2023年2月28日火曜日

へレスのフェスティバル3日目ラファエラ・カラスコ『ノクトゥルナ』

ビエナルでの初演時もそのクオリティの高さと美しさに圧倒されたのだけど、スペイン各地での公演をへて、より作品として充実した、完成度の高いものになっていたように思う。

幕が降りた後の拍手の嵐と何度も何度も繰り返される出演者の挨拶。

とにかく美しい。動きも静止したポーズも、ひるがえるスカートも、衣装も、照明も、ヘマ・カバジェーロの繊細かつ力強い歌声も、すべてが美しい。リズムへの入り方、とどめの刺し方、群舞の揃いっぷりも国立に勝るとも劣らない。本当に本当に素晴らしい作品だと思う。

© Festival de Jerez/Tamara Pastora

内容は前述のビエナルの時の記事に書いた通り。簡単に言ってしまえば眠れない一夜の物語というわけだが、黒い衣装のラファエラ。その前に現れる白い衣装の女性たちは眠りの精のようでもあり、眠れない夜に頭に浮かぶ様々な考えたちのようでも、ラファエラの分身のようでもあり、そのどれでもない星明りに見える埃のようなもののようでもあり、と、一冊の本を読むように、見ている時も終演後もいろいろ考えるのも楽しい。

この群舞のメンバーのレベルが非常に高く、それぞれの見せ所もあり、決して主役と引き立て役ではなく、ある意味全員が主役のようなところもあるのもいい。しかし、国立といい、本当にダンサーたちのレベル、とんでもないことになっていますね。恐ろしいほどです。


© Festival de Jerez/Tamara Pastora

ピアノの録音なども使われていますが、ヘマの歌声や朗読、そして何よりダンサーたちがサパテアードで音楽を作っていくという感じも、フラメンコという舞踊ならではの聴く楽しみを改めて感じさせてくれました。全員が同じように、だけではなく、ずらしたりすることによってより音楽的になるのでしょう。


© Festival de Jerez/Tamara Pastora


フラメンコは音楽を踊るだけではなく、踊り手自身が音楽を作っていくことができるのです。


© Festival de Jerez/Tamara Pastora


ラファエラの舞踊言語の豊かさ。語彙の豊富さ。ひとつとして同じパソはありません。ニュアンスのつけ方やちょっとした体使いで、より雄弁に語りかけてくるという感じです。

ちょっとシュールな夢のような場面もあったり。

© Festival de Jerez/Tamara Pastora

© Festival de Jerez/Tamara Pastora
元国立バレエ団のカルメン・コイはコンテンポラリー風に。

© Festival de Jerez/Tamara Pastora

自分の中のいろんな私を見るようでもあり。
© Festival de Jerez/Tamara Pastora

夜明けは骨だけの扇を持って踊られ
© Festival de Jerez/Tamara Pastora
そしてまた1日が始まる。

© Festival de Jerez/Tamara Pastora

 フラメンコの伝統の形に敬意を払いつつも、こんなにも自由に、新しい形の表現ができるのだなあ、と。
舞踊学校に学ぶ若い才能たちにみてもらいたい。がんばればこんなこともできるんだよ、と励みになるはず.
新しい地平を切り開いていくという意味ではマリオ・マジャ舞踊団でともに活躍したイスラエル・ガルバンにも通じるところがあるのかもし、などとも思った夜でありました。
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