2020年2月23日日曜日

へレスのフェスティバル二日目アントニオ・エル・ピパ『エスティルペ』

フラメンコは結局、趣味のものだと思うのであります。
ホビーという意味じゃなく、好み、の方ですね。
フラメンコはすごく大きなもので懐も深いから、いろんなものがあります。
大舞台で繰り広げられる一大スペクタクルも、小さな空間でのこじんまりしたリサイタルや、仲間内での宴も、全部フラメンコだし。
だから多くの人に愛されるものも、すごくマニアックなものもあるし、ある人にとってはケバケバしくみえても、他の人には華やかで美しく見えたりもする。あ、これはフラメンコに限ったことじゃないか。
時々、これはフラメンコじゃない、とか言う人って日本でもスペインでもいるけれど、それってたいていの場合、これはその人の好きなフラメンコじゃない、っていう意味なんだよね。それがフラメンコかフラメンコじゃないか、誰が決められるのだろう。
とか日々思っているわけであります。

アントニオ・エル・ピパはへレス出身のヒターノで、ご当地アルティスタ。昔は毎年のようにフェスティバルにも出てたけど、なんか久しぶりのご登場です。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
その昔、クリスティーナ・オヨス舞踊団にもいたというのが嘘のようだけど、マヌエル・モラオのグループでデビューしてから30年くらいかな。
おばあさんが有名な、フィエスタの踊り手ティア・フアナ・ラ・デル・ピパで、おばさんが歌い手のフアナ・ラ・デル・ピパ。
サンティアゴ街のチャキチャキであります。
だから、なのかなあ、彼の踊りはとどのつまり、フィエスタでのおばさんの踊りなのであります。フィエスタで、でっぷり太ったおばあさんが踊っている感じ。
だけど彼は、長身の男性。で、フラメンコダンサーとして舞台に立つ。
おばあさんが宴で踊ったら拍手喝采かもな振りでも、舞台でおじさんが踊ると、あれ、ってなっちゃうっていう感じがちょっとあるのであります。
© Festival de Jerez/Javier Fergo

もともと、昔から足は苦手で、胸を開いて腕を大きく上げて、なマルカールで評判だった彼なんだけど、うーん、どうしちゃったんでしょうね。形が崩れている。
顎を引きっぱなしで、お腹を突き出し、亀さんみたい。
足は、踊らない人でもわかる、初心者が最初に習うような基本の足でもコンパスに入らない。曲の途中で止まって、観客に目配せしたり、投げキッスしたり。ギタリストの膝に足のっけたり、歌い手に抱きついたり、やりたい放題。

© Festival de Jerez/Javier Fergo
で、多分、そんなにたくさんの踊り手を見ていないのかな、カナーレス風の振りがいっぱい出てくるんだけど、カナーレスのように踊れるわけではないし。
闘牛士からイメージしたのかな、な衣装も、なんだかわけわかんないしなあ、だし。


© Festival de Jerez/Javier Fergo


うーん、ごめんなさい。私の趣味にはあいません。

ゲストの歌い手、ヘスース・メンデスとアントニオ・レジェスがめちゃくちゃ素晴らしく、聞き惚れたのでありますが、いやあ、なんか、こういう歌ならもっといいマルカールできるでしょう、と言いたくなる感じ。いや、踊り手なしで歌だけ聴いていたいという感じ?
ヘスースの朗々とした歌いっぷりは男前だし、アントニオのコンパスが自然に回っていくような感じ、歌詞のつなげ方などやっぱ天才的だし。ギター伴奏はイマイチだったけど、それでも上手い人は上手いのであります。
© Festival de Jerez/Javier Fergo
この二人がいなかったら私、耐えられず途中退席してたかも、であります。失礼だけど。

でもこれが好きって人もいるわけで。だからフラメンコは面白い、のかもしれないけど。
私はパスです。でも歌い手聴きたさにもう一回見たりするかも?うーん。難しい。


© Festival de Jerez/Javier Fergo

ビデオはこちら
https://vimeo.com/393239785


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