2021年10月8日金曜日

アンダルシア舞踊団『アントニオ、アルテの100年』

今年はアントニオ・ルイス・ソレール、アントニオ、バイラリンの生誕100周年ということで、4月に国立バレエもその初代監督であるアントニオへのオマージュ作品をセビージャで初演、今週末にはマドリードでも上演しますが、アンダルシア舞踊団もセビージャ生まれの巨匠へのオマージュ公演を6月、グラナダのフェスティバル、国際音楽舞踊祭で初演。1952年に、このフェスティバルのこの公演は野外ででしたが、ようやくセビージャのセントラル劇場で、7日から3日間の公演となりました。

彼の人生を大きく(かなり大雑把に、ですね)三つに分けて、幼くして舞台デビューしたチャバリージョス・セビジャーノス(セビージャの子供たち)時代はエスクエラ・ボレーラ、アメリカで活躍したアメリカン・ドリーム時代はクラシコ・エスパニョール、そしてフラメンコの『ドゥエンデ・イ・ホンドゥーラ』という構成。

なお、写真はグラナダ公演の時のものです。

ボレーラは現監督ウルスラ・ロペスの妹、タマラの振付。正直、技術的には国立バレエに劣るけれど、振付がオリジナルで、ボレーラの伝統的な振りだけでなく、新しい感覚のもあって楽しい。いやでもほんと、バレエのテクニックに加えてカスタネットやボレーラ独特の姿勢とか、難しいよね。健闘してました。



でもアントニオ振り付けの『プエルタ・デ・ティエラ』はうーん、な出来かも。この作品、スペイン国立バレエでもよく上演されているので、その印象があるからやっぱ比べちゃう。アイーダ・ゴメスとホセ・アントニオのペアとか。今回踊った二人は、もちろん学校では学んだんだろうけど、多分、経験があまりないんじゃないかなあ。って、ボレーラの作品、劇場で公演するとこなんて国立の他はアイーダやダニエル・ドーニャのカンパニーくらいしか思い浮かばんしなあ。仕方ないことなのかも。

クラシコもやっぱ国立と比べるとうーんなのだけど、健闘。女性たちの華やかな衣装と男性のトラヘコルト。伝統的な衣装ってやっぱいいなあ。ザ・フラメンコって感じ。
ウトレーラ出身でオランダ在住のマリア・マルティンのギター(ソロンゴでは歌も歌います)がようございました。生演奏はいいね。


そして男性三人での『アストゥリアス』がよかった。三人がそれぞれ、カパ(マント)、カスタネット、帽子と違う小物を手にとって作り上げるアントニオ的な世界。

フラメンコのパートは、アントニオがカパに帽子で踊ったカーニャをそのまま再現。音楽もかつてのまま、という感じで、古風でよかったです。いや、古風ではあるんだけど、元々のクオリティが高いから古臭くはなってないのもすごいなあ。

続くアンダ・ハレオとソロンゴは日本でも知られているポピュラーな曲をそのままストレートにするのではなく、アンダ・ハレオはセラーナ、カラニェ帽を被ったウルスラがソロで踊るソロンゴはナナに始まり、ティエントなどと組み合わさっているのがいい。ウルスラはやはり動きが舞踊団メンバーのとは段違い。ベテランの風格。

バタ・デ・コーラの女性と男性のデュオでのアレグリアスもアントニオの時代のフラメンコに目配せしながら、での新しい振り付けだけど、よかったです。アンダルシア・フラメンコ舞踊団というだけあって、フラメンコになると生き生きしているなあ。



最後はベルディアーレス。これが華やかでエネルギッシュで楽しくて、アゲアゲで閉幕。
終わりよければすべてよし、だよね。
終演後ウルスラはベルディアーレスで終わるのはアントニオがやってたことと言ってたけど、すごくいいアイデアだと思う。単なる民謡系に終わらないパワーがある。


というわけで、国立バレエに比べるとずっと人数も少ないし、予算も少ないのかもしれないけど、よかったです。こういう公演こそ、アンダルシアの子どもたちみんなに見てもらいたい。アンダルシア州の舞踊団なんだし、なんかそういうのできるんじゃないかなあ。楽しいし。無理ならせめて、男性三人のアストゥリアスとアレグリアスだけでも見せてあげたい。


プロモーション用ビデオ貼っときます。




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