2021年10月6日水曜日

セラニート

セビージャでのフラメンコ・ビエネ・デル・スールの閉幕はベテラン・ギタリスト、セラニート。1942年生まれの79歳。舞台から引退するということで現在、スペイン各地で公演中。
その一環としての、つまり引退公演です。
マドリード出身の彼ですが、トリアーナ・プーラのペルロが親友で、ロシオ巡礼に何度もトリアーナの信者組合と出かけたり、とセビージャとは縁が深く、大切な公演のひとつ、だそう。本当はこの公演シリーズの開幕を飾るはずだったのですが、持病の悪化で手術を受けることなり、延期となったのです。

公演は、彼の伝記の著者、ホセ・マヌエル・ガンボアの短いけれど愛と敬意に満ちた紹介で始まりました。パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカルと並び称され、現代フラメンコの礎を築いたセラニート。パコがマドリードに上京する時セラニートに会えると楽しみにしていたこと、マノロも多くをセラニートに学んだことなどにも触れました。

『カソルラ』というタイトルのタランタに始まります。1994年に発表の『エコス・デ・グアダルキビル』に収録された曲。ほぼ彼のソロなのですが、決まりどころにパコ・ビダルとハビエル・コンデがサポートするように入ります。最後のタンゴの部分ではもう少し弾きましたが、トリオで演奏しているのではなく、二人はあくまでもサポートという感じ。
ソロでソレア。『ジャ・エストイ・エン・トリアーナ』1981年発表のアルバム『ミ・ブエルタ・デル・ロシオ』というロシオ巡礼をテーマにしたアルバムに収録された曲。
曲と曲の間にセラニートが曲名を言ってくれるのがうれしい。
『ラ・ファルーカ・ジョラ』というファルーカ、『ポル・ラ・ベラ・デ・ヘニル』からは歌のエバ・ドゥランも入ります。友達の早世した息子さんに捧げた曲『ダニ』はルンバやブレリアの形も入る自由な創作。想いが伝わってくる。セビジャーナス『アディオス・ア・トリアーナ』そして『アグア・フエゴ・ティエラ・イ・アイレ』。ここでギタリストやパーカッションのソロも入り、ちょっとパコの『シルヤブ』のセラニート版的な感じ。

本人が舞台の上からもコメントしていたように、手術から間も無く、まだ背中や足の痛みに悩まされていて、そんなときのリサイタルでナーバスにもなっていたそうで、本人的に満足はいかなかったのだろうけど、それでも超絶テクニックで鳴らした彼の片鱗は健在で、音の美しさ、キリッとした感じ、組み合わせの妙にうなりました。なんていうんだろう、枯れることなく今も弛まずに追求しているという感じ。病気や年齢のこともあって自分がイメージした通りに演奏できないのであろうことはわかるけれど、でもそのインテンシオン、こうしたいというのが見えてきて、そこにも感動するというか。

伝説的存在だけのことはあります。



なお、公演の最後にはアテネオ・デ・トリアーナという団体のカテドラ・デ・ギターラ・フラメンコの授賞式も行われ、メダルが贈られました。おめでとうございます。



 

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