2016年9月22日木曜日

ダニ・デ・モロン「21」

世界遺産アルカサル、入り口にあるパティオにつくられた特設舞台での公演初日はダニ・デ・モロン。
Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

35歳の、ソロ・アルバムをこれまでに2枚リリースしているこのギタリストが、新作に協力したアルティスタたちらを迎えて行った公演。豪華なゲストはビエナルならでは、か。
半年前に前売り券が売り切れるという人気の公演。会場には、トマティートやミゲル・アンヘル・コルテス、ロサリオ・トレド、パトリシア・ゲレーロなど、アルティスタたちの顔も。

シギリージャからブレリアへと進むオープニングのギターソロ。ドライブ感抜群だ。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.
ゲスト一人目はロシオ・マルケス。6年前くらいかな、ウニオンでランパラ・ミネーラを獲得。細く高いきれいな声で歌うカンタオーラだ。グラナイーナにペペ・マルチェーナのミロンガをあわせ、その後はカラコーレス。ミロンガはボサノバのようにもきこえ、カラコーレスはカラコーレスとは思えないような寂しい感じになるのは声のせい? というか、彼女が歌うと、フラメンコにきこえないのであります。カンシオン、ふつうの歌にきこえる。
メロディは正しいし、リズムを大きく外しているわけでもないのだが、うーん、なんでだろう。声のせい? いや歌い方?
Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.


二人目のゲストはヘスース・メンデス。ブレリア・ポル・ソレアとブレリア。先日のリサイタルでみごとにきかせたシギリージャがないのは残念だけど、どちらも得意曲だけに、とてもいい。熱唱。マイクを外してもしっかり一番後ろに座っていた私のところまで、声が届く。歌詞がわかる。ああ、フラメンコだなあ、と思う。

三人目は特別なゲスト、イスラエル・ガルバン。
舞台から一番遠い、通路で暗闇の中サパテアードをふみはじめる。大きな音が会場にこだまする。
歌の無いシギリージャ。ギターがはじまると、素早く前方に移動。今度は舞台のすぐ下、一番前の席の前で踊り始める。リズムと遊ぶように、動いているのが頭越しにみえる。観客の手を取って、叩いたり、ユーモアもある。
やがて舞台に上がり、ギターの音と遊ぶように踊り続ける。自分の身体を楽器のように叩き、跳ね、静止し、カホンを叩いたと思ったら、その上でサパテアードを踏み始める。
もうこの人の天才ぶりには脱帽しかない。一般的なフラメンコ舞踊とはまったく違うスタイルで、ときにコンテンポラリーダンスともいわれるのだが、実はフラメンコ以外のなにものでもない。その呼吸、その間合い。一見奇妙な形の中にも昔からの形がみえる。
公演が終わったわけでもないけど、スタンディングオーベーションがおこった。さもありなん。

「彼こそ僕の憧れ。夢が叶ってうれしい」というダニのソロはグラナイーナ。繊細さと大胆さが同居する、オリジナリティのある一曲。

四人目のゲストはドゥケンデ。タランタとカルタへネーラ、そしてシギリージャを。この声、この声の速度、かすれ具合。いやあ、すばらしい。ひさしぶりで聴いたけどやっぱりいい。

5人目はアルカンヘル。ティエントスとソレア。この人ののびのよい声は、ドゥケンデやヘスースとは全く違うテイストなのですが、やはりフラメンコ。工夫をして、新しい感覚を与えていく。

Archivo Fotográfico La Bienal de Flamenco. Fotógrafo Óscar Romero.

最後は全員でタンゴ。現代フラメンコのスターたちによる夢の競演は、ダニという絆によって結ばれて、幸福な夜はふけていったのでした。


なお、イスラエル・ガルバンは来月、来日公演があります。
あいちトリンナーレで「ソロ」「ふら。こ。めん」の公演があります。東京大阪から日帰りもできるので、スペインに来れなかった人はぜひ!
http://aichitriennale.jp/artist/israelgalvan.html





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