イコニカ・フェストはセビージャのメガ・フェスティバル。2021年に始まり観光名所としても知られるスペイン広場で、6月から9月にかけてスペイン内外の人気ポップアーティストたちが登場する。
その流れで、ホテル・コロンで、ミニコンサートも通年開催されていて、そこにアントニオ・レジェスが出演ということで、2023年フラメンコ初めに出かける。
昨年のビエナルでの公演もよかったし、私的には昨年のカンテのナンバーワン、かも。
ホテルの入り口入ってすぐのところの、普段はバルなのかな、ってとこに、会場が作られているのだけど、収容は100人くらいじゃないかな。でも、音響もちゃんとしてました。
15分くらい遅れて始まったコンサート。伴奏はリカルド・モレーノ。アントニオはディエゴ・デル・モラオやダニ・デ・モロンなどと聴くことが多かったけど、特にこの人、と決めているわけではないらしく、臨機応変。リカルドはレブリーハのギタリストだけどちょっとジャズっぽいことやったりもしてる人。今回も足元にはエフェクター?らしきものもある。
最初は『レジェンダ・デル・ティエンポ』。ロルカの詩はカマロンが歌ったもので有名だけどエンリケ・モレンテも違うメロディーで歌っているのだが、アントニオはエンリケのバージョンで。でももちろんエンリケの真似ではない。同じように歌っても歌う人の個性が出てくるのがフラメンコだよね。 声の伸びもよく気持ちがいい。
続いてティエント。手探りで進む感じで、リサイタルのオープニングとしては完璧。タンゴになってもあまりテンポは上がらず、というのが彼らしいんだけど、反対に言えばティエントは単なるゆっくりなタンゴじゃないっていうのもよおくわかる。タンゴになるとやっぱりノリも違うし、雰囲気が違うのであります。
アレグリアスも絶品。アントニオはカディス県チクラナの出身ということもあるのだろうか、ゆったりとナチュラルに歌い綴っていく。今日のアレグリアスはバタ・デ・コーラにマントンの踊り手の優雅な舞が見えるよう。
ブレリアのリズムでのギターソロは個性的でノリがいい。
そして舞台に戻ってきたアントニオのシギリージャ!これがすごかった。厳格で重厚。深く美しく広大。背筋がゾクゾクするような。これってほんと、なんなんだろう。感動する歌とそうでない歌があるってことにはもちろんいろんな要素があるんだろうな。持って生まれた声質の要素ももちろんあるけれど、その声をどうコントロールして表現するか、も大切だし、メロディは決まっていてもテンポや間合いは自由だし、その辺の違いなんだろうか。
とにかくすごくて満足。歌った後の客席の写真というのを友達に見せてもらったが、みんな笑顔。そうなんですよ。いいものを聞くとみんなニコニコ顔になるんだよね。いいものを見ると、聴くと幸せになる。ソレア。そしてブレリア。
スタンダードなフラメンコを堪能し尽くした、という感じ。
伴奏のリカルドもアントニオの熱唱に笑顔になる。まだ慣れていないみたいで、ただただいい歌をサポートする喜びに溢れているという感じ。思いがけなくカマロンの伴奏をした若手、みたいな感じに見える。
アントニオはギターがあろうがなかろうが、自分でどんどん歌っていく。ギターを聴いていないわけじゃないのだけど、聴いているこっちが正直、ん?って思うようなところがあっても、アントニオは我関せずで進んでいく。共演重ねていくともっともっと良くなるだろうな。アンコールはファンダンゴ。過不足ない、聴いていた人誰もが満足のコンサートでございました。
フラメンコの曲種はそれぞれに性格があって、それを表現する、というのが大切だと思うのだけど、彼はちゃんとそれができる人。うまいけど、何を歌っても同じに聞こえるという人とは一線を画する。またすぐ聴きたくなる歌い手であります。
ちょこっとだけシギリージャのお裾分け。
0 件のコメント:
コメントを投稿