2010年6月30日水曜日

マリア・パヘス「ミラーダ」初演


6月29日。スペイン戦をほっぽらたかして(後ろ髪ひかれたけど)
マリア・パヘス「ミラーダ」初演を観てきました。
マリアの舞踊団結成20周年記念の作品。
スペイン戦にもかかわらず満員御礼。
スペインの劇場はカップルで行くことも多く
たいてい男女比のかたよりがあまりないのだけど圧倒的に女性が多かった。
やっぱスペイン戦の影響?

静寂をマルカールしていく赤い衣装のマリアのソロ。
そこに彼女自身の声で彼女の思いを、彼女の言葉で彼女の思いが語られる、
というオープニングから最後のブレリアにいたるまでの1時間半、
たっぷり彼女の世界を堪能させるのはさすが。
大掛かりなセットなどはなにもないが、
ミュージシャンたちの位置やビデオ、照明などで変化をつけあきさせない。
こういう舞台構成のうまさ、観客を楽しませようという
エンターテイナー性は本当にすごい。
曲と曲の合間の、チューニングや舞台転換により間があいてしまうこともほとんどなく
よどみのない流れのように進む。
肝心のバイレも、マリア自身もシギリージャ、サンサーンスの白鳥!
ロルカのベルナルダ・アルバの家をモチーフにした一曲、
アレグリアスとたっぷりみせてくれる。

バタ・デ・コーラのシギリージャは、カスタネットで。
ゆーっくりゆーっくりした動きにはじまり、めりはりのきいた一曲。
回転のときの頭の処理など、デテールがすばらしい。
白鳥は、彼女自身はほとんど動かず、あの特徴的な長い腕をフルに使った
上体のやわらかな動きでみせるというもの。
クラシックバレエの白鳥よりもよりやわらなかな動き。
バストンとサパテアードで対話するような激しいロルカの一曲と対照的だ。
アレグリアスは大判のマントンで華やかにはじまるが、
マントンをおいてからも、古き良きフラメンコの名残が、あちこちに感じられる力作。
シレンシオも、オリジナリティあふれる音楽(ルベン・レバニエゴ)の美しさもあいまって
なかなかのものだ。

ラジオでかかる曲で20年の名場面を思い出し踊り次いでいくというメドレーも楽しい。
「セビージャ」のショスタコビッチのワルツ、
「アンダルシアの犬」のボーラ・デ・ニエベの歌声やピアソラのタンゴにカマロン、
「ラ・ティラーナ」のカスタ・ディーヴァ、
「イルシオンFM」の聖者の行進…
なつかしい場面、振付けを目の前に、
それぞれの初演の舞台を、そのときの思い出し、感慨深い。
「アンダルシアの犬」の曲がいくつも使われていることで
やはりあれが彼女の代表作で、すべてのはじまりだったのだと思うのは私だけではなく、
彼女自身もそうなのだろう。
いやあ、あの作品を、フェルナンド・ロメーロやラファエル・カンパージョ、
アリシア・マルケスらがいたアンダルシア舞踊団での初演を
セントラル劇場で観た、あのときの衝撃を忘れない。1997年のことだ。
ながれている曲はフラメンコではないのに踊りはフラメンコ。
あんなに驚いたことはない。
フラメンコの可能性を広げた、画期的な作品だったと思う。
今、またその曲をみても、決して古びておらずそのクオリティの高さを実感。
最後のブレリアはおなじみのヘレスの曲などを楽しくアレンジ。
20周年記念、楽しい誕生パーティーにふさわしい。

曲と曲の間に、黒地に白水玉のドレスでタンゴのリズムにのって舞台をいきかうマリア。
パセオ、と名付けられたこの場面ではなーんと、フラメンコ風ラップとでもいうべき、
リズムに乗った語りもきかせる。これがまたなんとも楽しい。

カスタネット、マントン、アバニコ、バストンと、小物使いの素晴らしさも
長い腕でのやわらかな、彼女ならではの上体の動きも健在。
ほかの誰でもない、自分のスタイルを貫くマリアにはほんと、脱帽!
20周年おめでとう!

3 件のコメント:

  1. 突然の書き込み、申し訳ありません。
    マリア・パヘス『ミラーダ』が、日本での公演が「世界初演」と宣伝されているので、既にスペインで公演されていたとは知りませんでした。
    日本公演前に是非見ておきたかった・・・
    記録映像などは残っていたりするのでしょうか。

    安西志野(sino_sa@yahoo.co.jp)

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  2. こんにちは。スペインでの上演は、世界初演前のワールドプレミアにあたるようです。2日間、1度きりの舞台でこのあとほかのところで上演されていることはないと思います。記録映像はおそらく舞踊団で撮影しているかと思いますが。。。

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  3. 2月19日土曜日 渋谷Bunkamuraで「ミラーダ」観てきました!
    本当に素晴らしかったです。

    きょうこさんがおっしゃるとおり、大がかりなセットはないのだけれど、映像やカーテンのウィットに富んだ使い方に息を飲んでしまいました。
    アイディアがそこかしこにちりばめられていて、全く飽きませんでした。

    少し席が遠くてよく見えなかったのですが、マリアさん歌っていらした??あの例のフラメンコ風ラップってやつでしょうか!
    これは、これは、本当に楽しかった!
    観終わった後はしばらくボー然としてしまいました。

    で、そろそろ帰ろうかなと準備していたら、な、なんと!
    マリアご本人がロビーまで出てきてサインを!!
    予定外のことだったのでロビーは騒然。
    もみくちゃになりながら定期入れにサインをゲット。
    マリア・パヘスという人物にまた惚れてしまいました。

    プレゼント付きの公演。こんな気持ちが高揚したのは久しぶりでしたっ。

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