2020年1月31日金曜日

ラファエル・リケーニ『エレンシア』enセビージャ

セビージャ、ロペ・デ・ベガ劇場でのラファエル・リケーニのリサイタル。
セビージャはトリアーナの、パヘス・デル・コロ通りにあった自転車屋さんの息子。
今は自転車屋さんもないけれど、昔ながらのトリアーナの人たちに今も愛されています。

コルドバとへレスのコンクールで優勝したのは1977年というからまだ16歳。1986年にはソロアルバムを発表。翌年ドイツの会社からアルバム『フラメンコ』、90年には再びスペインで『ミ・ティエンポ』を発表。92年に発表した『セビリア組曲』はのちに、アントニオ・ナハーロが振り付けてスペイン国立バレエでも上演されました。その後もCDを発表するなど活躍していたが、病気(躁鬱病)のため、一時舞台から遠ざかっていたのですが、エンリケ・モレンテへの伴奏などで徐々に戻ってきて、2017年には新譜『マリア・ルイサ公園』を発表しています。

その彼の、新譜発表のリサイタル。
期待は高まります。満員の観客を前に、2時間弱の長丁場を弾ききりました。
そのほとんどがソロで新曲。

ああ、やっぱり彼は天才!、という気持ちが新たになったのは、その曲たちの独創性によるものであります。
技術的にはもっとすごい若い子がたくさんいるかもしれません。でも、その演奏への心の込め方は、やっぱ、違う、と思うのです。音を詰め込むことをせず、その間(ま)も音楽にしていき、何より一つ一つの音にセンティードがあるのです。
そしてその曲。一言で言うならば詩的。
トレモロを多用し、クラシックのような、落ち着いた感じもあります。
そして、こうきたらこうくるでしょう、的なセオリーを裏切る感じ。
シギリージャやアレグリアスもブレリアに持ち込むことなく、すっと終わるのです。
その清々しさ。
エンリケ・モレンテに捧げたグラナイーナに始まり、ソレア、セビジャーナス、タランタ。
パコ・デ・ルシアに捧げたシギリージャの美しさ!
アレグリアス、そしてファルーカはマリア・モレーノが踊る。
ブレリア。そしてタンゴ。

後半は、『アマルグーラ』で大喝采。聖週間の行進曲なのですが、それを思い入れたっぷりに演奏。最初に聞いた時の感動がまた新たに。元の曲がいいのもあるのですが、それがギターで演奏されるとまたこれが。。。。


アルバム『アルカサル・デ・クリスタル』に収録の『エサ・ノチェ』やマヌエル・モリーナの『ロメロ・ベルデ』なども演奏。最後に国立バレエ監督のルベン・オルモが踊って終わりました。スペインの国民楽派のような曲にマントンで踊るルベン。ザ・セビージャ。



よかった。
のではあるけれど、マイテの時と同じく、周りの人ほどには感動していない自分。感度が落ちてるのか、期待が大きすぎたのか。いや、よかったんですよ。でも、かつてのテクニックとは違って、気持ちではこう弾きたいけどできてない、みたいなこともあったりして、そういうところも気にならないわけじゃなくて。それを補って余りあるセンティミエントあるんだけど、それじゃ完全には満足できない自分。
欲張りすぎるな、と反省。

2020年1月26日日曜日

マイテ・マルティン『ケレンシアの20年』


マエストランサ劇場でのマイテ・マルティンのリサイタル。
ほぼ満員の盛況、最後はスタンディングオーベーション。
大成功でした。マイテらしさに溢れたコンサートで皆満足。

『ケレンシア』はマイテが20年前、2000年にリリースしたアルバムのタイトルで、辞書を引くと、帰巣本能、古巣などの意味だとあります。
過去のフラメンコに学び、彼女のアレンジを加えた曲たちは、20年の時を経ても、古臭い時代遅れにはならず、今、古典へとなろうとしている、と、この公演でも実感させてくれました。

マイテといえば、やはりあの、センティミエント、思いを込めた繊細な歌い回しでしょう。一音一音をおろそかにせず、音程は完璧、発音も明晰。全てにセンティードがあって、本当、なんで他の歌い手たちはこういう歌いかたしないんだろう、と昔思ったこともありました。

その彼女の世界、彼女の宇宙そのもののようなコンサート。
オープニングのカンパニジェーロス、続くペテネーラではゲストのパトリシア・ゲレーロが青のマントンを使って踊り華を添える。そしてビダリータ。

叙情的な曲は彼女が最も得意とするところ。ゆっくりゆっくり歌い継いでいきます。
伴奏は最近、彼女の伴奏をずっとしているアレハンドロ・ウルタード(1994年アリカンテ生まれで各地のコンクールで活躍、2017年ウニオンで優勝)とホセ・トマス(1988年シウダ・レアル生まれ。2014年ラ・ウニオンで優勝)。いずれもコルドバのコンセルバトリオ出身で、クラシックギター的とも思わせる、繊細な演奏が特徴的。
シギリージャ、ティエント。そしてソレアで再び、パトリシアが踊ります。
『トレス・モリージャス・デ・ハエン』『ロス・クアトロ・ムレーロス』と続き、
バイオリンのイントロで、アルバム『ケレンシア』のブレリア、『テン・クイダード』、デビューアルバム『ムイ・フラヒル』のアレグリアス、『ナベガ・ソラ』とベストヒットも歌い継ぎ、最後はまたパトリシアと。
挨拶して、アンコール?は2曲。ユパンキの曲とカンシオン。

再びスタンディングオーベーション!


でも個人的には実はちょっともやもやしてます。
彼女のスタイル、で、彼女は本当に素晴らしい歌い手で、彼女の叙情的な歌に会うギタリストを見つけ、彼女らしさに溢れる公演を構築したのですが、その反面、全部、同じような感じになってしまっているという感じもあるのです。
彼女の中には叙情的な部分ばかりでなく、強さやエネルギーなど、フラメンコの他の部分もあって、それがあまり出てきていないという感じだったのです。彼女が選んだわけで、お客さんも喜んでいるので、私が文句を言う筋合いはまったくないのだけれど、個人的には、もう少し、メリハリついてもいいかなあ、と思ったことでした。
フアン・ラモン・カロやチクエロ、サルバドール・グティエレスら過去の彼女の伴奏者が持っていた、フラメンコのパワー、そしてそれを支えるフラメンコ性トイった部分が、今回の伴奏者には感じられず、たぶん、途中のシギリージャなどでは以前の伴奏者を持って来ればアクセントになったのではないか、何て思ったり。

スタイルを確立するというのは大変なことで、素晴らしいことでもあるのですが、実際、彼女は素晴らしかったし、でも、だからと言って同じ調子が続くとうーん、になってしまう、のは本当、見る側のわがままだとは思うのだけど、あー、、難しいですね。

なお、おそらく5年以上ぶりのセビージャ公演。エバ・ジェルバエブナやアナ・モラーレスら、アルティスタもたくさん見に来ていました。

ところで公演後、ロビーでCD購入者へのサイン会があったのですが、スペインで見たの初めてかも。




2020年1月23日木曜日

ビエナル2020のフラッシュモブ

偶数年の今年はビエナルの年!
9月4日から1ヶ月間、セビージャで開催されます。

マドリードで開催中の旅行博を機に、今年のビエナルについても発表されました。
開幕はエバ・ジェルバブエナの新作をマエストランサ劇場で初演だそうです。
楽しみ!

そしてその4日、希望者は誰でも参加できるフラッシュモブが行われます。
って、こういう風に発表してる時点でフラッシュモブではないような気もするんですが、すなわち、誰でも参加して一緒に踊っちゃお、イベントでございます。

これまでにラファエラ・カラスコやパストーラ・ガルバンらが振り付けてきましたが、さて今年は?

その振り付けがこちら。
天才、ラファエル・リケーニの曲で踊るのは日本でもおなじみ、アントニオ・カナーレスとマリア・モレーノ。



セビジャーナスではあるのですが、踊り方でこうもフラメンコになるのかといういいお手本。マリアの体使い、すごくありません? ムイ・フラメンカでございます。カナーレスも横向きになると、え、っていうくらいのお腹なんですが、フラメンコで、時にエレガントで。うーん、すごいなあ。

プログラムの正式発表はまだですが、例年通り、マエストランサ、ロペ・デ・ベガ、セントラル、アラメーダの4つの劇場を始め、オテル・トリアーナやアルカサル、サン・ルイス教会などセビージャ各地で70公演が行われるそうです。



2020年1月22日水曜日

ニューヨークのフラメンコ祭

ニューヨークのフラメンコ祭のプログラムが発表になりました。
いやいやこちらも充実のプログラム。
一度は行ってみたいなあ。

◇フラメンコ・フェスティバル
3/13(金)~4/6(月)
3/13(金)『フラ.コ.メン』
[出]〈b〉イスラエル・ガルバン
[場]アメリカ ニューヨーク NYU Skirball
3/13(金)、14(土)『プロセソ・エテルノ』
[出]〈b〉パトリシア・ゲレーロ
[場]アメリカ ニューヨーク バリシニコフ・アーツ・センター
3/20(金)、21(土)
[出]〈b〉サラ・カーノ
[場]アメリカ ニューヨーク 92Y´s Buttenwieser Hall
3/20(金)
[出]〈c〉ミゲル・ポベーダ
[場]アメリカ ニューヨーク タウンホール
3/21(土)
[出]〈c〉リン・コルテス
[場]アメリカ ニューヨーク ジョーズパブ
3/27(金)『カイダ・デル・シエロ』
[出]〈b〉ロシオ,モリーナ
[場]アメリカ  ニューヨーク シティセンター
3/27(金)
[出]〈c〉ロシオ・マルケス、〈g〉ミゲル・アンヘル・コルテス
[場]アメリカ ニューヨーク Elabashリサイタルホール The Graduate Center
3/28(土)、29(日)『ウナ・オダ・アル・ティエンポ』
[出]〈b〉マリア・パヘス舞踊団
[場]アメリカ  ニューヨーク シティセンター
3/28(土)
[出]〈c〉ロサリオ“ラ・トレメンディータ”
[場]アメリカ ニューヨーク ジョーズパブ
4/1(水)、2(木)、4(土)
[出]〈g〉チクエロ、〈piano〉マルコ・メスキダ
[場]アメリカ ニューヨーク Dizzys Club Coca Cola
4/3(金)
[出]〈g〉サンティアゴ・ララ
[場]アメリカ ニューヨーク ジョーズパブ
4/3(金)『ビバ!』
[出]〈b〉マヌエル・リニャン他
[場]アメリカ  ニューヨーク シティセンター
4/3(金)『アラス・デル・レクエルド』
[出]〈b〉マリア・モレーノ
[場]アメリカ ニューヨーク On Stage at Kingsborough
4/4(土)20時、5(日)15時『ガラ・デ・アンダルシア』
[出]〈b〉ラ・チャナ、エドゥアルド・ゲレーロ、マリア・モレーノ、〈c〉マリア・テレモート
[場]アメリカ  ニューヨーク シティセンター
4/4(土)
[出]〈c〉キキ・モレンテ
[場]アメリカ ニューヨーク ジョーズパブ

[問]www.flamencofestival.org

2020年1月21日火曜日

フランス、ニームのフェスティバル


私は3泊4日でセビージャに帰りましたが、その後もフェスティバルは続きまして、
日曜に終了。写真だけでも、そのクオリティの高さが伝わってくるような。

1月12日、エドゥアルド・ゲレーロ『ソンブラ・エフィメラ』
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa
 1月13日ヘマ・カバジェーロ&ハビエル・パティーノ
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa
1月14日パトリシア・ゲレーロ『ディストピア』
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa
 1月15日アントニア・ヒメネス
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa
 1月16日ホセリート・アセド
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa
1月16日トマティート
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

1月17、18日ロシオ・モリーナとラファエル・リケーニ
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa
1月17日マイテ・マルティン
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa
 1月18、19日イスラエル・ガルバン『恋は魔術師』
Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival de Flamenco Nimes ©Sandy Korzekwa

2020年1月15日水曜日

フランス、ニームのフラメンコ・フェスティバル/トマス・デ・ペラーテ


今年はフェスティバル30周年ということで、これまでに写真展などで参加した写真家たちの作品がメゾン・カレと言う、ローマ時代の神殿に映し出される、と言うイベントも。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

写真家たちも勢揃い。フランス人とスペイン人。それぞれの見方が面白い。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
そしていよいよ、今回の私のお目当て、トマス・デ・ペラーテ。

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
ペラーテ・デ・ウトレーラの息子だけど、フラメンコを歌い舞台に出始めてからはまだ20年。ロックのグループでドラムを叩いていたこともあるという異色のフラメンコ。
でも、父譲りの深い声は太古の響き。

今回は今、話題のロサリアが世にでるきっかけとなったラウル・レフレーとのコラボ。
レフリーはキーボード。
ギターはへレスのアルフレド・ラゴスとモロンのパコ・デ・アンパーロ。
イスラエルと共演してるアントニオ・モレーノのパーカッションという布陣。

パーカッションで始まり,トナ。
なぜか写真はないけど、アルフレドの伴奏での15世紀のだというロマンセが素晴らしく、レブリーハで歌われていたという速いテンポのシギリージャもいい。
もっと聴きたい!

でもパコ・デ・アンパーロの伴奏も味がある。
セルネータのソレアやブレリア。


Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
古風なフラメンコと今の音楽の出会い。
ダビ・ラゴスの公演にも通じる、21世紀のフラメンコ。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
初演ということで、まだ作品としてこなれてはいないけど、うん、またみたいかも。
これからどんな風に変わっていくのかな。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

個人的には最後に歌ったウトレーラのブレリア、レコードでさんざん聞いたペパ・デ・ウトレーラが歌うレトラ、カンシオン・ポル・ブレリアがツボでした。あとで聞いたら、トマスのお父さんも歌っていたそうで、ウトレーラの伝統らしい。

んで、翌日は彼らと同じ夜の飛行機だったので、ホセ・ラマルカの写真展を見に行って街をさまよって時間を潰したのでありました。
calle de Nimes Kyoko Shikaze

2020年1月14日火曜日

フランス、ニームのフラメンコ・フェスティバル/エステベス&パーニョス『ソンブレロ』

二日目はまず、ペドロGロメーロの講演。
一般の人のフラメンコのイメージは実は割と新しいものによる、とか、
シルベリオ・フランコネッティがアメリカ大陸から持ってきたものは、コンセプトだ、とか。
日本のお能のように500年以上もの長い歴史があるわけではなく、近代になって成立したものだ、とか。
知ってることも知らないこともとにかくたくさんの情報量で、通訳さん、すごい!に一言でございます。

夜はエステベス、パーニョス『ソンブレロ』。
この秋、コルドバで初演された作品。へレスのフェスティバルでも上演されます。

ディアギレフのバレエ・リュスでの『三角帽子』。その上演過程と、彼らにフラメンコを教えたフェリクス・フェルナンデス“エル・ロコ”の物語。
同じテーマでハビエル・ラトーレもスペイン国立バレエ団に振り付けましたが、これはそれより前に映像としての企画があったのだそうです。ただ、その公演があったので。企画は温めておいたのだと言います。
で、研究熱心なラファエル・エステベスは、より深く掘り下げていきます。
そのラファエルがディアギレフ。
『三角帽子』初演で主演したダンサー、レオニード・マシーンを、ナニ。
フェリクスをアルベルト・セジェス。
作曲家ファリャをヘスース・ペローナ。
と言う布陣。

スペインにやってきたディアギレフ一行がスペイン各地を回り、フラメンコを観て、ダンサーをスカウトし、練習を重ねるが、主役を演じるのが自分じゃないと知り、狂気の淵に落ちていき、英国の病院で生涯終える、というのはよく知られた物語で、ラトーレの振り付けでもこの通りに進んでいきます。
『ソンブレロ』も大きな流れとしてはそうなので、このオフィシャルストーリーは抑えておく必要がありますね。
実際、その経緯を知っていなかったらストーリーはわかりにくいかもしれません。

ディアギレフとファリャとマシーンの一行がやってきて、各地を回ってフラメンコを観て、フェリクスの才能をかって共に歩み始める。
フラメンコ視察の場面で踊られるのはマカローナのアレグリアスだったり

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
帽子のガロティンだったり。
これも当時の舞踊を再現したもので、ダニ・デ・モロンのギターもビセンテ・ヘロの歌も当時のイメージをうまく再現しているのがすごい。
いやあ、脱帽っす。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa


びっくりしたのは、アルベルト演じるフェリクスのサパテアードからファリャが『三角帽子』のファルーカを作曲していく場面で、あの曲をダンサーたちの靴音だけで再現しているのがすごい。びっくりさせられました。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

1920年代アメリカのダンスのフラメンコへの影響を示唆させたり
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
ディアギレフ、マシーン、フェリクスの三角関係を示唆したり。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

やがて精神を壊していくフェリクス。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
それにしてもマシーンを踊ったナニ、バレリアーノ・パーニョスのテクニックの凄さ。
敏捷でしなやかで、リズミカルで、軽やかなのに、重みがある。
バレエダンサー役であるということもあり、彼自身の才能を見事に見せていた。

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
そしてそれに対するアルベルトのフラメンコも素晴らしい。
二人でのシーンはもう一度見たい。
Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa
へレスで再見できるのが楽しみでございます。

2020年1月13日月曜日

フランス、ニームのフラメンコ・フェスティバル/ダビ・ラゴス


あっという間に2020年。
1月恒例、フランスはニームのフェスティバルにまたまた出かけて行きました。
セビージャからリスボン経由でマルセイユ。
それでもマドリードに行く電車代よりも安い。


初日。すでにお昼に講演があったとのことですが、それには間に合わず、でも写真展の開会には間に合いました。ホセ・ラマルカ『エンクエントロス』

パコ・デ・ルシアとカマロン・デ・ラ・イスラ。
レコードジャケットのために撮影された写真たちを中心に。
どこかで見たことのある写真が大部分なのだけど、同じ撮影での違うショットでのちょっとした表情など、見応えがある。
何より、印刷やデジタルサイトでは見えてこないものが見えた感じがして感動。
「私は商品を撮影する写真家だから」
と本人の弁。でもその商品に愛があって、良い面を引き出そうとしているのが、その他の写真との大きな違い。うん、結局は愛なのですよ。


なおフェスティバルのオフィシャルの公演の開幕はこの日から。
旧市街からちょっと離れたパロマというコンサート会場が舞台。
客席の平均年齢は高い。若い人が集まりそうな会場なのにね。

第1部はマリオラ・メンブリベスが歌うロルカ。
ポピュラー歌手がフラメンコも勉強しました〜的な?
2台のエレキギターはジャズロック系。それにトロンボーン。
3人のまとまりもなくうるさいだけのギター。エンリケ・モレンテのオメガ収録曲も歌うんだけど、カラオケ的な? でつまんない。
だいたい、自分のリサイタルで、譜面台置いてるのって何? 歌詞覚えてないん?


Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

こういうジャンルの音楽もあるのかも。
で、だとしたら、それについてはスペシャリストじゃないから何も言えないけど、フラメンコの目と耳からすると、なんじゃこれ、音程とリズムはあってるかもだけど、さー。
フラメンコはかじったくらいで新しいことはできないんじゃないかな。
自分がすごいか、周りがすごいか、少なくともどっちかがなくちゃ。
と思います。



休憩を挟んで、ダビ・ラゴス『オディエルノ』
現在の、という意味。
一昨年のビエナルで初演し、昨年CDもリリースした作品。
これはすごかった。面白かった。

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa


下手には大きな机、その上にMac。で陣取るのはダニエル・ムニョス。
これまでにもエステベス&パーニョやアンヘル・ムニョス
その横にはサックスのフアン・ヒメネス。
イスラエル・ガルバンとの共演でおなじみ。専門は現代音楽。

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

そして上手側にはアルフレド・ラゴス。

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa

この4人で紡ぎだしていくのは紛れもない21世紀のフラメンコ。
イスラエルの『エダ・デ・オロ』のカンテ版的な感じもある、カーニャやソレア、ロンデーニャ、マラゲーニャなどの曲種のつなぎ方も面白い。
とにかくダビの圧倒的な声の力があるから、ダニエルのエレクトリックミュージックやフアンの現代音楽的なフレーズが来ようと、フラメンコ性は揺るぎもしない。
サックスは時に尺八、時に角笛のように響く。なんだろう、と思ったら、サックスの上の、口の部分だけで歌うように吹いたり。面白い。

Festival Flamenco de Nimes ©Sandy Korzekwa


エレクトリックミュージックというと、ダンスミュージック?と思う人が多いかもだけど、そうじゃなくて、コンピューターを駆使して、パーカッションとして使ったり、ダビの声を録音してループにして、それをまたいいタイミングで落とし入れたり。これも面白い。

アレグリアス、「恐怖をを売ってる」と歌うプレゴン、そしてリビアーナ。
マリアーナのアルフレドの伴奏の素晴らしさ。

いやあ、良かったです。
CD買ってこよう。

フラメンコってまだまだいろんな可能性がありますね。