2020年9月30日水曜日

ラ・トレメンディータ『トレメンダ』

いやあ、楽しかった。すごかった。
フラメンコ未来形?いやすでに現在形。

伝統的なアコースティックギターでのフラメンコもいいけれど、エレキベースにドラムにキーボード(+シンセサイダー、シーケンサーなど)伴奏のめちゃかっこいいフラメンコってすごくいい!のであります。

新奇をてらってやっているのではなく、これがいいからやっているし、編曲のかっこいいことと言ったら、もう。すごすぎ。
編曲はトレメンディータとドラムのパブロ・マルティン・ジョーンズ(ロシオ・モリーナの公演とかにも出ています)。


幕が開いたら、ロックコンサートのようなイメージの照明のセッティングで、上手からドラム、エレキベース、キーボード、カホン、パルマ2人が座っていて、下手の端にいるのは、あれ、おばあちゃん? うちの近所でいつも朝ごはん食べてる、トレメンディータのおばあちゃんだ!

電子音の中、トナを歌いながら登場し、自分でもカホン叩きながら歌うシギリージャ。エレキベースが奏でる伝統的なファルセータがめっちゃかっこいい。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


トレメンディータは本名ロサリオ・ゲレーロ。1984年セビージャはトリアーナ生まれ。父はタブラオなどで活躍する歌い手ホセ、トレメンドで、芸名はそこから。トレメンド/トレメンダはものすごい、という意味であります。昔、まだ十代の頃、ウニオンやコルドバのコンクールに出場してた頃から知ってるけれど、いやあ化けました。大きく化けました。

伝統的なフラメンコも熟知しているけど、フラメンコだけ聴いてきたわけじゃないから、いろんな楽器でもフラメンコを、自分なりの形で表現しているのだと思います。

エンリケ・モレンテが歌っていた、ロルカ作イエルマの『no te pude ver』の詞で、違うメロディのコーラスに始まるセラーナ。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


エレキベースを持って弾き語るペテネーラ。ニーニャ・デ ・ロス・ペイネスも歌っていたレトラ。こうやって新しい命が与えられていくのかもしれなません。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

そっと、本当にそっと登場したアンドレス・マリンが歌うタランタ。これがそこらの歌い手顔負けの味わい。伴奏するトレメンディータが最後のレトラは一緒に歌う。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


レジェスおばあちゃんは歌わない、踊らない。舞台のはしで孫を見守り、時々、机叩いてコンパスとってるだけ。

でもその存在が、なんとも言えない味わい。最先端、超モダンなアレンジの音楽、舞台の中に、歴史と伝統のおばあちゃんがいることが意義がある、ってことまで考えたわけじゃないだろうけど、孫のリサイタルを心から楽しんでいるようなおばあちゃんにほっとする。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


パルマ二人のみの伴奏でのブレリア弾き語り。

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

アレグリアスのイントロのベースの演奏がカッコよすぎた。伝統的なフレーズからいくつかの音を抜き取って、でもアレグリアス感があるというやつ。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro


ソレアでもニーニャ・デ ・ロス・ペイネスが歌っていた伝統的な歌詞を歌います。

コンサートの半分が伝統的な歌詞、後の半分が今の歌詞、という感じかも。


Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

Archivo fotográfico Bienal de Flamenco. Fotógrafa: Claudia Ruiz Caro

 最後のこの写真だけ見たらフラメンコ公演だとは思わないよね。片側刈り上げ、半分長髪のロサリオも歌い手には見えない。でもそれが本格正統フラメンコを見事に歌い上げるのであります。超かっこいい編曲で。

これが生まれて初めて見るフラメンコだったら、若い世代にもフラメンコがぐっと身近に感じられるのではないかなあ。ロサリアもいいけど私のおすすめはロサリオ。フラメンコ好きにも興味がないロック少年少女にも絶対おすすめ。

とかも思ったけど、そんなこと何より、いいエネルギーで心が満タンになるコンサートでした。ああ、楽しかった。

も一度いうけど、奇をてらったわけじゃないよ。愛と敬意で自分のフラメンコを描いているだけだよ。だから気持ちがいいんだ、そう思います。

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