セビージャ、ギター祭が開催中です。
スペインだと有名なのは毎年7月上旬に開催されるコルドバのギター祭。クラシック、フラメンコ、ジャズ、ロックと多彩なプログラム、そして第一線で活躍するアーティストたちによるマスタークラスで人気です。ほかにもアンダルシアではグラナダやロンダでも開催されていますし、マドリーでも今年、第5回のギター祭が開催されたそうです。
セビージャは今年で第14回。もともとクラシック専門だったのですが今はフラメンコ公演も毎年複数行われています。
3日、開幕を飾ったのは、2021年からセビージャに留学している横村福音(ねね)さんのリサイタル。16世紀の館で行われました。こちらは観にいくことができなかったのですが、メイン会場となるセビージャ市立の、エスパシオトゥリナのシルビオホールでの初日には、カニサレス小倉真理子夫妻のお誘いで出掛けていきました。演目はスペイン人作曲家ダビ・デル・プエルトがロルカの「ポエマ・デル・カンテ・ホンド」の詩に想を得て作曲した、ギター四重奏とソプラノのための曲「クエルダス・デル・ビエント」でこれが初演。これに先だって作曲家自身によるトークがあり、そこで解説を聞いたこともあってか、クラシックギター素人な私も楽しめました。またソプラノは予定されていた人の代役を急遽務めた方がシシリア在住の日本人の伊藤佐智馨さんでした。あとでお聞きしたら実質1日半しかなくて練習もままならなかったようで、緊張しました、ということでしたが、それを全く感じさせない、落ち着いた演唱で、素晴らしかったということもあるかもしれません。さまざまに色合いを変える声の力。4台のギターによる演奏も興味深く、詩から始まった作品だけに詩的というか、繊細さが際立って聞こえたのは、普段耳にしているフラメンコギターとの違いなのかもしれません。
翌日はクラシックとフラメンコのカップリング。前半はマルコ・タマジョというキューバ出身の方の『エテルナメンテ・バロッコ』。演奏し、曲間に曲名も言っているのだけど、このフェスティバルの特徴の一つでもあるマイクなし、なこともあって、全然聞こえない。プログラムもないし、全くわからない。それでも、超絶テクニックの素晴らしいギタリストだということはわかりました。ただ一人で1時間以上弾き続け、この後フラメンコなのに、とちょっとあせったのも事実。で後半、パコ・フェルナンデスの演奏、そしてケタマ調の弾き語りは、前半と対照的で、朴訥に、自分の言葉で語る感じ。あまりにも二人が違うので、うーん、このプログラムはこれで良かったのだろうか、とちょっと疑問に。休憩なしの2時間超でお尻痛いし。休憩入れると、途中で帰る人もいるだろうし、ってのもわかるし、クラシックファンにもフラメンコを聞いてもらいたいし、フラメンコファンにもクラシックを聴いてもらいたいということなのだろうけど。
翌日は行くことができなかったのですが、やはりクラシックとフラメンコで、フラメンコのギターはアレハンドロ・ウルタードという、フラメンコ・ギタリストの中ではクラシックぽい人なので、違和感なかったんじゃないかな、と思ったり。
14日は来日経験もあるペドロ・マリア・ペーニャが、歌い手ルイス・エル・サンボをゲストに。最初にギターソロで、ミネーラからのソレア、シギリージャ、ブレリアと演奏し、歌い手を招く。歌もソレア、シギリージャ、ブレリア、というのは偶然? 狙った? それでも久しぶりに聴くルイスは、味わい深く、心にすとんと落ちてくる。このところ聞いたアルヘンティーナやレジェス・カラスコのような、歌謡のようには聞こえない、フラメンコ。自然に出てくるメロディも歌詞も聴き慣れた伝統的なもので安心して聴くことができる。そして呼吸するかのような自然さ。ブレリアで同じようなメロディが繰り返されても文句はない。
いやあ、現代的なものが嫌いなわけじゃないですよ。最初よくわからなかったエンリケ・モレンテ、今や大好物です。エンリケが映画『フラメンコ』で歌っているシギリージャ、あれとか、もうゾクゾクするくらい大好きです。でも、なんだろう、ここんとこ聞かされたカンテソロがあんまりだったもんで、改めて自分がフラメンコに求めているものは何かということを考えるきっかけになっているようにも思います。ヒターノだからいい、年配だからいい、ってわけじゃなくて、たとえば、サンドラ・カラスコとかも良かったし。うん、いいものはやっぱりいいなあ、ってことなんじゃないかと。そ、好みの問題、なのかもしれません。
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