2020年12月11日金曜日

Covid 19の外出禁止も悪いことばかりではない/ロサリオ・トレド『メ・エンクエントロ』

*ネットで現在公開中です!期間限定の予定らしいのでお早めに。 https://vimeo.com/483976174 


短編映画『メ・エンクエントロ』の記者発表に行って参りました。




ドキュメンタリー的でもあり、舞踊作品でもあり、でもビデオ/映画ならではの表現が満載だから、やはりビデオダンサ、舞踊映像作品というのが一番、あっているかもしれません。

そう、これは例えば出来上がった作品が上演されるものを撮影し彼女の踊りそのままを見せるのではなく、彼女の踊りをバラして再構築し、音楽も後から付け加えるなどもしたもので、そこには監督の手が加わっているわけだけど、そうすることで、より生身のロサリオが見えてくるような、そんな作品なのであります。

近日中にVimeoで期間限定の一般公開がされるようなので、そうなったらここにもリンクを載せますが、いやあ、本当に、素晴らしい作品でありました。フラメンコ好きな人はもちろん、ダンス好きや映像好き、みんなに観てもらいたい。そんな作品。



映画より

最初のシーンでの、ロサリオのナチュラルさに微笑まされ、続くナンバーでも同じ文脈で、違うテイクが組み合わされて編集されているのだけど、リズムが、フラメンコの踊りとしてのリズムも、映像作品としてのリズムがキープされている、ところで、おお、これはすごいとなって、どんどん引き込まれていきました。

映画より

Covid19で外出禁止となった中、海外公演の補助金がもらえる予定だったロサリオが、そのお金を映像作品に使えるとなって作ったのがこの作品。外出禁止中にフラメンコ仲間達と話したことなども最初の曲で出てきます。閉鎖される中、「何かをしなくちゃ」「とにかく前進」、とロサリオは彼女の師匠であるチャロ・クルスのスタジオ、べヘール・デ・ラ・フロンテーラにあるエスパシオ・シルベストレにこもって踊ったりもしていて、ビデオは全編、このスタジオで撮影されています。音楽はドイツ人パーカッショニスト、ルベン・ルピックで、なんとこれはリモートで後から映像に合わせて録音したものだそうな。その映像も撮影は二日だけ。あとはリモート。すごいなあ。

撮影した映像を全部見て取捨選択し、その映像をアナ・ソリニス監督が構成していく。それはある意味振り付けでもあり、実際、ロサリオが踊ったそのままだけではなく、間にコンパスを入れ込んだりもしているそう。

ロサリオが踊り、監督が照明を考え、映像をつむぎ、そこに音楽が合わさられていく。カンテ(インマ・ラ・カルボネーラ。熱唱)すら後から、映像を見ながら録音したと聞いてびっくり。実際に音楽を聞いて踊っているもの、そうじゃないもの。両方あるそうです。


映画より

Covid19がなければ出来なかった作品、とロサリオも言ってたけど、Covid19の外出禁止/自粛でこんな素晴らしい作品が生まれるのであれば、あながち悪いことばかりではないということかもしれないということかもしれない、と思ったことでした。

いやね、もちろん、こんなことが起こらずに、世界各地でのフラメンコ公演が続いていて、私も生で舞台を観たいよ。でも、起こってしまったことは起こってしまったわけで。そこで何ができるか、を考えて動くのが正解なんだな、と。

映画より

予算があったという幸運も相まって、この状況でしか生まれえない、新しい作品が生まれた。めっちゃフラメンコで、めっちゃロサリオで、アーティストのクリエーションを追ったドキュメンタリー的な感じもあり、またしっかり一曲一曲を踊っていくのを見る舞台作品のような感じもあり、でも映像ならではの表現もあり。いやあ、堪能出来ます。

ロサリオの、明るく元気なフラメンカという顔だけではなく、深みや芝居心、探究心など、様々な面が見えてくるはず。監督もロサリオを見せることだけに心を砕いているという感じ。ロサリオも自分をよく見せようとかもしてないし、音楽も前へ出ようとしていないのに心に残る。なんだろう、エゴとかではなく、自然な三位一体。

ネット公開が始まったらもう一度絶対見たい作品です。日本でも公開になるといいなあ。




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