2022年3月23日水曜日

フラメンコ・ビエネ・デル・スール

アンダルシア州主催のフラメンコ公演シリーズ、フラメンコ・ビエネ・デル・スールのプログラムが発表されました。低価格で一流のアーティストによる講演を観ることができるこのシリーズ、今年は5月にグラナダ、セビージャは6月に開催。今年、ロルカやファリャが関わったあカンテ・ホンドのコンクールから100周年のグラナダのプログラムが特に充実しているように思います。



またほかにもアンダルシア42ヶ市町村でもフラメンコ・ビエネ・デルスール・ツアーと題したフラメンコ公演が行われるそう。



フラメンコ・ビエネ・デル・スール/グラナダ

5/13(金)21時『ラス・セイス・クエルダス・デ・トーレス』

[出]〈b〉オルガ・ペリセ

514(土)21時『セ・プロイベ・エル・カンテ』

[出]〈c〉エスペランサ・フェルナンデス、〈g〉ミゲル・アンヘル・コルテス

515(日)21時『ゲレーロ』

[出]〈b〉エドゥアルド・ゲレーロ

520(金)21時『ラ・バハニ・デ・グラナダ』

[出]〈g〉ミゲル・アンヘル・コルテス、ミゲル・オチャンド、アルバロ、マルティネーテ

521(土)21時『カバジョ・ロホ』

[出]〈c〉クリスティアン・デ・モレ

522(日)21

[出]〈c,sax〉 アントニオ・リサナ

526(木)21時『メジソ・ドブレ』

[出]〈b〉イスラエル・ガルバン、〈c〉ニーニョ・デ・エルチェ

527(金)21

[出]〈c〉エストレージャ・モレンテ

528(土)21時『ネルハ』

[出]〈g〉ラファエル・リケーニ 特別協力〈b〉マリア・モレーノ

[場]グラナダ アランブラ劇場

[料]18ユーロ

[問]https://www.juntadeandalucia.es/cultura/flamenco/content/flamenco-viene-del-sur-2022-programación?p=Teatro%20Alhambra 


フラメンコ・ビエネ・デル・スール/セビージャ

/2(木)21

[出]〈c〉ロシオ・マルケス

63(金)21時「ピエ・デ・イエロ」

[出]〈b〉マヌエル・リニャン

64(土)

[出]11時講演アリシア・ゴンサレス、12時〈c,g〉マリア・マリン

64(土)21

[出]〈b〉マヌエラ・カラスコ・イーハ

65(日)21

[出]〈c〉ペドロ・エル・グラナイーノ、ゲスト〈b〉マヌエラ・リオス

67(火)21

[出]〈fl, saxほか〉ディエゴ・ビジェガス

68(水)21

[出]〈c〉ホセ・デ・ラ・トマサ、エル・トゥリー

69(木)21『シディオスキエレ』

[出]〈b〉エル・チョロ

610(金)21

[出]〈g〉ダニエル・カサレス

611(土)11

[出]〈g〉マルタ・ロブレス、エカテリナ・サイツェバ 12時から講演

611(土)21

[出]〈c〉サンドラ、カラスコ、マリア・メスクレ

612(日)21

[出]〈g〉トマティート・クインテット

[場]セビージャ セントラル劇場

[料]18ユーロ

[問]https://www.juntadeandalucia.es/cultura/flamenco/content/flamenco-viene-del-sur-2022-programación?p=Teatro%20Central


フラメンコ・ビエネ・デル・スール/マラガ

118(火)21

[出]〈b〉アナベル・ベローソ

1122(火)21時『フラメンカヘ・デ、クエント』

[出]〈b〉ラ・チョニ

1129(火)21

[出]〈b,c,g〉アララ財団

[場]マラガ カノバ劇場

[料]8ユーロ

[問]https://www.juntadeandalucia.es/cultura/flamenco/content/flamenco-viene-del-sur-2022-programación?p=Teatro%20Cánovas

2022年3月21日月曜日

グラナダ国際音楽舞踊祭プログラム

スペインで最も歴史のあるフェスティバルのプログラムが発表されました。

前売りは明日22日、スペイン時間の朝10時から開始です。

今年は1922年のカンテホンドコンクールから100年ということで例年以上にフラメンコ関係の公演が充実しています。


◇グラナダ国際音楽舞踊祭(フラメンコ関係のみ)

613(月)、14(火)2230分『ドス・ヘネラシオネス・フラメンカスI

[出]〈c〉ランカピーノ、ホセ・デ・ラ・トマサ、フアン・ビジャール、ビセンテ・ソト、アントニオ、レジェス、ヘスス・メンデス、アントニオ・カンポス、キキ・モレンテ、〈g〉ミゲル・アンヘル・コルテス、ミゲル・オチャンド、ゲスト〈g〉ペペ・アビチュエラ

[場]グラナダ アルハンブラ パティオ・デ・アルヒベ

[料]40ユーロ

615(水)2230

[出]〈c〉ラファエル・デ・ウトレーラ、トリオ・アルボス

[場]グラナダ アルハンブラ パティオ・デ・アルヒベ

[料]30ユーロ

617(金)21

[出]〈c〉ペドロ・エル・グラナイーノ

[場]グラナダ 市立アウディトリオ・ラ・チュンベーラ

[料]1825ユーロ

617(金)、18(土)2230分『インボカシオン』

[出]〈b〉スペイン国立バレエ団

[場]グラナダ アルハンブラ ヘネラリフェ劇場

[料]3060ユーロ

622(水)2230

[出]〈c〉マリナ・エレディア、〈g〉ホセ・ケベドほか

[場]グラナダ アルハンブラ カルロス3世宮殿

[料]2550ユーロ

624(金)21

[出]〈c〉マリア・テレモート、〈g〉ノノ・ヘロ

[場]グラナダ 市立アウディトリオ・ラ・チュンベーラ

[料]1825ユーロ

628(火)2230分『デ・シェヘラザード』

[出]〈b〉マリア・パヘス舞踊団

[場]グラナダ アルハンブラ ヘネラリフェ劇場

[料]2550ユーロ

630(木)2230

[出]〈c〉マイテ・マルティン、〈g〉パコ・クルサード、ホセ・トマスほか

[場]グラナダ アルハンブラ カルロス3世宮殿

[料]2550ユーロ

71(金)21

[出]〈c〉ドゥケンデ、〈g〉カルロス・デ・ハコバ

[場]グラナダ 市立アウディトリオ・ラ・チュンベーラ

[料]1825ユーロ

76(水)21

[出]〈g〉ホセ・デル・トマテ

[場]グラナダ パラシオ・デ・コルドバ 

[料]30ユーロ

78(金)23時『デリランサ』

[出]〈b〉パトリシア・ゲレーロほか

[場]グラナダ アルハンブラ ヘネラリフェ劇場

[料]2550ユーロ

[問]https://granadafestival.org

2022年3月16日水曜日

ヘレスのフェスティバル各賞発表

今年のヘレスのフェスティバル、各賞が発表になりました。
ヘレスのフラメンコ学会の主宰する、批評家らによりビジャマルタ劇場で上演された作品の中での最優秀作品を選ぶ作品賞は、アルフォンソ・ロサの『フラメンコ、エスパシオ・クレアティーボ』が受賞。12人の投票者のうち、7票を集めたということです。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez



新聞社による、観客の投票による観客賞はマヌエラ・カルピオ『ミ・フエンテ・デ・ラ・インスピラシオン』この賞は地元ヘレスのアルティスタが強いですね。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez



 ヘレスのペーニャ協会による、伴唱賞はペペ・デ・プーラ。ルシア・ラ・ピニョーナ、マリア・モレーノ、メルセデス・デ・コルドバらの作品に出演していました。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez


批評家らによる投票でのギター賞はメルセデス・デ・コルドバとエル・チョロの作品に出演したフアン・カンパージョ。作曲賞も同時受賞です。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez


新人賞はアンダルシア舞踊団とメルセデス・デ・コルドバの公演に出演したアゲダ・サアベドラ。
©︎Javier Fergo Festival de Jerez

受賞者の皆さんおめでとうございます。

2022年3月7日月曜日

ヘレスのフェスティバル最終日エステベス/パーニョス舞踊団『ラ・コンフルエンシア』

 最終日夜11時から、アタラジャでの最終公演は先日のアルルフォンソ・ロサの素晴らしい作品を演出振付したエステベス&パーニョスのカンパニーの公演。これもまた素晴らしいものでした。

©Javier Fergo Festival de Jerez

ラファエル・エステベスとバレリアーノ・パーニョスの二人を含む五人の男性ダンサーが、フラメンコやスペイン民謡などをベースにした音楽でとにかく踊りまくる1時間10分。フラメンコが得意なラファエルとアルベルト・セジェス、ボレーラの名手バレリアーノ、スペイン舞踊のヘスス・ペロナ、コンテンポラリーが上手なホルヘ・モレラ、とそれぞれの得意を生かした振付で、エステベス&パーニョスらしく、フラメンコの歴史研究に裏付けされた根拠があり、なるほどとうならされることばかり。

純粋な舞踊作品であり、舞踊好きなら魅了されるはず。要素が盛りだくさん過ぎてめまいがしそう。

例えば、ホタからのアレグリアスがセビジャーナスの起源であるセギディージャ風になってカディスのブレリアになってまたホタとか、アレグリアスのルーツを考えさせるナンバーだったり、黒いTシャツを頭にかぶって、アフリカ系の人の影響を示唆したり、聖母像を想起させたり、めくるめく展開。トリアーナのタンゴのお尻を突き出すのもアフリカ系由来だしね。

ラファエルは太っていて、バレリアーノは筋肉質で痩せている。でもそれぞれがそれぞれの身体でそれぞれの表現をする。これってめちゃフラメンコじゃない? 

ソロあり、群舞あり、ドラマ的なものあり、と

いやあ、またすぐにもう一度観たい、また本人たちの解説付きでビデオが見たい。そんな作品です。

余韻を胸に家路につきました。

ビデオはこちら


2022年3月6日日曜日

ヘレスのフェスティバル最終日ハビエル・ラトーレ振付工房ファルーカ

 毎年恒例ハビエル・ラトーレの振付工房。最終日には1週間で学んだ振付を劇場で披露します。その振付も、一人で踊る、単なる振付ではなくクラスの面々が舞台に出たり入ったり、整列したり円になったり、と、舞台作品の一部のような振付を学び、踊るというものであります。

今年はファルーカ。

タマラ・タニェの歌うタラントをハビエルが踊って




それをファルーカへとつなげていくというもの。



いつもながら、観ているだけでも学びが多い。日本人では萩原淳子が参加していました。









最後は修了証を舞台で渡し、記念撮影。毎年参加している人もいますね。それだけの価値が有るクラスだと思います。舞台での人の動かし方まで学べるクラスなんて他にありません。


来年はもっとたくさんの日本の踊り手も来ることができますように。



2022年3月5日土曜日

ヘレスのフェスティバル16日目メルセデス・デ・コルドバ『シ、キエロ』

ちょっともう、メルセデス、あんたって天才だったの?

と叫びたくなるような作品でした。振付は一部、マヌエル・リニャンの協力があったようですが、演出家の手も借りず、こんなにも素敵な作品を作り出したメルセデスにはほんと脱帽。個人でこれだけのものが作れるって本当にすごい。それにはもちろん作品全体を支えた、公私にわたるパートナー、フアン・カンパージョの力が欠かせないわけだけど。
いやあ、「初演だし、まだ磨かなくちゃ」と、終演後、メルセデスは語っていたけど、いやいや、ほんとにすばらしい作品でありました。

舞台の中心に台があって両脇まで幕がしまっている。その台の上にメルセデス、そして下にいる四人の女性ダンサーや歌い手達が扇を振ったり、上着を脱いだり、なんども同じ動作を繰り返すオープニング。彼女が長年在籍していたエバ・ジェルバブエ舞踊団の作品をちょっと思い起こさせる。やがて台から飛び降りた彼女がサパテアードを始めます。幅広の黒いパンタロンに白いブラウス。その彼女が上手の花の絵の陰に引っ込むと同じ衣装の四人の女達が登場する、という演出もいい感じ。四人はメルセデスの分身なのだろうなあ、と思うのです。

前作『セール』では一人で踊った彼女ですが、今回舞踊団となったのは彼女にとって必要な事だったそう。一人で表現できるものよりも、より大きなものを見据えているという事なのでしょう。

人形振りみたいにしたり、喧嘩したり、のユーモアもたっぷりの振り。赤いバラを口にくわえて踊ったり。最後は詩の一節を一人ずつ読んでいきます。ミサのよう。特に最後の文を全員で唱えるように皆で言うのでそう思ったので去ります。そういえば、タイトルは直訳すれば「はい、愛してます/欲しいです」になりそうですが、結婚式の時に「はい、誓います」という意味。タイトルを聞いて「結婚するの?」と言われたと記者会見の時に話していましたが、彼女の舞踊に対する誓いの言葉ということのようです。そうすると、舞踊の世界に飛び込み、女友達たちとの楽しい時を経て、誓いを述べるミサ、なのかもしれません。


そして始まるのはメルセデスのソレア!
フアン・カンパージョが演奏する、トレモロにソレアのファルセータが絡んでいく導入部の美しさ。そしてエンリケ・エル・エストレメーニョの熱いソレアに応えるように歌を踊るメルセデスの素晴らしさ!

©Javier Fergo Festival de Jerez

とにかくすごいソレアだった。もうどう表現したらいいかわからない。気迫と魂のソレア。
エバやマヌエラ・カラスコを思い出させる振りなどもあるのだけど、真似しているわけではなく、インスパイアされてのメルセデスのソレアになっている。いやあ、もうこの一曲だけでも2週間のヘレスの滞在の意味があったと思えるくらいだ。

ソレアに圧倒された後は、三人の女性が踊る、カスタネットのシギリージャ/ドローレス、バルガス“ラ・テレモート”、タラント/カルメン・モーラ、そしてペテネーラ/マヌエラ・バルガスという三人へのオマージュ。

続いて大きなテーブルが持ち込まれ、宴へ。四人の女性が歌いながらワイングラスやお皿を巧みに使い、リズムと遊ぶ。ちょっとミュージカルみたいでもあり、いや、これを発展させたらもう一つの作品できそう。最初、ウエイターのように両脇に控えていたパコ・ベガとオルーコ
が席に着き、テーブルにあるものでリズムを奏で、四人が踊りまくる楽しい場面。

テーブルを脇に寄せ、バタ・デ・コーラとマントンのメルセデスが登場。カンティーニャスで踊ると、女の子たちはテーブルクロスでマントンやバタの真似をしたりと絡んでくる。

そこからルンバ、ローラ・フローレスへのオマージュでルンバ。マイクの調子が悪くなってしまったのは残念だったけど、アクシデントはしょうがないよね。

©Javier Fergo Festival de Jerez



最後にまたメルセデスが登場し、踊った後でマイクに向かい、「死ぬまで踊り続けます、ビバ・エル・アモール、ビバ・エル・アルテ・イ・フラメンコ!」と高らかに宣言。

賑やかなフィエスタで幕がおりました。

いやあ、良かった。本当に良かった。構成、演出、振り付け、照明、衣装、どれを取っても一級品。うまいなあ。全てが破綻なく流れるようにつながっていく。昔ながらのフラメンコだけでなくコンテンポラリー的な振り付けもあるのだけど、それも長すぎず重すぎず。軽快。

歌はエンリケの他に、ぺぺ・デ・プーラ、ヘスース・コルバチョという歌い手たちのバランスも良いし、いやあ、すごいなあ。フアンとコルバチョは二日連続出演だけど、二つの全く違う作品の構成とか全部覚えてるってのもすごいよね、当たり前に見てるけど、考えてれみればすごくない?

とにかく、メルセデスとフアンの才能に感服した夜でした。7月コルドバで再演されるということなので、また観に行こうかな、と考えています。


2022年3月4日金曜日

ヘレスのフェスティバル15日目エル・チョロ『♯シディオスキエレ』

 

©Javier Fergo Festival de Jerez 
ウエルバ出身のエル・チョロの新作は、パトリシア・ゲレーロの作品などの演出で知られるフアン・ドローレス・カバジェーロが監督。

椅子だけの舞台にギタリストがやってきてチューニングするとこから始まる、などの構成、演出は演出家によるものなのだろう。物語はない。記者会見で「フラメンコを踊る喜びを伝えたい」と言っていた。

最初はファンダンゴ・デ・ウエルバ、一つ目は動かず、二つ目はマルカールし、三つ目は足を入れて、と変化をつけて踊っていくのは悪くない、と思ってたのだが、続く椅子に座って始めたカーニャや、ハーモニカとのガロティン、タランタの歌に続く長い長いソロ・デ・ピエからのタラントと、フラメンコ曲を普通に踊るのではなく、バラバラにして再構築してる感じ。

パワフルなアレグリアス、速いテンポのシギリージャ、ブレリア。

ああ、ここはもうちょっと足を引いた方が綺麗なのにな、とか、ここは肩を入れた方が、とか、回転の後の手は少しゆっくりの方が余韻が、などと、思ってしまう。振りがぶっきらぼうというか、味わいに乏しいのだ。それが彼のスタイルと言えばそうなのかもしれないけれど、そういった細かいところとか、演出でプラスできなかったのかなあ。なんか一本調子に見えてしまうのであります。飽きる。

男性は女性に比べて衣装に変化がつけにくいせいか、長めのジャケットなどで工夫もしていたのだけど、やはり難しいですね。男性がバタやマントン使うのが流行るのもわかる気がする。

1時間以上、ずっと舞台にいて踊り続けたのはすごいし、たくさんの努力があるのもわかる。それには拍手。でも舞台を見てときめいたり、いろいろ考えたりすることが好きなわがままな観客である私にはちょっと物足りない、そんな感じです。

ビデオはこちら

ビデオで見てて思ったのだけど、靴音が均一で、アクセントが乏しいのも一本調子に見えてしまう原因かも?


2022年3月3日木曜日

ヘレスのフェスティバル14日目アンダルシア舞踊団『蝶の呪い』

 昨年グラナダで初演、11月にはセビージャでも上演された大作がヘレスでも上演。

スペインを代表する詩人の一人でフラメンコとの関係も深いフェデリコ・ガルシア・ロルカの時代の舞踊、スペイン舞踊、フラメンコ、モダンダンスを綴っていく作品。フラメンコの歴史やモダンダンスの歴史を知らないと、なんでここでこれわからないよお、ってなってしまうだろうとは思うけど、白バックの明るい照明や、華やかな衣装、バラエティに富んだ振り付けで、クエスチョンマークが頭に浮かびながらも楽しめたのではないでしょうか。セビージャで観たときよりも流れが良くなっているような? いや2時間はやっぱ長いんだけどね。

わかりにくい、と言われたからなのか、パンフレットが配られていて、それを読めば、ああそういうことだったのか、とわかることも多いとは思うし、勉強にはなることでありましょう。これで黎明期のフラメンコやモダンダンスにも興味を持つこともあるかもしれないしね。

バレエ界を席巻したカチューチャからフラメンコへの移行を示したオープニングからサクロモンテのサンブラへと続くオープニングから、時に舞台上でも衣装を変えながらも、フラメンコやコンテポラリーまで何役も踊り続けるダンサー達は本当にすごい。

©Javier Fergo Festival de Jerez

ロイ・フラーの長い袖のドレスを、ロルカの戯曲『蝶の呪い』へとつなげ、ラ・アルヘンティーナへ等と続いていく流れもいい。ただ、どの場面もちょっと長いのであります。これ、各場面を数分ずつ削ればもっと良くなるのになあ、と思ったことでした。

日本でもおなじみ?のアゲダ・サベドラが、アルヘンティーナやカルメン・アマジャを踊っていたのが印象的でしたが、他の女性ダンサー達も実力派ぞろいでよかったです。ウルスラのディープソングからのバタとカスタネットでのシギリージャも見応えがあります。ただ、男性ダンサー達はバタで踊ったアレハンドロ・モリネロを除き、回転で軸がずれることが多いのがちょっと目につきました。難しいですね。

ロルカは内戦時に殺されたのですが、戦争の足音を感じさせる場面もあり、前回見たときよりそれが重く響いたことは言うまでもありません。

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2022年3月2日水曜日

ヘレスのフェスティバル13日目ハビエル・バロン『エントレ・ムヘーレス』

ハビエルのソレア!

本当はもうそれだけでいい。オープニングでちょっと踊ったシギリージャやカンティーニャも欲しいかな。でもその他のものは全て余分。

©Javier Fergo Festival de Jerez

そんな気分になってしまったアタラジャ博物館での公演。昨年7月、イタリカ舞踊祭で初演された作品で、こちらにその時のことを書いているののでありますが、ビデオあり、昔のアンダルシアロックのようなドラムとエレキベース、キーボードの楽団あり、『君の瞳に恋してる』で女の子が踊るディスコシーンあり、コンテンポラリーダンサーだという人のソロあり、ドラマ風というか、小芝居あり。

脚本演出の人がいて、いろいろアイデアが盛り込まれているのだけれど、肝心の踊りを引き立てるための作品ではない、というのでしょうか。

ハビエルが最後に踊ったソレアは本当にとても良かったのだけど、衣装もようわからん。

フェスティバルなどに出演するために作品が必要な時代で、踊りだけ踊ってれば幸せ、トイうタイプの踊り手にとっては受難の時代なのかもしれません。

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ヘレスのフェスティバル12日目マヌエラ・カラスコ『アロマス・デ・ムヘール』

舞台に出てきただけで空気が変わる、フラメンコの至宝、マヌエラ・カラスコ。

今回は女性がテーマということで、娘サマラに加え、アナベル・バレンシア、マリ・ビサラガと三人のカンタオーラと女性バイオリン奏者が出演していました。

©Javier Fergo Festival de Jerez

三人のカンタオーラによるトナから始まるシギリージャはアナベルがマヌエラに歌います。そこからサマラのカンテソロ、リビアーナへと続きます。マリ・ビサラガのカンテソロはカンティーニャス。タラントは夫ホアキン・アマドールが演奏し、娘サマラが歌う家族三人のヌメロ。マヌエラならではのムイ・フラメンカな形にキュン。アナベルのソロはマラゲーニャとベルディアーレス。そのあとの、昨年亡くなった、ホアキンの妹でもある歌い手スーシの『ナナ・デ・カバージョ・グランデ』の録音でマヌエラが一人、思いを込めて舞い、胸が熱くなりました。そして最後は極め付きのソレア。

歌い手達はマヌエラのパワーに圧倒されまいと必死に歌ってはいたものの、失礼ながら大劇場でソロを歌うほどではないような。バイオリンはなぜこんな人が、と思うくらい下手。女性たちを集めなくても、マヌエラは一人で何億という女性の代表になり得るのだから、無理に女性連れてこなくても良かったのではないか、と思ったことでした/

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2022年3月1日火曜日

ヘレスのフェスティバル11日目マヌエル・リニャン『ピエ・デ・イエロ』

 タイトルのピエ・デ・イエロ、鉄の足は、マヌエルの闘牛士だった父の通り名で彼に捧げているとのこと。プログラムに、「決闘、伝統との激しい討論、自分の不一致への回答であり、自分の未来への質問。バイオレンスと反逆にもかかわらず理解の抱擁を、出会う腕の暖かさを求める」とあるように、前作『ビバ!』同様、彼自身の性的指向をテーマにした作品といえるだろう。

ドラムとエレキギターによる強烈な音楽の中、上半身裸で、腰高のパンタロンを身につけ、闘牛場の柵にある闘牛士が逃げ込む退避柵ブルラデーラを模した大きな壁にぶつかり、その壁も使ってサパテアードをして踊るマヌエル。ちょっとイスラエル・ガルバンの『アレーナ』を思い出させます。柵の上からコルドベスをかぶった歌い手が歌いかけるオープニングから、パンタロンの上からスカートをまとってのシギリージャ、マラゲーニャ、スパンコールと黒のリバーシブルのジャケットでのカディスのブレリア、黒のブリーフ一丁でアキラ100%?なガロティン、アマルグーラからのファルーカはボンテージで。

©Javier Fergo Festival de Jerez

いやあ、前回のテーマが女装なら今回はハードゲイ?なのかと思わされました。

おそらくこれは彼の自分探しの旅の一環なのでしょう。壁にぶつかり抵抗し、ズボンの上にスカート履いて擬態し、スパンコールと黒のリバーシブルジャケットのように二つの間をいったりきたり、吹っ切って縛られて踊る、ってことなのでしょうか。だとしたら割とわかりやすい。

回転はキレキレだし、踊りはいつもながらにすごいのだろうとは思うのだけど、入ってこない。衣装をここまで徹底する必要があったのでしょうか? 残念ながら私の趣味ではないのです。美的感覚の違い?それとも保守的な観客を挑発しようとしたのでしょうか。いや、趣味は人それぞれだし、表現の自由といえばそれまで、ですが。

今年のヘレス、アナやロシオら女性たちは遥か彼方を見据え、ぺぺやアルフォンソ、ラファなど男性たちは過去を見つめてから、前進する、という感じが全体的なイメージとして感じているのですが、彼もまた前進するために過去を整理しているのかもしれませんね。

エレキギターとフラメンコギター(フアン・カンパージョ)のセッションやバイオリン(ビクトル・グアディアナ)の音楽が救いでした。

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