2026年9月30日水曜日

ダビ・コリア『バベル』

 すごい!すごい!すごい!

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

ダビ・コリアがやってくれた。またまたものすごい作品を作り上げた。2020年『ファンダンゴ』に続いて、世界中のオペラハウスでも上演できるだろうできるんじゃないかという非常にクオリティの高い作品。最初から最後まで皆で踊り続け、息もつかせぬ、ものすごい密度でつくりあげているので観ているこちらも過集中じゃないかと思うくらいにを観ていたので終演後は足取りがフラフラするくらいに疲れ果てた。

どこかオリエントな響きのサックスで幕が開くと上手には照明が組み合わされたタワー。薄明かりの中、肩の上に立った人がゆっくり下手から上手へと動いていく。肩車された女たち。洞窟の奥深くのような響きで聞こえるダビが歌うソレア・アポラー。「Se hundió la Babilonia, porque le faltó el cimiento」バビロンが倒れたのは基礎が足りなかったから

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

神へ近づこうと高い塔を建てようとしたことが神の怒りを買い、それまでひとつの言語だったのが違う言葉を話すようになった、というバベルの塔の話をテーマに、ダビは地元セビージャのルシア・ラ・ブロンセだけでなく、アルゼンチン出身のフェデリコ・ヌニェスや日本の瀬戸口琴葉らにも声をかけ作品の制作が始まったこの作品は、3月にヘレスのフェスティバルでワーク・イン・プログレスという形でも上演された。が、その時からはメンバーも、展開もだいぶ変わって、より完璧な作品となっている。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León


光の塔を崇める宗教儀式のような動きが繰り返される群舞の中にダビ・コリアもいて、そこから残ってソロを踊る。そう、もちろん彼のソロもありはするのだけど、自分が主役、自分と軍部は別、というわけではなく、彼も群舞の一員となって同じ振りを踊っている場面もたくさん。迫力のある群舞は、個々の力ももちろんだけど、そういった彼の姿勢と振り付けの力だな、と。アルトサックスやエレキベースのどこかオリエントな響きの音楽と音程が一ミリも狂わないダビ・ラゴスが歌うフラメンコ(カーニャ、ソレア、ロマンセ、ブレリア…)が混在するのだけど、そこに山田あかりさんが歌う子守唄が流れたり、琴のような響きをサンプリングして生演奏したり、他の言語(アラブ語?ヘブライ語?)の曲が入ったりという音楽も違和感なく、フラメンコだけでなく民族舞踊やスペイン舞踊、コンテンポラリーなど様々な技術を使って美しい形と動きを見せる振り付けも素晴らしい。そして照明!これがまたすごい。美しい形と動きをより美しく見せてくれる照明の力。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura Leónl

ムービングライトが照明としてだけでなく舞台美術、いやもはや出演者のように使われるなど、音楽でのループやサンプラーなどもそうだけど、テクノロジーの進化をしっかり取り入れて芸術性を高めていくというのもすごい。その意味で、歌や舞踊というのは人間がその肉体で表現するというある意味とてもプリミティブなものだと思うのだけど、力を合わせることで更なる高みへと上がれるのだ。

Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

群舞の中では同じ振りを踊っていても、腕の形とか、センティードとか、細かな表現が秀でているルシア・ラ・ブロンセにどうしても目がいってしまったけれど、瀬戸口もフラメンコ舞踊専門で、スペイン舞踊やバレエの経験はないと思うのだけど、よく踊っていた。最後、ソロでちょっと踊ったブレリアもアイローソで、良かった。そう、群舞の一人一人にもそれぞれ見どころが用意されている。

でもやっぱり群舞が最高で、笛と太鼓(サンプラー)で踊るセビジャーナスもすごかった。天才。群舞はギリシア演劇のコロスのようでもある。

ダビの歌を踊るダビに酔い、
Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León

いろんな言葉での叫びつつの最後までオレな瞬間はたくさんあったのだけど叫ぶのは憚られる雰囲気で、小さくなる自分の中にオレ。

そうだよね、フラメンコ、舞踊、音楽という共通の言語が私たちにはある。そしてみんなで高みを目指すのだ。よりよくなろうと日々をおくるのだ。

作品の成功の要因はダビ・コリアが一人で何もかもやろうとしないで、各分野の専門家の協力を仰いでいることだな、と思う。振り付けのメインはもちろんダビだけど、協力でラファエラ・カラスコやフロレンシア・オス、出演もしているフェリペ・シビオ(チリ出身)の名があり、コンテンポラリーのルス・アルカスもミラダ・エステルナということから客観して意見を言ったのだろう。ドラマツルギーは劇作家アルベルト・コネヘロだし、こういう一流どころに依頼するのがすごいな。
あー本当によかった。
ヘレスのフェスティバルかどこかでもう一度見られるかな。

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