2018年9月19日水曜日

ロシオ・モリーナ「グリト・ペラオ」


美しい作品だった。2時間の長丁場。でもどのシーンも丁寧に作られていて必要なのだ。

Bienal Óscar Romero
ロシオ、ロシオの母ローラ・クルス、ボーカルのシルビア・クルスという三人の女性たちの語りと、歌、踊りで綴る、すべての母へ、すべての女性たちへのオマージュ。

現在妊娠7ヶ月という、ロシオの話で始まる。
人工授精で未婚の母になることを選んだロシオ。
そのことで母、母性、女性について思いを巡らし、考え、彼女が妊娠中のみ上演するという、特別な作品だ。大きくなり始めたお腹も、お腹の中の子も一緒に踊る。

砂が敷かれた舞台の上に床。真ん中に私の座った位置からは台と見えたプール。奥にバレエレッスンで使うようなバー。
椅子。
ギター、パルマ、パーカッション、バイオリン、電子音楽のミュージシャンたちは下手に並ぶ。
白ホリゾントに映し出される絵や風景。美しい照明。

フェルナンダ・ロメーロ風のチンチネスという手につける金属のカスタネットを使ってのタラント。といた髪を、連獅子のように振る、その髪の先の動きまできっちりコントロールされているような、見事な動き。

前日の記者会見で「体の声を聞いて動く。サパテアードの仕方も変わった」と言っていたが、全てが自然で、かつコントロールされており、気持ちがいい。
Bienal Óscar Romero
昔、バレエダンサーだった母とのアルゼンチンタンゴ風のデュオ。
母娘の愛や諍いなどが簡潔に分かりやすく表現される。
シルビア・クルスの美しく澄んだ歌声は、空に長く弧を描いていく。

Bienal Óscar Romero
ロシオとシルビアが床で絡み合う、性的なイメージの場面。
ロシオが、チャナのように、椅子に座ってサパテアードを打つ場面。

母が跪いて歩みながら語る、妊娠中に問題があり、無事に生まれたらロシオと名付け、お礼参りに参ります、と願い、叶えられたので、ひざまづいて聖母像まで歩んだ思い出。

ロシオが語る、母になることを決め、しばらく踊らないと決めたのに、最後の舞台の後泣いたこと。
母になる怖さ。
母になる決意。
自分の言葉で語る。その飾らない、真摯な感じ。

シルビアが語る、母になることで、太古からの女性たちのつながりを感じた話。

ロシオのつけひげをつけてのアレグリアス。髭をつけても動きの女性性は同じ。
エバの『アパリエンシアス』もそうだけど、見かけの意味などを考えさせられる。

そして服を脱ぎ去り、プールで水と戯れる。
羊水の中にいる赤子と一体化したような。

胎児のエコーでのビデオが映され、最後は、胎動の音を聞かせる。

赤裸々に自分を語った作品で、好みは分かれるだろう。
が、素晴らしい作品であることに間違いはない。
踊り手が語り、歌い、歌い手も語り、踊る。
女たちの語らいを脇から支える男たち。

なんかほっこり心があったかくなる。そんな作品でもあり、イスラエル・ガルバンの作品のように、いろんな読み方もできて考えさせられる。
そして妊娠中でも体のコントロールがすごくて、鳥肌ものの動きを見せてくれるロシオ。
もう感謝しかない。

あー、やっとこのビエナルで、心動く作品に出会えた。











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