23時のセントラル劇場は舞踊作品。
1987年チリ出身のフロレンシアは地元でコンテンポラリーンダンスを学び、20歳でスペインへ渡る。2013年から16年はラファエラ・カラスコ監督時のアンダルシア舞踊団で活躍。2019年コルドバのコンクールで優勝。2021年にはヘレスのフェスティバルで自らの作品『アンティポダス』を上演し、新人賞受賞。その間にもラファエラやダビ・コリアのカンパニーで活躍と、もうこれ以上はない、というくらい順調なキャリアを重ねてきた彼女の新作。
長い紐のようなもので結ばれた二人の女がくるくる回る。
すごく強い集中力のようなものが働いている。重たい空気。
コンテンポラリーダンス的な自由な動き。でも取ってつけたような、ではなくちゃんとしている感じというのはやはりちゃんと学んできた人だからなのだろう。
ぺぺ・デ・プーラが歌うトリージャ。
ヘスース・トーレスがいつになく重い音で奏でる、ソレア。
ガロティンと民謡みたいな曲を行ったり来たりする曲。
フラメンコ的なものはそのくらい。
全体の3割くらいという印象。
音楽もフロレンシアの双子の姉妹で、今回踊りも目一杯やってるイシドラの細く高い声での歌や鐘の音や鶏の鳴き声などの効果音で進むところもあり、またフラメンコもストレートなフラメンコではなく、ひねっているっていうこともあるのだろう。
Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León |
Archivo Fotográfico de La Bienal de Flamenco / ©Laura León |
アーティストは自由に自分の持っているもので、自分のイメージを表現していくわけで、それはアーティストの自由なのだけど、観客にも観るものを選ぶ自由、自由な感想を持つ自由もあるわけですね。
前作もフラメンコフラメンコではなかったし、前作が受け入れられたからこういう路線なんだろうとは思うのだけど、うーん、観る前にプログラム読んでいなかった私には、彼女が伝えたい内容は全くわからず、なんか新興宗教の奇妙な儀式を見せられているような、嫌な感じが残った。
で今、これを書くためにビエナルのWEBにアップされているプログラムを見たならば、ブラジルのアーティスト、トゥンガのパフォーマンスにインスパイアされて、髪が繋がった生まれた双子が、別れるかいけにえになるかを選ばなくてはいけない、という物語でその姉妹の最後の1日を描いたもの、だったそうな。ああ、そうなのね。なるほど。
最近、というかパンデミック以降、紙のプログラムはなくなり、全部デジタルで、いちいちウエブにいかなくちゃってのは不便。紙の時は座席についてざっと目を通すとか出来たし、曲と曲の間にみたりとか出来たけど、いちいちスマホ出して、ウエブ行って目的のもの見つけても、曲の間に確認するとか、光も漏れるので周りの迷惑にならないようにするのは難しいし、めんどくさい。
ていうか、前作も別に表現したいものがよくわかったとかじゃなく、むしろなんだかわからないけど、幸せな子供時代というか、なんか牧歌的ないいバイブレーションもらえるようで、こんな世界もあるのね、って感じだったわけだけど、プログラム読まなくても楽しめる、なんかわからないけどよかった、と思える作品がいい作品だと思うわけですよ。
後からプログラム読んでああ、そうだったのか、と思うこととか他の人の作品でもいっぱいあるし、読んで混乱することもあるけれど。舞踊は言葉でなく音楽と身体表現で伝えるもの、だと思うし。
これはフラメンコ作品というよりダンス作品。フラメンコの要素が全くない、というわけじゃないし、だから悪いということは全くないわけだけれど。
スペイン以外の国からフラメンコを目的にスペインにやってきて、スペイン人がうらやまむほどのキャリアを重ねた結果、こういう作品にたどり着くというのは、なんか色々考えさせられます。自分の中にあるものがそうだったということなのかな。
21時30分からはアルカサルでアウロラ・バルガス。両方見るのは無理なので行かなかったけど、元気そうで何より。
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