2019年3月10日日曜日

へレスのフェスティバル最終日イスラエル・ガルバン『恋は魔術師』

天才!
その一言に尽きる。
ピアノとダビ・ラゴスの歌によるマヌエル・デ・ファリャの『恋は魔術師』全曲を椅子で踊り、その時代のフラメンコ曲で色彩を加味する。
1時間弱なんだけど見応えたっぷり。

彼にはコンテンポラリーから何かを借りてくる必要がない。
彼自身が新しい方法をつくる。
彼自身がコンテンポラリーなのだから。

すごすぎて何から話せばいいのやら。


金髪に白いブラウス、黒の裾が広がったパンタロン。腰には鎖のベルト。
サングラスをかけて椅子にずっと座っている。
下手にピアノ。その横にマイクと譜面台。
イスラエル・ガルバン/エドゥアルダ・デ・ロス・レジェスは、サングラスを外し、ピアニストが来て演奏し始めると動き始め、踊り始める。
最初は赤い手袋で。

© Javier Fergo / Festival de Jerez
『恋は魔術師』は、死んだ恋人の亡霊を追い払い新しい恋へ、という話だが(短縮しすぎだ)、舞踊劇の登場人物、カンデーラ、カルメロ、亡霊、ルシアらは一切登場しない。
そこにあるのは魔術。恋に悩み魔術へ走る。

ただただ音楽と詩だけを元に踊っているという感じ。

椅子に座ってサパテアードは、マリオ・マジャの得意技だったし、ファジャはグラナダにも縁があるので、オマージュの意味もあるかもしれない。
椅子に座っていてもさ、さ、と見せるポーズの完璧さ、凄さ、フラメンコ性。
思わずオレ!が出てしまう。

舞台の一角しか使ってないのに、劇場全体が揺れる感じ。
魔術。

© Javier Fergo / Festival de Jerez

椅子から落ち、椅子の上で横になって、椅子の上に登り、踊る。踊り続ける。
恋の悩み、痛み、苦しみを、嘆く。
フラメンコの曲じゃないけど、イスラエルはずっとコンパスが一緒。

© Javier Fergo / Festival de Jerez
曲が終わると、『恋は魔術師』が初演された1915年頃のフラメンコや流行歌を、録音に重ねてダビが歌い、エドゥアルダが踊る。
© Javier Fergo / Festival de Jerez

チャコンのマラゲーニャやエル・ビートなどなど。ダビがすごすぎ。
フラメンコの歴史が全部彼の中に入ってる?

© Javier Fergo / Festival de Jerez

© Javier Fergo / Festival de Jerez
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なんだかよくわからなかった、という人もいるかもしれない。
でも、この人はレベルが違う、というのはわかったのでは。
そう違う宇宙の人みたい。

もう一回、いやもう二十回見てみたい。

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