日本フラメンコ協会が主催する新人公演が8月27、28、29日に東京のなかのZERO大ホールで開催されました。
1991年から毎年夏に開催され、多くのプロフェッショナルを世に出したこのイベント、賞はあるけどコンクールではない、優劣順位はつけず、全員が主役、というスタンス。とはいうものの賞がある以上、広い意味ではコンクールの一つだと思います。新人という言葉の定義も曖昧で、参加資格は前年度からの協会会員であること、というだけ。年齢制限もないから少年少女もいれば、年配の人もいるし、プロで教室主宰している人も。それがみんな同じ条件で同じ舞台に出る、というのがいいのだろうな、きっと。
私は1987年からスペインにいるのでこれまでに見ることができたのは1度だけ。その時の感想は新人公演雑感その1、新人公演雑感その2に書きました。今回久しぶりに読んでみて、今も私の新人公演に対する意見としては同じだなあ、と思ったのでお時間あれば読んでみてください。
唯一、違ったのは当時のこの感想。
「コンパス自体に問題があったりという人もいたのは非常に残念。」
10年でレベルすごく上がったということなのでしょうか、それとも今年だけ? どちらにせよ、レベルはすごく高かったと思います。特に舞踊。誰がとってもおかしくないほどでした。だから受賞しなかった人もがっかりしないでください。
コンクールは運が大きいと思います。その日に最高のパフォーマンスができるかどうかも、そしてそのパフォーマンスが審査員の好みに合うかどうかも運。いや審査員は好みで審査をしてるわけではないけど、非常に大きな実力の差がない場合は、あると思います。好み、というか、何に重きをおくか、その人がフラメンコをどういうものだと捉えているか、というところは人それぞれです。フラメンコは非常に幅が広く懐が深い、つまり自由度も高いのでそういうことが起きるのだと思います。だからがっかりしないで。賞の有無ではなく、新人公演に参加するという目標のために努力したこと、大きな舞台で踊ったこと、そこには何よりの学びがあったはずです。自分のパフォーマンスを振り返り、色々な人の意見を聞いて、今の自分を客観的にみて、未来へ繋げていくことができれば最高だと思います。
というわけで、ビデオで観た私も簡単に、感想コメントをすることにしました。少々辛口のところもあるかもしれませんが、もっと良くなりそうだから伝えたい、という気持ちで書いてます。もし気持ちを害したらごめんなさい。
カンテ
こんなにたくさんの人が歌っている、ということにまずびっくり。いやすごいなあ。でもやっぱりカンテは難しい。まず、声を前に出す、というのが難しい。スペイン人でも声を持ってないということで歌い手になるのを諦める人がいるくらいだし、声は重要。音程、リズム、発音、メロディの正確さ、も必要だし、声をコントロールし、気持ちを込めて、微妙なニュアンスも表現し、って考えるだけでも大変。音程が揺れたり、無理に作ったように聞こえる発声だったり、え、そこでというところで息継ぎをしたり、カタカナにしか聞こえない発音だったり、緊張で肩がカチカチになってたり、表情が無だったり。課題がいっぱい。反対に音程などが揺れても雰囲気がある人がいたり(例えば準奨励賞の土井康子さん)、面白いですね。中ではトリアーナのソレアを歌ったトップバッター、遠藤郷子さんがダントツの実力。強弱のバランス、ニュアンスなど、声も曲もきちんとコントロールし、歌で表現する、ということができています。三枝雄輔さんと奨励賞受賞の吉田光一さんの踊り手二人はリズムがさすが。歌の知識がある踊り手は最強だと思います。
ギター
ギター参加者二人は寂しい。どちらも上手だが、コンパスがずっと回っている感じや曲としてのまとまりがもう少しあってもいいように思うのですがどうでしょう。奨励賞受賞のYÚNA さんは後半の盛り上げ方が良かったです。
群舞
みんなが正面向いて同じ振りという、クラスレッスンみたいなことが多いのだけど、そこから抜け出し、舞台の上でのフォーメーションや違う動きをしての組み合わせなどにこそ群舞の見せ場があると思うのです。ともだち列車たからもの号はオープニング、おっという感じで期待したのですがその後がクラスレッスン風主体。コロナ禍だし仕方ないかな。でももう一捻りが欲しい気がする。Cariños de solは舞台をいっぱいに使っているのが良かったです。振り付けの趣味も、表情もいいと思います。
舞踊ソロ。お名前記載なしで失礼します。
7分という制限時間の中でリサイタルのように自分の世界を作って見せる人がいるのもコンクールではない新人公演ゆえなのでしょうね。一人一人の照明も凝っているし、やっぱ普通のコンクールとは違います。コンクールだとたくさんの人の様々な踊りを見ていると色々見えてきますね。私はコロカシオンフェチなので、まず姿勢が気になります。顔の位置、肩の位置。顎ひきすぎている人が多く、肩が前に丸まっている人や前屈みになっている人も。顎をクッと上げて、肩は後ろに胸を開いて、首の綺麗なラインを見せてくれればそれだけでオレ!なんですよ、極端に言えば。みんな足はたっぷりやっていてすごいんだけど、姿勢で損している人が多いように思います。また次の振りに気持ちが走ってるのか一つ一つの動きをきちんと最後までやらずに次へ行っちゃう感じの人や、体操のような動きに見えてしまう人もいるんだけど、どうしてそういう風に見えるのか、と考えるのも私にとっては面白い。振りのセンティード、わかってないのかな、と思う人はきっといろんな人の踊りを見てなくて参考になるお手本が頭に入っていないのだろうなあ、と思ったことでした。いろんな踊りを見ていろんな歌を聞いて、たくさんのイメージを自分の中に蓄積していくことって絶対必要、だと思うのですよ。他にも無表情で踊るのはよくないけれど、オーバーな表情も逆効果かもと思ったり(もっともビデオだから表情がよく見えるけど、劇場だとここまではっきり見えないはずなので大きな舞台だとオーバーなくらいがちょうど良かったのかもとかも考える)、いやいや見ていて色々考えさせられ、勉強にもなりました。ありがとうございます。
以下、一言コメント。名前なしで出演番号で書きます。
1優等生から踏み込もう、2劇場作品の趣、3体のライン綺麗、4こう踊りたいというイメージがあって曲としてのまとまりがある、5後半いい感じ、6バレエとかやって体の芯や動きを意識できるといいかも、7音楽の先を行く踊り、8もっとシンプルにして余裕持って、9二の腕や胴体を意識し一つ一つの動きの意味も考えたい、10歌を聴こう、11あご、回転が課題、12演じる、という気持ちがあるのがいい、13後半の表情がいい、14いろんな人のソレアを見て研究してる感じ。これでペソが出たらすごいぞ。15ためがソレアらしくていい、自分のソレアを自信持って踊ってる気がする、16振りに振られてる?、17表情がアレグリアス、18睨みつける目力、19若い?スカート裏の紫素敵、20踊っていく中で成長していく感じ。スカートがシンプルならもっと良かった、21のびしろのある美人 22落ち着いた感じ。豪華なマントンだけど上半身が重すぎる感じ、23歌とのコンビネーションよし
1お尻からまっすぐ下に落ちるバタではテク使ってもバタが応えてくれない、2モダンな衣装、3テク詰め込みすぎずにもっと落ち着いて、4フラメンカな感じなのに首とあごの位置で損してる気がする、5緊張で硬くなってる?、6楽しそうに舞台いっぱいに踊ってるのには好感、7余裕持って踊ってる感じ、8詰め込みすぎず余白持って照明も工夫してる。太ももは見せない方がよき、9余裕持った踊り。ちょっと前屈み。10引き出し多そう。回転に課題。11ジャケットない方が良いけど印象に残る、12普通のフラメンコ衣装で踊った方が良かったのでは?、13曲としてのまとまりがあり演出も上手い、14気分と細部にいいとこあり。15楽しい感じがよく出てる。16丁寧に楽しそうに踊る、17緊張の表情、18将来有望、19固くなってた?、20後半気持ちが爆発、21気持ち込めて踊ってる感、22首が綺麗だし体全体意識するともっとよくなる、23ソレアではなくカーニャである意味は?
いやいやほんと、勉強になります。偉そうな事言ってごめんね。でもほんと、みんなの一生懸命さは伝わってます。
なお配信は9日までで、1日分につき協会会員二千円、会員以外二千五百円です。
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