ロサリオ・トレド「ADN」 ADNとはDNAのこと。ロサリオは彼女を彼女たらしめている遺伝子を探索しそのルーツであるカディスに、大好きな芝居に見いだしたのだろう。
カディスの香りと演劇的要素が彼女を、彼女のフラメンコを彩るのが「ADN」だ。
藤椅子に座っている彼女に電話がかかってくる。彼氏からだ。彼女の表情がみるみるくもる。どうやらいい話ではなさそうだ。それでもラファエル・ロドリゲスのギターが、パルマが始まる。舞台に出なければ! バタ・デ・コーラでアレグリアスを踊り出すロサリオ。
© Festival de Jerez/Javier Fergo” |
哀愁あふれるミロンガでざんばら髪となって哀しみを踊ったかと思うと白いジャケットに着替えた伊達男パロマールのルンバでクレイジーに踊りまくる。カディスならではのグラシアいっぱい!
ベテラン、フアン・ビジャールのシギリージャはニーニョ・ヘロの伴奏で。真っ当で、味わいぶかいシギリージャだ。
机を拳で叩くコンパスでソレアを歌うはパロマール。新旧カディスの歌い手の共演だ。
哀しみを再びソレアで踊る。歌うはフアン・ビジャール。彼がかつてマドリードの伝説的タブラオ、ロス・カナステーロスでマヌエラ・カラスコに歌ったような、シンプルな構成のソレア。マヌエラのソレアのようなポーズが出たりもするが、決してマヌエラのソレアをコピーしているわけでなく、ロサリオのソレアだ。
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パロマールのファンダンゴをはさんでホタのリズムで歌うのはパーカッションのロベルト・ハエン。フンコの弟だ。ロサリオはそのリズムに踊り出し、酒瓶をはさんで二人でかけあう。その楽しさ。カディス万歳! その昔アナ・サラサールとロサリオの二人での作品でも酒瓶もってのよっぱらいを踊ったけれど、いやあ、これは素晴らしいの一言。こんな楽しい酔っぱらいとお酒を飲みたいものであります。
ローラ・フローレスが歌って有名になった、カディスの美女というタンギージョを歌い踊るロサリオ。歌いながら衣装を脱ぎ去り最後はスリップ姿。
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そして舞台上で白いバタ・デ・コーラに着替えて、マントンでのカーニャ。しっかりとしたフラメンコ。伝統的な振りをいれて、マントンのフレコが美しく舞う。
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男前の女なのだ。
演劇的要素とフラメンコの融合はいろんな人が取り合いしているが、全てが成功しているとは言い難い。でもロサリオは彼女自身がもつ、演劇への愛(実際に演劇のクラスも受けたそうだ)で、ふたつをしっかり同時に演じ、自らのルーツであるカディスをベースにすることでそれをよりしっかりとした作品に仕上げている。芝居をしながらもフラメンコもしっかりしているから、どんな観客でも楽しめる作品となっていると思う。
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3月17日にはセビージャ、セントラル劇場で再演しますよ。ぜひお出かけを。
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