今年のヘレスのフェスティバルで観たばかりだけど、カルメンの物語の舞台であり、ドン・ホセ役を踊るアルバロ・マドリードの出身地でもあるセビージャでの舞台は見逃せないよね、と劇場へ。
マエストランサ劇場並びには闘牛場、そしてその向かい側にはカルメンの銅像もあります。闘牛場の横や向かいには闘牛士の銅像も。闘牛士の銅像は実在の人物のものですが、カルメンは物語上の人物、熱海の寛一お宮の銅像みたいなもんですね(例えが古い)。
ここの劇場ではコロナ禍の時に、地下にあったバーを入り口の横に移設し、それが好評なのか、今もここで営業中。公演の前にカバを一杯。
日本だと、舞踊公演は圧倒的に女性が多いイメージですが、ここはそんなこともなく、子供はほとんどいないけど、老若男女結構満遍なくいる感じ。まだ夏休みだからなのか、、みんなどこかで一回は見ているだろう作品だからか、地元紙の舞踊記者の姿が見えないのはちょっと寂しい。
さて作品。オペラの前奏曲が終わると幕が開きそこは稽古場。カラフルな稽古着姿の男女が体ならしをしています。白いシャツの男のリードでいくつかの短い振りを全員で繰り返します。ここで、男性と女性のブラソが違ってたりするんですよね、今はジェンダーレスになってきているところもあるけど、元々男性と女性ではブラソ、マノ、体の使い方など色々違ったわけなのです。んー、以前は気にしてなかったというか、気づいていなかったかも。
その後、カルメン、夫、闘牛士と主な登場人物の紹介があり、タバコ工場の場面へ。エストレマドゥーラのタンゴのメロディは親しみやすく、口ずさめる人も多いのでは? 今回、改めて思ったのですが、この作品、このタンゴといい、何度も繰り返される『ベルデ』といい、フラメンコ・フラメンコというよりもポピュラーソング寄りの曲を使うことで、フラメンコに親しみがない観客にも親しみやすくなっているのではないかと思ったことでした。タバコ工場の、この場面から、カルメンの物語の中に入っていきます。この場面で、下手の一番奥に、白シャツのドン・ホセがいるんですね。これも気づいてなかった。どうしたって舞台全面で展開される女性たちの喧嘩に目がいっちゃいますもんね。
カルメンの捕縛、誘惑、解放/逃亡、ホセが捕えられ牢屋へ。と、物語はすすんでいきます。最初のシーンでバックに並べられていた鏡のうち3枚が、舞台中央奥に三面鏡のように並んで牢屋を表現。この作品の装置は鏡と椅子、机だけ。その配置と照明で、さまざまなシーンを表現していくのです。椅子を並べてベッドにしたり、机と椅子の配置で居酒屋になったり。衣装にしても、ホセの白いシャツ、カルメンの赤い衣装と大きな櫛で頭にかけた黒いレースのマンティージャ、カルメンの夫の黒い上下、闘牛士の衣装、とわかりやすく整理されています。ミニマリズムじゃないけど、いろいろシンプルにしていくって舞台作りで結構大切なことだな、と改めて。
居酒屋の場面では、女装でのおふざけがあったり、歌(アルフレド・テハード熱唱最高!)や踊りのソロがあったり。槍、銛打ち、トドメ、と闘牛をお約束通りに再現していくところが大いにうけていたのがセビージャらしいといえばセビージャらしいかも。日本をはじめとする外国だと闘牛の真似だとはわかっても細かい仕草が何を表しているかもわからないでしょうし。そんな居酒屋でのお祭り騒ぎに現れる、夫。カードでの勝負からバストン、杖を使っての対決。ここも迫力。
闘牛士の支度からのフィエスタ。闘牛士に惹かれていくカルメン。それを許せないホセ、そして…
でもそこで終わらず、ベルデを歌ってやオーケストラのようにパルマで見せるアンコールがあるのも、本当にすごい。物語世界を壊していると言われないのはカルメンがあまりにも知られた物語だからかも?
ガデスの凄さを改めて感じることができた夜でございました。
ちなみに元ガデス舞踊団のギタリスト、マヌエル・ロドリゲスや照明家ドミニク・ヨウさんもいらしてましたよ。
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