2023年3月20日月曜日

『はかなき人生』

 セビージャのオペラハウスであるマエストランサ劇場で、マヌエル・デ・ファリャの『はかなき人生』。

フラメンコというか、スペイン舞踊のレパートリーとして取り上げられることも多いし、ギターやピアノの演奏でもおなじみ。パコ・デ・ルシアやカニサーレスも演奏してましたよね。

元々は二幕の歌劇ですが実際に全部が上演されることはそんなに多くないのかな、昔の録音は聴いたことがありますが、私は初見でした。

お話はグラナダのヒターナ娘サルーが、彼女を裏切って結婚してしまう男の目の前で亡くなってしまう、というもので、サルーを歌った/演じたのはスペインの人気ソプラノ歌手アイノア・アルテタ。



演出は伝説のオペラ歌手マリオ・デル・モナコの息子、ジャンカルロ・デル・モナコ。バレンシアの劇場の制作です。

動く大きな赤い壁で場面を作る、っていうのは、よくある現代的な舞台って感じなんだけど、問題はフラメンコの扱い。第二幕の、婚礼の宴で、「ソレアを歌うよ」とフラメンコ歌手が歌う場面があって(でも本当のソレアを歌うわけじゃない)、これは本職のフラメンコ歌手がやることが多いらしいんだけど(ガブリエル・モレーノやマイレニージャの録音を聴いたことがあります)、それをですね、なんと十字架のキリストが歌うことにして両脇に聖週間の三角帽子を被った男たち、っていうのはもう、なんというか、色々、アンダルシアを誤解している、というか、『蝶々夫人』が頭にかんざしではなくお箸をさしている感じとでもいうか。スペインで、しかもアンダルシアでこれやっていい、って思ったのが不思議。なんというか、聖週間/信仰にもフラメンコにも敬意を払っていない感じが正直、不快でした。初演ではカンタオーラが、サルーとお案じ格好で磔られて歌ったらしい。(有料プログラム記載の演出家の言葉から)



最後のサルーが死ぬ場面は、ナイフを裏切った恋人パコに持たせて自分を刺させる、というものだったのは、『カルメン』からの発想なのかな。身勝手な男に罪の意識を持たせたかった、ってことはないかとは思うけど。


期待していた舞踊場面も典型に走る、というか特に見るべきところがなかったのは残念。


衣装を手掛けたのは先日のスペイン国立『エル・ロコ』の衣装も担当していたヘスス・ルイス。これは良かったですよ。コルドバの人でフラメンコも知ってるだけに。花嫁衣装とかそのまま使えそう。



オケの音で歌詞が聞き取れんなあ、と思ったら、プロセニアム、というか、舞台の額縁の上のところにスペイン語と英語で字幕出てるんですね。助かりましたわ。スペイン語だから聞き取れる、ってもんでもないなあ。


しかしこういう、男の裏切りに何で応えるか、っていうのも色々ですね。メデアの子殺しが一番すごいけど、蝶々夫人は自殺だしな、とか余計なこと考えつつ、家路を辿ったのでありました。1時間ちょっとと上演時間が短いのは現代にあっているね、話はアナクロだけど。




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