2024年10月2日水曜日

日本フラメンコ協会新人公演配信を見て

 フラメンコは難しい、難しいけど面白い。難しいから面白い。

ビエナルでヘロヘロになりつつ、なんとか全部拝見しました。今回は一度しか見ることがでいなかったので個人個人へのコメントは無しですが(いつもは最低2回、人によっては5回とか見返します)、総評を少し。

カンテ

決まった旋律をきちんと正確に歌えている人がほぼいません。音程が外れるだけでなく、メロディも勝手にアレンジしているのか、間違って覚えているのか。マラゲーニャのような抒情的な曲ではブレリアのようなリズミカルな曲よりもよりメロディが大切になってきます。それぞれの曲種には決まった旋律があり、それをきちんと覚えて歌うのは大切。

発音、いつも言いますが、特にrrの巻き舌ができていない人が多い。巻き舌苦手なら、それがないレトラにすればいいだけです。どうしてもそのレトラが歌いたいなら巻き舌しっかり意識して練習するといいと思います。

また、曲全体の流れではなく、1行1行バラバラになっている人や、曲種のキャラクターや方向性を理解していない人なども散見しました。

歌う人が増えているのはうれしいのですが、ひとりよがりに楽しむのではなく、人様に聞いていただくなら、それなりのクオリティを目指してほしいと思います。好きだ!というのは伝わってくるけれど、の人も多くいました。その好きを原動力にして、いっぱい聴いて、グレードアップ目指してください。

ギター

ギターも全体が見えていない感じの人や、イメージはあるのだけどそれに技術がまだ追いつかない、といった人がいらしゃったように思います。曲全体の構成、演奏の時、どこに重きをおいてどう演奏するか、などもっと考えた方がいいのではないでしょうか。自分を客観視することは何においても大切です。

舞踊

まず姿勢、特に首の位置がちゃんとしていない人がほとんど、といってもいいくらいなのは悲しいです。ストレートネックの人が多いのかな。あと巻き肩なのかな、肩が前に出て、胸が開いていない人も多いように思います。コロカシオン、姿勢がきちんとしていれば舞台に出ただけで美しく、ムイ・フラメンコに見えると思います。

踊っている曲がどういう曲なのか、理解されていない方もいらっしゃったように思います。その曲が、どういう曲なのか、シリアスなものなのか明るいものなのか、歌詞はどんな内容なものが多いのか、などがわかってくると、自然に衣装も決まり、踊る時の表情も自然に出てくるのではないでしょうか。曲のイメージを持つことは必要だと思います。踊る曲のいろんな録音を聴いたり、いろんな人の踊りをYou Tubeなどで見て、自分なりのその曲のイメージを持つといいのではないでしょうか。

カンテやギターでも書きましたが、全体の流れが掴めていないのか、振り/パーツの羅列になっているような方が見受けられました。また、一つ一つの振りの意味/方向性も考えて、ただ習った通りに動くのではなく、イメージを持って、丁寧に踊っていく方が観ている人たちに伝わると思います。また詰め込みすぎないことも大切です。あれもこれもと詰め込むよりも、今自分が自信を持ってできることを余裕を持って、心を込めて踊る方がいいのではないでしょうか。

大きくコンパスを外すような人は見受けられませんでしたが、全体的に足を頑張るあまりか、上体の動きが疎かになっている人も多いようです。ブラセオは大切です。複雑で難しいサパテアードよりも、シンプルで美しい上体の動きの方が、観客に伝わりやすと思います。また、時々いらしたマノがあまり動かない女性は男性の先生についている人でした。近年、男性舞踊と女性舞踊の違いがだんだんなくなってきているとはいえ、やはり女性は手首を回し、形を変える、マノの動きは大切だと思います。男性に習う女性は、そのあたり意識しておき、自分でその部分を加えるようにするなどした方がいいのではないでしょうか。また、体使いがちゃんとしている人は少ないですね。足だけではなく、体全体を使って表現したいものです。胴体が固定されてしまっているような人が多いですね、反ったり、ねじったり、真正面だけでなく斜めに構えるとか、で、踊りがより立体的に見えると思います。

最後に個人的に気になった人のことも少し。

準奨励賞受賞の15番常盤直生さん。構成にも踊りにもメリハリがあって目を惹かれます。踊ることが楽しい、というのが伝わってきます。悲しみや苦しみではなく、誇りを表現するようなソレア。パーツの繋ぎなど細かいところを丁寧にチェックしていけばもっともっと良くなると思います。

21番下郡紀子さん、今できることを精一杯やって楽しんでいる感じが印象に残りました。プロ、もしくはプロ志望の人の踊りとはまた違う、いいアフィシオンを感じ、これこそが新人公演の魅力ではないかと。

今回、奨励賞を受賞された44番吉田芽生さん。クラシックなデザインのバタ・デ・コーラでのアレグリアス。姿勢も表情も良く、形も綺麗で文句のつけどころがありません。一つひとつの振りをとても丁寧に、全体にもメリハリつけて踊っていらして、素晴らしかったです。

55番松本美緒さん、マノがとても綺麗で、後半少し失速するけれどよくまとまっていたと思います。

また来年の配信を楽しみにしています。







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