客席にいた人は誰もが笑顔で劇場を後にしたに違いない。踊り手もたくさん来ていたし、フラメンコをあまり知らない人もいた(かかりつけの歯医者さんにあってびっくりした)けれど、皆が極上のフラメンコ、堪能したはず。
アルフォンソ・ロサ。1980年マドリード生まれ。ラファエル・デ・コルドバ、マリア・マグダレーナらに学び、舞踊専門学院でスペイン舞踊/フラメンコの資格取得。エル・グイトらのカンパニーで活躍。また2007年コルドバのコンクール、2008年ラ・ウニオンのコンクールで優勝している実力派。コルドバもウニオンも見てたけど、その頃の彼の踊りといえば弾丸サパテアードで床を抜きそうな勢いで、男っぽいというか、うわっと圧倒はされるけど、感動するような感じじゃなかったように記憶している。
それが2022年ヘレスのフェスティバルで『フラメンコ。エスパシオ・クレアティーボ』を見てびっくりした。形の美しさ。踊りをガンガン詰め込むのではなくちゃんと間合いを取ってガンガンいくところと余韻があるところのバランスが絶妙。そして回転!こんな綺麗な回転、ニュアンスつけてやる人だって全然知らなかった。
セビージャにいるとマドリーの人の踊りを見る機会はあまりないというのもあるけど(調べたら私はヘレスで何度か見てたけど)いやいや、大変身!と私には見えました。ラファエル・エステベスとナニ、バレリアーノ・パーニョスがアーティスティックディレクターとして関わったのも大きかったかもしれない。その次の作品『アルテルエゴ』はラファ、ナニなしで、でも前作の流れを引き継いでさらにステップアップしたような作品で、またまた感動。
というわけでこの日もどんな公演になるのか楽しみしかなかったんだけど、いやあ、ようございました。
ティエントス、タンゴ、ブレリアそしてソレア。サンドラ・カラスコの歌がいい。いや、声が少し低くなった?で、思わずプログラムを見返したり。ソロで歌ったファンダンゴも女パコ・トロンホ、ってくらいによかった。歌う人が歌えばファンダンゴもこんだけ深く、フラメンコになるんだなあ、って思ったくらい。
で、アルフォンソ。形がきれい。伝統のフラメンコの形。いろんな先人たちの姿が重なる。そこで繰り出されるパズルのような、超スピードの複雑なサパテアード。回転。
最初のシーンのTシャツのせいも合ってか、なんだかバレエのバリシニコフみたいで、フラメンコのミーシャだ!と思ったり。
歌には絶対足入れない。レマタールするだけ、ってほんと基本なんだけど、そうじゃないひともいるから、こういう踊りを見ると気持ちいいし、満足満足。
最後のソレアの終わり方に至るまで、洗練された深みと重みのあるフラメンコがぎっしりつまってて、気持ちよく家路を辿ることができました。
いやあ、機会があったら絶対見てください。すごいから。
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