート奏者ララ・ウォンに続いて二人目ではないかと思います。また、舞踊部門では2021年2位に米国籍のら・チミが入賞しています。何はともあれ、おめでとうございます。





2024年8月10日土曜日

第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル コンクール決勝進出者

 全員の演技が終わった後審査員による審査会議が行われ、夜半に以下の決勝進出者が発表されました。日本人の決勝進出は2009年の井上圭子以来となります。


          




コンクール準決勝3日目第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

3日目。この日の演技終了後に決勝進出者が発表されます。

トップバッターはピアノのロレンソ・モジャ。ミネーラとタンゴ。タンゴはドラムとベースが加わる。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 チェロのホセ・ルイス・ロペス。タランタとアレグリアス。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

舞踊のマリア・カネア。タラントとファンダンゴ・デ・ウエルバ

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ギターのマルコス・デ・シルビア。タランタとソレア・ポル・ブレリア。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

歌のアナベル・デ・ビコはマラゲーニャ、ミネーラ、カルタヘネーラ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ギターのジョニ・ヒメネスはタランタとソレア
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas



歌のペリートはアレグリアス
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas



踊りのラウラ・サンタマリアはタラントとアレグリア
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

最後に歌のアントニオ・ホセ・ニエト。この人の公式写真はありませんが、マラゲーニャ、ミネーラ、タランタ、ソレアを歌いました。



最初のピアニストの映像がなく、チェロの途中からですが。




2024年8月9日金曜日

コンクール準決勝2日目第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

 三日にわたって行われる準決勝の二日目。

マリア・グラシアはタランタ風とタンゴ。バイオリン2とビオラ、チェロ2とパーカッションが2という編成。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

舞踊一人目はクララ・グティエレス、タラントとソレア。伴奏はエル・ペリ。ロベルト・ロレンテとラファエル・デ・カジが歌。パルマにリチャード・グティエレス。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

歌のイスコ・エレディアはアントニオ・ムニョスの伴奏でマラゲーニャ、タランタ、ソレア、ミネーラとタランタ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

日本でもお馴染みのヘスス・コルバチョ。ダビ・カロの伴奏でマラゲーニャ、ミネーラ、タランタとグアヒーラ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

地元ムルシア州ロルカ出身のギタリスト、メルセデス・ルハン。タランタとアレグリア。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

舞踊二人目萩原淳子もタラントとソレア。伴奏はニョニョ、歌にエンリケ・エル・エストレメーニョ、ぺぺ・デ・プーラ、モイ・デ・モロン。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 


歌の最後は先日ガルロチに出演していたイバン・カルピオ。アルバロ・モラの伴奏で真ラゲーニャ、カルタヘネーラ、ミネーラ、シギリージャ。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


ビデオはなぜか前半、バイオリンのグループの演奏が切れていますが。こちらからどうぞ
https://www.youtube.com/watch?v=OmRTUzGtqzw


プレス資料をもとに書いています。曲順は必ずしも実際に歌った順番ではありません。

2024年8月8日木曜日

コンクール準決勝1日目第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル


コンクール準決勝1日目
楽器部門、一人目はハーモニカで登場のオリェ・ペラジョ。ギター伴奏でタランタとブレリア。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

 カンテ、アンドレス・アマドール、アンドレーレ・デ・アルメリアはタラントとシギリージャ。伴奏はアントニオ・ムニョス。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ギター部門のヘスス・カルボネルはタランタとソレア。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


マリアン・フェルナンデスはレバンティーカとカンティーニャス。伴奏はダビ・カロ。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

ホセ・プラントンはタラント、ソレア、ペテネラ。 
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

舞踊はイレネ・モラーレス。タラントとシギリージャ。間にグレゴリオ・モジャが入ります。


  グレゴリオ・モジャはニーニョ・デ・エラの伴奏で、マラゲーニャ、ミネーラ、シギリージャとタラント。

          
ビデオはこちら。https://www.youtube.com/watch?v=NC03Te4VX5U&t=6s


生だけでなく録画も見ることができます。決勝進出者の発表は金曜深夜、日本時間だと土曜朝になります。

2024年8月7日水曜日

ピティンゴ『ソウレリア・デ・イダ・イ・ブエルタ』第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

 フェスティバル、ガラ公演最終日はピティンゴが登場で満員札止め。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

20年前にこのコンクールに挑戦し、新人賞をもらった20年。今年はカスティジェーテ・デ・オロという章をもらっピティンゴ。

母はヒターナ、父は治安警察。幼い時からフラメンコとブラックミュージックに浸って育ち、十代でソレアなどを歌うようになる頃には同時にゴスペルのグループに参加していた、という人。正統派フラメンコを歌ったアルバムもあるけれど、人気が出たのはブラックミュージックとフラメンコのフュージョンで。ソウルとブレリアというわけでソウレリアという造語も。

今回の公演はその二つの音楽を行ったり来たり、ということなのだろう。合唱隊、トランペットにトロンボーンなど、にぎやかなグループ全員でのオープニングに続いて前半は、ギター伴奏でマラゲーニャやソレア、シギリージャなど、フラメンコを聴かせたかと思うと後半はククルククー・パロマというメキシコの曲やスタンドバイミーやキリングミーソフトリーなど世界的に知られている曲も見事にきかせたのでありました。

とにかく音程とリズムが素晴らしく、スティービー・ワンダーのアイジャストコールセイアイラブユーで涙出てきた。うますぎる。

最後はブレリア。

2時間半ほどのコンサート、観客も満喫したことでしょう。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas




2024年8月6日火曜日

エドゥアルド・ゲレーロ『ラス・ミーナス・フラメンコ』第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

いやいや、もうなんと言ったらいいか、とにかく最高のフラメンコを堪能させてもらいました。笑顔で会場を後にできる、観客を幸せな気分にさせてくれる公演ってそんなに多くない。もうほんと、夜空を抱きしめたくなるような、私はやっぱりフラメンコ大好きだ、って改めて感じさせくれるような、そんな公演でありました。


オープニングは舞台前面にエドゥアルドを中印んい歌い手4人が並んでトナー。日本でもお馴染みのダビ・パロマール、声がよりフラメンコになったというか、少し低い重みのある響きを持つようになったように聞こえ、おお、っという感じでした。2012年ランパラ・ミネーラ獲得の自らギターを弾いて歌うリカルド・フェルナンデス・デル・モラルは堂々とよく響く声で歌い上げます。


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas 

アナベル・リベラとマヌ・ソトの歌で踊るエドゥ。
©︎ Kyoko Shikaze 



©︎ Kyoko Shikaze 




©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


リカルドの弾き語りでのソレアもエドゥが歌を伴奏するように動き、つまり、踊りを伴奏するのではなく、歌を伴奏するように踊り、流れるように続いていく。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


そしてタラント。2013年ここウニオンで優勝した時のタラントとは違う。もっと自由。自分の言葉を持って、自由に語りかけてくる、そんなタラント。
優勝した時のビデオ貼っときますね。カンブレ(上体を後ろにそらす)とかは共通いてるけど、今回のタラントはもっと自由。このビデオが楷書なら、今回は草書、みたいな。


ダビのシギリージャ、そしてエドゥのタンゴ。さっきのタラントでタンゴで閉めなかったのはそういうわけね、ということでたっぷりと見せてくれました。ペパ・デ・カルソーナとか、アフリカ系の人の踊りにルーツがあるという、ユーモアたっぷりの艶笑系というか、古き良き時代のトリアーナのタンゴの香り。

リカルドのフェルーカを椅子に座って踊り、ダビのタンギージョ。カディス出身でカルナバルに出場したこともある彼だけに最高。
そしてアレグリアス。これぞアレグリアス!というようなカディスのあのキラキラした光と風が感じられるような、光とグラシアに溢れてた。
カディス! カディス万歳!

そして最後はブレリア。

まるで遠い山の中で生まれたフラメンコがウニオンから、トリアーナを経てカディスにたどり着いたというフラメンコの旅のような作品。あ、そうか、歴史的に考えると、カディスで生まれ、トリアーナをへてスペインの各地に広がりウニオンにもたどり着いたわけだから、フラメンコの歴史のルーツを遡っていくような、とも言える。
主役はもちろんエドゥアルドなのだけど、歌にも最大限の敬意を払い、歌もギター(ヘレスのハビエル・イバニェス)もパーカッション(2019年の楽器部門で優勝)もみんなが一丸となって、フラメンコを楽しみながらやっている、という感じが、観客にも伝わって、大きな会場なのに、まるでうちわのフィエスタにいるようなそんな気分にさせてくれた。

楽屋に帰ってもブレリアは続き、コンパスと歌と踊りで、フラメンコを堪能させてくれたのでありました。ありがとう!

最高のフラメンコを作ってくれた天才たち。ありがとうね〜

市長や写真家、研究家もみんな一緒に







2024年8月5日月曜日

カルロス・ピニャーナ『ルバト』第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

地元ムルシア、カルタヘーナのギタリスト、カルロス・ピニャーナ。ムルシア交響楽団、と書いてあったのだけど、前半は第2ギター、カンテ、パーカッション、ダンサーというグループで。後半がオーケストラとの共演。でも交響楽団じゃない。管弦楽団でもない弦楽器だけ。いやいやこれは看板に偽りありでしょ。ムルシア交響楽団のメンバーなのだろうとは思うのだけど、交響楽団というからには管楽器や打楽器もないとダメでしょ、ってちょっと憤慨。舞台が小さいからと言ってたけどそれならそれで工夫するとか最初から弦楽楽団というとかできたんじゃないかと思うわけです。


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


それはともかく。曲はどこかで聞いたようなフレーズがいっぱいで、あ、これはビセンテ・アミーゴ、これはパコ・セペーロ、これはパコ・デ・ルシア、とか映画音楽だ、とか思ってるとアランフェスを入れてくるし、まとまりがない。音はきれいだし演奏技術はあると思うけど、間合いが悪い。ブレリアにしてもルンバにしても踊れない感じ。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

           

アレグリアスは踊りが入ったのだけど。昨日の国立バレエで目が肥えすぎちゃったのかなあ。とにかく私的にはいろいろ考えさせられた公演でありました。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

          


ソリストも舞踊伴奏や歌伴奏で経験積んでこそ,という言葉の重みを実感するような公演でありました。

ちなみにパコ・デ・ルシアもマノロ・サンルーカルもセラニートもトマティートもビセンテ・アミーゴもヘラルド・ヌニェスもラファエル・リケーニもカニサーレスもみんな歌伴奏舞踊伴奏やってました。パコとビセンテ、ヘラルドはよく知らないけど、他の面々はタブラオでも弾いてたそうですよ。フラメンコのリズムを体に叩き込むという意味でもタブラオは必須なのかもですね。


 

スペイン国立バレエ『エスタンパ・フラメンカ』第63回カンテ・デ・ラス・ミーナス国際フェスティバル

 14年ぶりの公演だというスペイン国立バレエ団。大人数だし、舞台上に柱があったり、ドン長がなかったりと、劇場とは違うコンディションの中、どうやって公演するんだろう、と思ったのですが、素晴らしい公演でありました。

まずは朝、11時半からルベン・オルモ監督によるマスタークラス。これがまた素晴らしいクラスでした。




エスコビージャに始まって、マルカへ、そしてカディスのブレリアへ。1時間半なので曲を丸々というわけではありませんが、材料はたっぷり。
コロカシオンの大切さ、そのためのバレエの大切さ、アレグリアスという曲の持つ特徴。
彼の踊りの中にマティルデ・コラルのエッセンスがいっぱい詰まってて、クラスの後でそれを言ったら、アレグリアスはマティルデのイメージあるしね、と言っていました。アレグリアスで舞台の上歩くところはカディスで海!と飛び出していくような感じだとか、ソレアやソレア・ポル・ブレリアなどと違ってアレグリアスは止まらず回っていく、とか、ああ確かに、と思わせるような言葉が飛び出して見る専門の私にもすごく勉強になりました。

そして夜11時からの公演はエスタンパ・フラメンカ。2021年4月、コロナ禍でまだ座席を一席おきに座ってた時代に、グラン・アントニオへのオマージュとして発表された作品。といっても、初演から色々変更も加えられより良くなっていました。
オープニングは男性群舞によるマルティネーテ。初演の時の茶色い衣装からグレーの正装トラヘコルトになって、よりエレガントになった感じ。
©︎ Kyoko Shikaze

その後は男女パレハによるソロンゴ。
©︎ Kyoko Shikaze

©︎ Kyoko Shikaze

そして華やかなカラコーレス。昔のフラメンコ組曲のカラコーレスを彷彿とさせるバタとマントン.でも振り付けはより複雑という感じで圧巻。振り付けはマントン使いに定評のあるルベン監督。


©︎ Kyoko Shikaze

初演の時、あの上手な子一体誰?と思った、新人だったノエリア・ラモス。年月経って、風格のようなものも出てきました。ムイ・フラメンカです。
©︎ Kyoko Shikaze
        

そしてシギリージャ。女性と男性4人。かつてのローラ・グレコの曲を思い起こさせます。
ソロを踊っているのはイレーネ・コレア。
©︎ Kyoko Shikaze
©︎ Kyoko Shikaze

そしてルベンがマノロ・マリンに捧げたタラント。マノロのパソがいっぱい出てくるのでなつかしく思う人もいるだろうと思ったことでした。初演の時より、振りも整理されて短くなったかな。
©︎ Kyoko Shikaze
©︎ Kyoko Shikaze

最後はニューヨークでパコ・デ・ルシアへのオマージュとして発表されたアルモライマ。舞台いっぱいの群舞で華やかに。パコの名曲にマリオのパソがすごく良くあっていてムイ・フラメンコ!
©︎ Kyoko Shikaze

これはこの秋の日本公演では上演されませんが、ぜひいつか日本でも上演してほしい。
スペイン国立のフラメンコ、すごくレベルアップしています。秋の日本公演もお楽しみに。

©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

その後監督は市長とフェスティバル監督を壇上に招き挨拶。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

終演後は会場に続く道に国立バレエの名を刻んだものを披露。
ダンサーたちも衣装のままで参加。
©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas


©︎ Festival Internacional de Cante de Las Minas

と盛りだくさんでありました。

この公演を最後にバレエ団は夏休みに入り、9月に活動再開。10月にはバルセロナのリセウ劇場で公演。その後は日本公演のための稽古に集中し、11月に来日です。 お楽しみに。