2022年9月27日火曜日

ラファエラ・カラスコ『ノクトゥルナ、アルキテクトゥラ・デ・インソムニオ』

1時間10分という短い時間にもかかわらず内容的に凝縮していて見応えのある作品でございました『夜の、不眠症の構造』。新作制作時など、眠れない夜を過ごすことから発想したもので、通常の歌とギターによるフラメンコ音楽ではなく、ピアノでのバッハやアカペラのカンテ、電子音楽などと語りで踊る。ラファエラらしい、高い美意識で制作されており、音楽、照明、装置、衣装…全てが舞踊をより良く見せるために細部までちゃんと考えられている。テンポも良く、飽きることがない。

 黒い衣装のラファエラ、三つ編みを後ろに長く垂らしている。ピアノで奏でられるバッハ、ゴルドベルグ変奏曲。眠れない夜の始まり。語りはやがてヘマ・カバジェーロのカンテに変わる。再びバッハのピアノへ。紗幕の後ろには8人の白い衣装の女性たちが踊りはじめる。眠りの精? その群舞の美しさ。先日の夢をテーマにしたパトリシア・ゲレーロの作品での黒い衣装の群舞と対称的。


やがて紗幕が上がると後方には銀色の壁と踊り手が一人一人入るブースのようなもの。
この装置は回廊になり、のち、最後には高窓になるのだが、こういった装置の巧みな使い方もラフィらしい。


ひとしきり、眠りの精?と踊った後はソレアの歌で。


©️ Archico fotográfico Bienal de flamenco / Claudia Ruiz Caro

その後は、いろんな考えが浮かんでは消えていく、眠れない夜のように、短い場面がぱっぱっと出ては消えていく感じ。

©️ Archico fotográfico Bienal de flamenco / Claudia Ruiz Caro

三つ編みがつながっている二人の女性の言い争い。

大きな赤い帽子の女性の踊り。

鈴をつけた女性の踊り。


©️ Archico fotográfico Bienal de flamenco / Claudia Ruiz Caro

たくさんの目が描かれたスカートでのコンテンポラリー調の踊り。
いろいろな場面が続いていく。

©️ Archico fotográfico Bienal de flamenco / Claudia Ruiz Caro

Ruiz Caro

そんな中一人で悶々とするうちに

©️ Archico fotográfico Bienal de flamenco / Claudia Ruiz Caro

やがて夜明けが近づいてくる。骨だけの扇での踊り。その美しさ。群舞の女性のパニエは梱包材、プチプチで作られているよ。手の形まで揃っているのに注目!
©️ Archico fotográfico Bienal de flamenco / Claudia Ruiz Caro

腰につけたカスタネットを上から叩いての踊り。


演出家やデザイナーの自己主張はなく、全てがより良い舞台を作ることに、舞踊をより良く見せるために行われている。他の作品もこうあるべきだよね、本当は。とか思ったことでした。


それにしてもラフィ。踊る形の完璧さ。

彼女には確固たる美意識があってそれに基づいているから、題材は変わっても、貫く何かがあるね。これからも見続けていきたいアーティストであります。




0 件のコメント:

コメントを投稿